孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

地球温暖化  どちらに“賭ける”のが合理的か?

2009-10-24 15:05:31 | 環境

(夏の降雪で氷河が形成されるヒマラヤでは、わずかな気温上昇で雪が雨に変わり、氷河が縮小します。
中国、東南アジア、インドの大河はヒマラヤ氷河を源流としていますので、すでに急速に進行している氷河縮小はアジア全域に甚大な影響を与えます。 “”より By Paul A. Fagan
http://www.flickr.com/photos/paulfagan/1269554429/in/set-72157601750590390/

【温暖化は本当か?】
地球温暖化にどのように取り組むべきかは、非常に難しい問題です。
国家レベルでの難しい取り組みの成否は、私たち一人ひとりが温暖化の問題をどのように認識しているかという点にかかっている訳ですが、アメリカでの世論調査では懐疑的な見方が増えているそうです。

****地球温暖化:米国民「深刻」65%…昨年から8ポイント減*****
地球が温暖化しているとの明確な科学的証拠があると考えている米国民が昨年の71%から57%へと大幅に低下したことが22日、米世論調査機関「ピュー・リサーチセンター」の調査で分かった。温暖化が産業活動や車の排ガスなど人為的な原因によると見る割合も昨年の47%から36%に下がった。
調査は9月30日~10月4日の間、全米の1500人を対象に行われた。温暖化を「深刻な問題」ととらえる米国民は65%と半数を超えているが、07年の77%、昨年の73%から落ち込んだ。意識が大きく変わった要因として、無党派層と共和党支持者の間で温暖化に懐疑的な見方が増えたことがあげられる。
温暖化に「科学的証拠がある」と答えた無党派層と共和党支持者は昨年の調査でそれぞれ75%、49%だったが、今年は53%、35%に下がった。一方、民主党支持者は75%で昨年比8ポイント減にとどまった。国民の関心が雇用情勢の悪化や医療保険改革に移ったことに加えて温暖化対策に反対する保守系のキャンペーンも影響しているとみられる。【10月23日 毎日】
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自然はゆっくりと、ときに激しく変動するもので、その変動は暖かくなったり寒くなったり、一様ではありません。
本当に世間で言われているような温暖化が、人為的な原因で進行しているのか・・・私も疑わしく思うことがあります。
また、問題が深刻化するのは、もう少し先のことであり、どのような影響が実際あるのかもクリアではありません。
一方で、今現在困っている問題は山積しています。
将来の、原因も明白ではない危機、どんな影響がでるかも定かでない危機に対して、今大きな負担をおって取り組むというのは、一種の賭けのようにも思えます。

上記調査でも“全体的に温暖化問題に疑問を持つ人の割合が増えているが、CO2排出削減を目指す政策は大多数の国民から支持されており、この政策に反対しているのは39%だった。”【10月24日 AFP】ということで、多くの人が気にはなっていることは間違いのですが、大きな痛みを伴うような判断はできれば先延ばしにしたい・・・という気持ちでしょう。

【合理的な賭け方は】
しかし、現在可能な限りの科学的検証の総意としては、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が取りまとめたように、人為的原因で温暖化が進んでいるというのが結論です。
しかも今行動しないと、将来に大きな禍根を残すことになるという、待ったなしの状況にあるというのがその判断です。

****「CO2排出は2015年までにピーク迎えるべき」、IPCC議長*****
2009年10月16日 10:40 発信地:パリ/フランス
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のラジェンドラ・パチャウリ議長は15日、パリで開かれた国際エネルギー機関(IEA)の閣僚理事会で、気温上昇抑制の目標を達成するためには厳しい中期目標を設定し、2015年までに二酸化炭素(CO2)の排出ピークを迎える必要があると警告した。

パチャウリ議長は「強力、緊急かつ効果的な行動」が必要だと訴え、12月にデンマーク・コペンハーゲンで開かれる気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)では、「2050年の野心的な目標を設定するだけでは不十分で、2020年までに実際にCO2排出を削減する目標を設定することが極めて重要だ」と主張した。

主要8か国(G8)を中心とする各国は、産業革命以来の気温上昇幅を2度以内に抑えるという目標を支持している。パチャウリ議長はこの目標は「かなり重大な影響なしには達成できない」とした上で、「気温上昇幅をわたしが言及した水準(2度)に抑えることを確実にするためには、世界のCO2排出量は2015年までにピークを迎えなければならない」と述べた。【10月16日 AFP】
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今知りうる結論がそういうことであれば、特段の根拠もなく「本当かな・・・」「そんなことはないのでは・・・」と懐疑的になるより、その提言の方向で行動することに“賭ける”というのが“合理的”でしょう。
自分のほうがIPCCより将来についてわかっている・・・と信じるのでない限り。

