孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  くし焼肉店名称騒動は、“双頭政権の対立表面化”か?

2009-10-15 21:26:24 | 国際情勢

(プーチン指導部を崇拝する官製青少年団体「ナーシ」の面々 白いコートがトレードマークのようですが、このコートの背には“president’ messennger”という趣旨の言葉が書かれているとか。
ただ、メドベージェフ大統領に代わった今もそうなのかどうかは知りません。
“flickr”より By Lyalka
http://www.flickr.com/photos/leilat/434802013/

【“真実を恐れ、ソ連の過去にしがみついている”】
モスクワの「アンチ(反)・ソビエト」という名前のくし焼肉店をめぐって、ロシアではちょっとした騒動が起きています。
単に店の名前の問題にとどまらず、言論の自由のあり方、プーチン首相を信奉する青年組織「ナーシ」の問題、ひいては政権内のリベラル派と保守派の対立にまで話は及んでいます。

****赤の広場 反ソくし焼き肉店?*****
モスクワ北部で今年夏に開業したくし焼き肉店「アンチ(反)・ソビエト」がとんだ騒動になった。
モスクワの行政区が9月半ば、店名を「不快」とする一部退役軍人の要請を受け、看板を掛け替えさせたのが発端だった。さるジャーナリストがネット記事で当局と元軍人らを批判したところ、プーチン指導部を崇拝する官製青少年団体「ナーシ」が連日、ジャーナリストの自宅前で過激な抗議行動に出ているのだ。

くだんのジャーナリストは店名変更を迫った退役軍人らについて「(血塗られた)ソ連権力を護持したあなた方のような元軍人が今、真実を恐れ、ソ連の過去にしがみついている。人知れずソ連体制との闘いに身を捧(ささ)げた“退役軍人”がいることも忘れてはならない」と記した。
これに対し、官製青少年団体は「退役軍人の侮辱は許されない。刑法の侮辱罪で訴え、公式謝罪を求める」「歴史を書き換える者には街頭行動が一番効く」と息巻く。ジャーナリストは身の危険を感じ、潜伏生活を余儀なくされている。

実は、ソ連時代にも同じ場所にくし焼き肉屋があり、ここに集った反体制派知識人らは密かに「反ソビエト」と称した。店の向かい側にホテル「ソビエト」があることにも引っかけた呼び名だった。そのソ連当時の店内を“再現”したのが冒頭の店だ。むしろソ連時代を回顧する趣向で、実際は「反ソビエト的」ですらないのだが。【10月14日 産経】
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【大統領直属評議会 VS 与党「統一ロシア」】
上記産経記事だけでは、トピックス的な話題にすぎませんが、人権などに関するメドベージェフ大統領直属の評議会、プーチン首相率いる与党「統一ロシア」も絡んでくると、話が大きくなってきます。

****愛国派団体が記者を『脅迫』 ロシア政権内で賛否めぐり論争*****
ロシアで、退役軍人会を批判したジャーナリストに対して愛国派団体が脅迫まがいの圧力を加えたとされる騒ぎがあり、政権内で団体の行為をめぐる賛否真っ二つの論争が起きている。「言論の自由」の確立を訴えてきたメドベージェフ大統領は今のところ、自身の立場を明らかにしておらず、事態は混乱の度を増している。
発端はモスクワで先月、店名に「反ソビエト」と付けた食堂に退役軍人会が改名を要求したこと。
「(軍人会の)おつむはスターリン主義のまま」と論評した記者に対し、愛国派の青年団体「ナーシ」が猛反発。記者の自宅前で連日、抗議集会を開く騒ぎに発展した。ネット上に家族の写真まで掲載された記者は「脅迫行為があった」などとして身を隠した。

クレムリン(大統領府)人権会議のパンフィーロワ委員長が五日、言論の自由を理由に団体を非難する声明を出したところ、与党「統一ロシア」などから「ナーシにも抗議の自由がある」と異論が噴出。インタファクス通信によると、同委員長が七日、検察当局にナーシへの刑事捜査を求める意向を示したのに対し与党内から大統領に委員長解任を求める動きがあり対立はエスカレートしている。
ロシアでは、経済危機からソ連時代を肯定する民族強硬派が勢力を増しており、八日付の英字紙モスクワ・タイムズは「大統領は政権をコントロールできていない」との人権活動家の声を伝えた。【10月9日 東京新聞】
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上記東京新聞記事では“「言論の自由」の確立を訴えてきたメドベージェフ大統領は今のところ、自身の立場を明らかにしておらず”とありますが、「クレムリン(大統領府)人権会議」は大統領直属の評議会で、地元紙では“大統領も(パンフィーロワ委員長の)声明に同意したとみられ”と報じられています。【10月12日 宮崎日日】

