(9月17日 イタリア軍兵士6名の犠牲を出した爆破現場 カブール “flickr”より By spoletocity
http://www.flickr.com/photos/spoletocity/3928854580/)
【タリバン側に数万ドルの「わいろ」】
インド洋での給油活動中止に伴って、今後のアフガニスタンへのかかわりをどうするのかが日本では大きな問題になっていますが、アメリカの増派問題のほか、欧州各国でもさまざまな問題が生じています。
欧州の場合、どの程度深入りするかは、国によっても異なりますが、イタリア・フランスは一応派兵していますが、イギリスのようには戦闘に加担する気はないような印象を持っています。そんな両国の話題。
****伊がタリバンに「わいろ」=交代の仏軍、治安状況誤認で被害-英紙****
15日付の英紙タイムズ(電子版)は、西側軍事筋の話として、アフガニスタンのサロビ地区にイタリア軍部隊が駐留していた2008年7月までの間、同国情報機関員が部隊の安全確保を目的に、イスラム原理主義勢力タリバン側に数万ドルの「わいろ」を渡していたと報じた。
首都カブール東方65キロのサロビ地区の治安担当はフランス軍部隊に交代したが、同年8月、仏兵10人がタリバンの攻撃を受けて死亡した。イタリア軍はそれまで死者1人を出しただけだったため、仏軍は情勢が比較的落ち着いていると誤認。パトロールの際、十分な警戒と装備を怠っていたという。
わいろを贈った疑惑は、米情報当局による電話傍受により発覚。北大西洋条約機構(NATO)軍幹部は「地元勢力を買収したことを同盟国に知らせないのはおかしい」と批判している。
AFP通信によると、この報道について伊首相官邸は声明を出し、「ベルルスコーニ政権がタリバンへの金銭支払いを承認したことは一度もない」と強く否定した。【10月15日 時事】
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タリバンと戦う代わりに賄賂を贈っていたというのは・・・・。
「地元勢力を買収した」と言えば、きこえはよくなります。
首相官邸声明にもかかわらず、「イタリア・ベルルスコーニ政権なら、そんなこともあるだろうな・・・」と思ってしまいます。日頃の行いというか国民性のせいでしょうか。
【「フランスは対テロ、自由と民主主義のための戦いで責任を果たす」】
08年8月の戦闘は、アフガニスタンの首都カブール郊外で18日から19日にかけ、パトロール中の国際治安支援部隊(ISAF)のフランス軍部隊が待ち伏せ攻撃を受けて戦闘となり、フランス兵10人が死亡、21人が負傷したものです。北大西洋条約機構(NATO)が率いるISAFのアフガン展開後、1回の戦闘では最悪の外国兵士の犠牲者数となりました。
事件を受けて、フランスでは当時、野党の「戦争の目的は何か。そのために何人の兵士が必要なのか。01年からこれまでに何が得られたのか。」(社会党のオランド第1書記)「兵士らは米国が自国のために行う終わりのない戦争のために死んだのだ」(極右・国民戦線のルペン党首)という批判に、サルコジ大統領は「仏部隊は大きな打撃を受けたが、フランスは対テロ、自由と民主主義のための戦いで責任を果たす。私の決意は変わらない」と述べ、派兵継続に変更のないことを表明しています。【08年8月20日 毎日より】
しかし、そもそもがイタリア部隊の賄賂が発端だったとなると、どうでしょうか・・・。
なお、この戦闘に関して、仏ルモンド紙は当時、戦闘で負傷した複数の仏軍兵士の話として、NATOによる誤爆とISAFの支援を行っていたアフガニスタン軍からの誤射があったと報じています。
フランス国防相も、NATO側・アメリカ国防総省も、この報道を否定していますが、イタリア部隊が賄賂を隠していたことが原因で、しかも友軍の誤爆で犠牲者が出た・・・となると踏んだり蹴ったりです。
【「早期撤退が最良の選択だ」】
イタリアのために付け加えれば、2800名の兵士を派兵しているイタリアもアフガニスタンでは大きな犠牲を払っています。
先月17日には、首都カブールで起きた自爆攻撃でパラシュート部隊6人が死亡、4人が負傷しています。
今回の犠牲で、イタリア軍のアフガニスタンでの死者は計20人に達し、ベルルスコーニ首相は「早期撤退が最良の選択だ」と述べています。
