☆日本と地球上の人類の安全を握る 福島原発事故復旧作業現場の作業員たち。東京電力は自らの最優先課題として彼らの扱いを改善してほしい。
顔をテレビや新聞の記者会見に向けるのも大切だが、現場に向ける方がもっと大切だ。
2011年4月19日発行 JMM [Japan Mail Media] No.632 Extra-Edition6 from MRIC
□ 福島原発からの報告
■ 谷川 武:愛媛大学大学院医学系研究科公衆衛生・健康医学分野
4月16日午後から19日午前の予定で非常勤産業医として福島第二原子力発電所(以下F2)に寝泊まりして健康管理を支援しています。
これまでの状況を要約します。
福島第一原子力発電所(以下F1)のみならず、F2ももう少しでF1と同様の事態になるところでした。F2も震災当初から不眠不休で皆がんばっています。
確かに東京電力は今回の原発事故の当事者であり、広範囲の放射能汚染の加害者ですが、F1,F2で働く所員の多くも自宅、家族を失ったり、
自宅が避難指示区域にあったりする被災者です。
10日以上、震災から一度も戻れず、家族の安否も電話がつながらずに確認できないまま、電気が供給されない原発で命を張って事態収拾に努めた方々です。
その中には九死に一生を得た方々もいます。しかし、避難所では露骨な批判を浴び、風呂も入れない状態で通常勤務以上のストレスの高い激務をこなしています。
これまでは、急性期でしたがこれからは慢性のストレス状態が続きます。
17日に長期ビジョンが東電本社から示されましたが、フェーズが変わったことから震災当初から激務をこなした所員に長期休暇をとらすことや、
復旧を進めるF1の所長以外に長期ビジョン担当の所長(前所長が適任か)を現地に常駐させることが適切と思います。
また、F2の状況も次もし津波が襲えばF1と同様の状態になることは避けられず、所員が一丸となって対策を進めています。
そのため、F2からF1に応援を出す余裕はありません。F1はすでにレベル7です。一企業が事態収拾する事態ではありません。
東電本店をはじめ、ALL JAPANでF1を応援することが求められます。
産業保健に関してもこの一ヶ月の対応は現場では必死でやっていますが、これからは計画的な健康管理体制が求められます。
現地の医療スタッフは産業医科大学から2人の医師の常駐を希望しています。
本日産業医科大学の森学長補佐に連絡したところ、東電本社の要請があれば検討すると回答を得ましたのでF2増田所長から本店に現地からの声を届けてもらうことを依頼しました。
今後、従来からの東電の産業保健体制ではなく外部からきちんとF1,F2の所員の健康管理(通常の労働安全衛生法に基づくもの以外にストレス対策、
放射線被曝対策も含めたもの)を実施することが求められます。これは、原発周辺地域住民も含めた国の枠組みが必要です。
谷口プロジェクト(原発作業員の自己末梢血幹細胞採取)について両所長とも感謝しており、本日午後F2の副所長が担当として詳細な説明を求めて来室します。
虎の門病院谷口医師の現地での説明も実施する予定です。
F2の体育館がF1所員の宿泊所になっています。夜間巡視すると重症の睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者による強烈ないびきにより、睡眠を妨げられている状況でした。
昨日、フィリップス社に支援を要請し、CPAPの提供を受け、これまでCPAPを使用していた2名に装着し、さらにSASが強く疑われる大きないびきを発している方々に置き手紙を置きました。
今晩からそれらの方にCPAPを装着する予定です。
愛媛大学大学院医学系研究科公衆衛生・健康医学分野 谷川 武
2011/04/20 05:24 【共同通信】
福島第1、第2原発の東京電力社員約90人を16~19日に現地で診察した愛媛大医学部教授の谷川武医師(49)=公衆衛生学=が共同通信の取材に応じ、
「不眠を訴える人も多く、このままではうつ病や過労死のリスクがいっそう高まる」と指摘、入浴や食事の環境を整え、休息が取れるよう配慮すべきだと訴えた。
「危険な作業」「被災者」「肉親や友人の死」「加害者」の四重のストレスを感じている人もおり、早急に精神的ケアが必要な状態だという。
谷川医師は1991年から福島第1、第2原発の非常勤産業医。今月16日から4日間にわたり、第2原発の免震重要棟に寝泊まりしながら診察した。
谷川医師によると、中には24時間態勢で作業に従事し、一時、外出を禁止されていた人もいた。最初は1日1食、現在は3食になったが、缶詰やレトルト食品が中心の偏った食事だという。
第1原発で作業を終えた人は除染し、第2原発の敷地内にある500人収容の体育館で雑魚寝。畳を敷き詰め、その上に防寒シートを敷き、毛布と寝袋にくるまる。
幹部以外は「4勤2休」のシフトで、4日間は入浴できない。
谷川医師は「通気性のない防護服は大量の汗をかく。疲れも取れず、さまざまな病気や皮膚疾患になりやすいだけでなく、作業ミスも生みかねない」と懸念する。
約30人を問診したところ、危険な作業の重圧に加えて、「家族に『行かないで』と言われながら仕事に行っている」「家を失い、休日は避難所で生活しているが、住民から厳しい視線にさらされている」―など強いストレスがうかがわれたという。
谷川医師は「現場社員の8割以上が原発20キロ圏内に住まいがあり、中には家族を失った人もいる。一方で『加害会社に勤めている』との負い目を抱え、声を上げられていない」としている。
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