この間から、文庫本でありながら頁数は429Pで値段も1,260円という 小沢昭一が書いた厚い本を読んでいる。
面白いのでつい一気に読んでしまいそうになるのを抑えて、1日50ページくらいをチビチビと。
オリジナルは昭和51年頃に雑誌「話の特集」に2年にわたり連載されたものだそうだ。
そのころはもう「話の特集」の定期購読はやめて、たまに気が向いたときだけ買っていたので、この連載を読んだ記憶はない。
webによるとこの本の概要は:「戦後民主主義を改めて手にしてみたい」という切なる願いをこめて、「昭和の長男」の一人である著者が自分史を発掘する。
昭和四年の出生から小中学校・海軍兵学校時代、二十年の終戦・復員を経て、早稲田大学入学、二十四年の俳優座養成所入所まで。
母や友人との対話を重ね、激動の時代を浮き彫りにしながら綴る、画期的な「お父さんの昭和史」。
[目次]
出生篇;続出生篇;日暮里篇;蒲田篇;高円寺・良寛篇;小学校篇;初恋篇;村沢先生篇;相撲メン 鯱の里篇;芸能的環境篇
;父の血篇;道塚篇;中学校篇;国領先生篇;海軍兵学校前篇;海軍兵学校後篇;「死」と空襲篇;復員篇;ギンシャリと芸能祭篇;青春多忙篇;青春混沌篇;俳優志望篇;年表篇
小沢昭一がこの自分発掘をやったのは、敗戦から30年たった時期で、その契機は、世の中の戦前体制復帰のキナ臭い動きに、彼が不安感を持ったことに始まる。
そしてこの本が昨年、文春文庫から版元が変わり、岩波現代文庫で復刻されたのは、それからまた30年が経過してからだ。
彼が中学受験で府立一中の入試に落ちて、挫折感を持って入学したのが滑り止めの麻布中学。
この中学の同学年がまた凄い。フランキー堺、大西信行、仲谷昇、なだいなだ、加藤武などなど。
その中学時代の生活も面白いし、新潟県境の信州の村で生まれ紆余曲折を経て、東京の蒲田で小澤写真館を開いた父親の人生も辛くて悲しくて面白い。
この本は昭和4年に生まれた日本人が、どのように最後の海軍兵学校・将校生徒になり、戦後は俳優となって生き延びてきたかを真面目に書いた本で、下手な歴史書よりはるかに面白い。
面白いはずで、ご近所から遊び友達など細部全てが固有名詞で成り立っている。
昭和17年に旧制中学校に入学した彼や、彼のまわりの人らも、今年は81歳になるかそれ以上の年齢になっている。
まだ小沢昭一が生きている間に、彼の体験に同化してこの本を読めて良かったと思う。
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