【オバマ頼み】
しかし、国際社会にはまだためらいがあるようです。
****COP15:議定書採択を先送り 「政治合意」の見通し*****
京都議定書に定めのない13年以降の地球温暖化対策の枠組みを決める12月の「国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議」(COP15)で、関係国が法的拘束力を持つ「ポスト京都」議定書の採択を来年に先送りし、法的文書でない「政治合意文書」を採択する見通しが濃厚となった。欧州の複数の交渉担当者が明らかにした。
交渉担当者は、政治合意文書に温室効果ガス排出削減の目標値や行程表などを盛り込み、事実上の拘束力を持たせることを目指している。

欧州連合(EU)など関係国は当初、COP15で京都議定書に代わる議定書の採択を目指してきた。だが、米国の温暖化対策法案の成立が来年にずれ込む見通しが強まったことに加え、COP15に向けた交渉が遅れており、新議定書の採択は困難な情勢となった。(中略)
途上国は先進国にだけ温室効果ガスの排出削減を義務付けた京都議定書を温存し、新議定書を策定するよう主張している。EUは米国の参加していない京都議定書の枠組みには限界があるとして、京都議定書の要素を取り込んだ単一議定書の採択を目指している。(中略)

新議定書採択は先送りされる可能性が強まり、各国首脳級の会議参加によって、政治合意にどれだけの「重み」を持たせられるかが焦点に浮上している。(中略)
COP15の成否のカギを握るのは、(1)先進国の温室効果ガス排出量の削減目標(2)排出量削減を含む途上国の温暖化対策(3)途上国への資金支援--について、政治合意にどこまで盛り込むことができるかだ。国連気候変動枠組み条約事務局の担当者は「政治合意に数値を入れるのは可能だし、入れるべきだ」と主張する。
政治合意とはいえ、各国を事実上縛ることになる数値目標の盛り込みには首脳レベルでの決断が必要となる。ブラウン英首相が各国首脳にコペンハーゲン入りを呼びかけており、サルコジ仏大統領、メルケル独首相は参加の意向を伝えているという。
動向が注目されるのはオバマ大統領だ。米政府はCOP15までに上院の温暖化対策法案の委員会可決まではこぎつけたい考えとされる。オバマ大統領は12月10日にオスロで開かれるノーベル平和賞授賞式には出席の予定だが、「コペンハーゲンは閣僚レベルと考えている」(米政府筋)とされ、COP15への参加は未定だ。
1997年12月に採択された京都議定書の場合、ゴア米副大統領(当時)が土壇場で京都に乗り込み、交渉をまとめた経緯がある。【10月24日 毎日】
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ノーベル平和賞受賞では批判が多いオバマ大統領ですが、やはり世界が彼に期待しているのも現実です。
それから、「90年比25%」を国際公約に掲げた鳩山由紀夫首相も。

【最初の影響はアジア大旱魃】
温暖化対策が成功するかどうかは“やる気次第”でもあります。
スウェーデン第3の都市マルメは、一時基幹企業が撤退し、失業率は22%にまでなったそうですが、風力や太陽光発電を利用して環境に配慮した町作りを進め、地球温暖化が国際的な共通課題となる中で国際的にも注目を集め、投資や人口流入をも促しているそうです。【10月22日 産経】
“マルメには、欧州各国、さらに中国や北朝鮮などから年間計4000人の視察者があるという。”
北朝鮮も関心があるのでしょうか?

一方で、現状を警告するものとしては、世界自然保護基金(WWF)は22日、1分間にサッカー競技場36個分に相当する森林が世界各地で失われているとの報告書を発表しています。【10月23日 AFP】
また、インド・カシミール地方にあるヒマラヤ山脈の氷河が、冬季の気温上昇により「驚くべき」速度で縮小し、インドとパキスタンの広い地域への水の供給が脅かされているとの報告もあります。【10月14日 AFP】

温度上昇の影響を受けやすく急速に縮小するヒマラヤの氷河は、中国・インド・パキスタン・バングラデシュ・ミャンマーの9つの大河に水を供給していますので、地球温暖化の“目に見える”最初の世界規模の影響は“アジア大旱魃”ではないでしょうか。
温暖化への対応では、人類の英知が試されています。
コメント
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