メドベージェフ大統領直属評議会の委員長が、プーチン首相側近が創設にかかわった「ナーシ」を批判、一方、プーチン首相率いる与党「統一ロシア」は「ナーシ」を擁護して、パンフィーロワ委員長の更迭を求める・・・という構図になっています。
上記の地元紙「宮崎日日新聞」では、記事の見出しは“双頭政権の対立表面化”と、非常に仰々しいものになっています。

そこまでの問題かどうか・・・最近次期大統領選挙への出馬をめぐって、メドベージェフ大統領とプーチン首相の間に微妙な空気があるような報道もされており、そうした流れと重ねると上記見出しのようなことになるのでしょう。
ただ、“双頭政権の対立”というのは、ロシア国外の欧米メディアが“期待”しているものであるため扱いも大きくなりますが、どれだけロシア政権内部に実際存在するのかは全くわかりません。
メドベージェフ大統領がプーチン首相とは異なる独自色を出したいと考えていたとしても、それを実行できる政治権力基盤があるのか・・・・。

また、仮にメドベージェフ大統領が比較的リベラルな考えの持ち主だったとしても、それをストレートに出すことは政治的に危険でもあり、むしろ保守派からの批判を避けるため、ことさらに強気な外交姿勢を見せるということも考えられます。

【地域の(限定的な)戦争でも核先制使用】
ロシアのパトルシェフ安全保障会議書記は、年内にメドベージェフ大統領に提出する新軍事ドクトリンでは、核兵器による先制攻撃を行う条件として地域紛争への対応を新たに加える方針を明らかにしています。
核廃絶を求める国際的な流れに逆行する核を使用する条件を緩和するもので、南オセチア問題で敵対するグルジアなどに対し、軍事的な圧力を高める狙いと見られています。

****ロシア:核兵器先制使用の条件緩和を検討*****
ロシアの安保政策を策定する安全保障会議のパトルシェフ事務局長は、14日付のイズベスチヤ紙に掲載されたインタビューの中で、年末までに策定を目指す新たな軍事ドクトリンで核兵器による先制予防攻撃の条件緩和を検討していることを明らかにした。オバマ米大統領が「核なき世界」を提唱したことで盛り上がりを見せている核軍縮の機運に逆行する可能性があり、今後議論を呼びそうだ。

軍事ドクトリンは軍事戦略の指針となる文書。00年に改訂した現行ドクトリンは、ロシアや同盟国が通常兵器で「大規模攻撃」を受けた場合、核兵器の先制使用の可能性を盛り込んでいる。
パトルシェフ氏は同紙に、新ドクトリンは「大規模攻撃だけでなく地域の(限定的な)戦争」も対象に含めるとし、「情勢や敵の意向に応じて核兵器を使用する可能性の選択肢を検討している」と述べた。新ドクトリンは年内にメドベージェフ大統領に提出される見通し。

メドベージェフ大統領は8月、昨年のグルジア紛争を念頭に、国外での軍事力行使の条件を緩和する国防法改正案を下院に提出。改正案はロシアだけでなく、周辺同盟国の脅威に対しても軍事力が行使できると規定している。今回の軍事ドクトリン見直しもグルジアなど近隣の地域紛争を念頭に置いている可能性がある。
ロシアは5月に公表した「2020年までの国家安全保障戦略」で、長期的には国際的な核廃絶への道も視野に入れつつ、中期的には核戦力を維持する方針を明記している。【10月14日 毎日】
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ロシアでは「統一地方選」が11日に実施され、プーチン首相が党首を務める与党「統一ロシア」がモスクワ市議会選をはじめとして軒並み勝利しています。
野党側は大規模な選挙違反を指摘していますが、大勢には影響しない見通しです。

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