***伊首相:アフガン撤退を示唆 爆破攻撃で6人死亡受け****
アフガニスタンの首都カブールで17日に起きた爆破攻撃でイタリアのパラシュート部隊6人が死亡、4人が負傷したのを受け、ベルルスコーニ首相はこのほど、「早期撤退が最良の選択だ」と述べた。イタリアは約2800人を派兵しているが、今回の犠牲でアフガンでの死者は計20人に達した。米国の増派要請に積極的だったイタリアだが、今後、撤退論に傾きそうな情勢だ。
イタリアの国営放送によると、首相は17日、撤退を語る一方、「国際問題であり他国との合意をすぐに覆せない」と即断を避けた。
即時撤退は無理でも「クリスマスまでの撤退を望む」と言う与党最右派、北部同盟書記長のボッシ改革担当相らの声が支持され始めている。ただし、対米関係を重んじるフラティニ外相は残留を主張しており、閣内でも議論が割れそうだ。【9月19日 毎日】
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【「公平に負担すべきだ」】
一方、アメリカに次ぐ9000人を派兵しているイギリス・ブラウン首相は増派を発表しています。
****英軍、アフガニスタンへ500人増派 9500人規模に*****
バラク・オバマ米大統領が閣僚らと、アフガニスタン戦略の見直しに関する会合を開く中、ゴードン・ブラウン英首相は14日、アフガニスタンに兵士500人を増派すると発表した。
ブラウン首相は、危険度が増し、世論の評価をさらに得にくくなっているアフガニスタンへの軍派遣について、北大西洋条約機構(NATO)同盟国にも「公平に負担すべきだ」と求め、アフガニスタン政府には兵力と腐敗対策を強化するよう圧力をかけた。
英下院に対しブラウン首相は、新たに設定する派遣規模は原則9500人程度とすることで、政府内で合意したと報告した。英国防省によると、現在からの増員数は500人となる。
ブラウン首相は増派の条件として、アフガニスタン政府自身が戦闘訓練を受けられる警官や兵士を提供し、責任を果たす姿勢を見せること、英軍が適切な装備をもてること、ほかのNATO加盟国も派遣規模を拡大することの3点を挙げた。
英軍のアフガニスタンへの現在の派遣規模は9000人で、米国に次ぐ。2001年の米軍によるアフガニスタン攻撃以来、これまでに英軍兵士221人が死亡している。【10月15日 AFP】
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“ほかのNATO加盟国も派遣規模を拡大すること”というのは、なかなか実現困難な条件です。
【アフガン政府の汚職体質が改善されない限り・・・・】
焦点であるアメリカの増派については、アメリカの国民世論からすると厳しい情勢です。
****アフガンへの増派は最大8万人も 米司令官、汚職が壁と結論*****
アフガニスタンの駐留米軍トップのマクリスタル国際治安支援部隊司令官が、オバマ大統領への提言で、米軍の追加増派規模について、自身が支持する4万人の倍に当たる最大8万人を選択肢の一つとして示していたことが13日分かった。AP通信が報じた。司令官はさらに、増派したとしても、アフガン政府の汚職体質が改善されない限り、情勢好転は望めない可能性があると結論付けた。【10月14日 共同】
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マクリスタル国際治安支援部隊司令官も言っているように、今のカルザイ政権の汚職体質ではいくらつぎ込んでも・・・というところですが、その大統領選挙について、決選投票をやる方向との記事もありました。
****決選投票の可能性高い=アフガン大統領選-駐米大使****
アフガニスタンのジャワド駐米大使は15日、ワシントン市内での講演で、大統領選挙の決選投票が行われる可能性が高いと言明した。実施された場合、カルザイ大統領と2位のアブドラ前外相との間で行われる。アフガン政府関係者が決選投票の可能性に言及したのは初めて。
同大使は、大統領選をめぐる混乱を早期に収拾する必要があり、できれば1カ月以内に決選投票を実施することが望ましいとした上で、「すべての関係当事者が(早期実施に向け)努力すべきだ」と訴えた。【10月16日 時事】
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本当にできるのでしょうか?