(8月15日 自宅軟禁下の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんと面会したアメリカ上院議員のジェームズ・ウェッブ外交委員会東アジア太平洋小委員会委員長(民主党)。“flickr”より By Senator Webb
http://www.flickr.com/photos/senatorwebb/3931748023/)
タイのホアヒンで開かれていた東南アジア諸国連合(ASEAN)の一連の首脳会議は、25日の東アジアサミットで全日程を終え閉幕しまた。
ミャンマーのテイン・セイン首相は24日、東南アジア諸国連合・日中韓(ASEANプラス3)首脳会議で、「スー・チー(さん)の態度が軟化していると感じている。今の態度を続ければ、現在の措置を緩和することは可能」【10月25日 読売】と、自宅軟禁下に置く民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんに対する措置を緩和する可能性があると発言したそうです。
こうしたミャンマー・軍事政権側の“柔軟な対応”のほか、オバマ米政権が従来の制裁一辺倒ではなく、対話によるミャンマー問題への関与方針を示しているなかで、米国の政策転換による事態の変化を見守ろうとの空気が広がったこともあって、今回はミャンマー軍事政権への批判はほとんど聞かれず、各国は来年の総選挙実施に向けた動きを見守る姿勢に終始したと報じられています。
****ASEAN会議:閉幕 ミャンマー情勢静観****
タイのフアヒンで開かれていた東南アジア諸国連合(ASEAN)の一連の首脳会議は、25日の東アジアサミットで全日程を終え閉幕した。ASEANでは会議のたびにミャンマーの民主化問題が焦点となってきたが、今回は同国軍事政権への批判はほとんど聞かれず、各国は来年の総選挙実施に向けた動きを見守る姿勢に終始した。
会議に出席したミャンマーのテイン・セイン首相は来年予定する20年ぶりの総選挙について「すべての当事者の参加に向け準備を進めている」と説明。自宅軟禁が続く民主化運動指導者、アウン・サン・スー・チーさん(64)に関しては「外国の代表などとの面会も可能になっている」と政権側の柔軟姿勢をアピールした。
今回、ミャンマーに対する批判が出なかった背景には、今年8月以降のオバマ米政権による軍事政権との対話の動きがある。ASEANはこれまで「欧米による対ミャンマー経済制裁は軍事政権を孤立させるばかりで、事態の改善に結びつかない」として対話の重要性を訴えてきただけに、米国の政策転換を歓迎し、今後の成り行きを見守ろうとの雰囲気が強い。ASEANとASEANプラス3(日中韓)両首脳会議や東アジアサミットで採択された議長声明には、スー・チーさんの解放を求める文言は盛り込まれなかった。
だが総選挙がどこまで「自由・公正」に行われるかも軍事政権次第だ。総選挙後に誕生するミャンマー新政権下で一定の民主化が実現しない場合、「内政不干渉」原則などから加盟国に強い姿勢を打ち出せないASEANの限界を露呈する結果になりかねない。【10月25日 毎日】
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上記朝日記事では、冒頭の軟禁緩和の発言は触れられていません。
軍事政権がスー・チーさんの処遇をどのようにするつもりかは定かではありません。
ミャンマーは国際批判をかわすためスー・チーさんの処遇緩和を期待させる“スー・チー・カード”を切ることは、これまでも常套手段でしたので、今回もその類なのか、あるいは、アメリカとの対話もあって実質的な変化が見られるのか・・・?
今後、アメリカとの対話のなかで制裁解除を求めるのと引き換えに、あるいは来年選挙で誕生する“民政”をアピールするために、これからも“スー・チー・カード”を見せる事態も考えられます。
ただ、いずれにしても、来年選挙においてスー・チーさんが野党の先頭にたって政治活動を行うようなことは考えられません。仮に軟禁緩和があったとしても、政治活動は禁止という条件付ではないでしょうか。