(事件から3年、アンナ・ポリトコフスカヤさんを追悼するロシアの人権活動家 “flickr”より By kostyukov
http://www.flickr.com/photos/38188263@N07/3990509146/)
【治安当局が関与】
2006年10月7日、ロシアの著名女性ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤはモスクワ市内の自宅アパート建物エレベーター内で射殺体で発見されました。
彼女は一貫して、プーチン前大統領の強権支配と、ロシアの秘密情報機関であるロシア連邦保安庁を強く批判していました。
この事件から3年が経過しました。
****ロシア:プーチン批判の記者殺害から3年 追悼集会開く*****
ロシアでプーチン前政権を批判していた「ノーバヤ・ガゼータ」紙の女性記者アンナ・ポリトコフスカヤさん(当時48歳)が殺害された事件から3年にあたる7日、モスクワ市内で事件の早期解明を求める追悼集会が開かれた。集会には約300人が参加した。
ポリトコフスカヤさんは第2次チェチェン紛争でのロシア軍兵士らの人権侵害などを批判していたが、06年10月7日、自宅アパートで射殺された。
捜査当局は、殺害の手助けをしたとして元連邦保安庁(FSB)将校ら4人を起訴したが、事件を審理したモスクワ地区軍事裁判所は今年2月、証拠不十分で無罪の判決を下した。その後、最高裁はいったん判決を差し戻したが、9月初め、改めて検察に捜査全体のやり直しを命じた。【10月8日 毎日】
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ポリトコフスカヤ殺害事件には、連邦保安局(FSB)職員やチェチェン共和国の地元地区長の関与を検察当局も認めたとも報じられていました。
****治安機関の関与可能性強まる ロシア・女性記者射殺事件****
06年10月に起きたロシアの独立紙「ノーバヤ・ガゼータ」の女性記者アンナ・ポリトコフスカヤさん(当時48)射殺事件の裁判で、連邦保安局(FSB)職員やチェチェン共和国の地元地区長の事件への関与を、検察側が認めたことが明らかになった。16日、インタファクス通信が被告弁護士の話として伝えた。
同事件の捜査では、銃撃の手配をしたとされる元内務省職員と見張り役とされる男2人が逮捕され、昨年11月に軍事裁判が始まった。捜査の過程でFSB職員や地元地区長の関与が浮上したが、立件されていない。今回、検察当局が関与を認めたことで、同記者が追及したチェチェンでのロシア軍や治安機関による人権侵害、地元政権による汚職などに関連して事件が起きた可能性がいっそう強まった。【2月17日 朝日】
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プーチン支持が強いロシア国内にあっては、激しくプーチンを批判したポリトコフスカヤは国民の支持を得ているとは言えませんが、政権を批判するジャーナリストが治安当局によって抹殺されたことが明らかになれば、ロシアの民主主義、プーチン支配体制の本質が問われることになります。
【混迷する裁判】
裁判は狙撃犯や首謀者を特定しないまま進められ、モスクワの軍事裁判所の陪審団は2月19日、殺人ほう助罪などで起訴された被告に対し、証拠不十分として無罪の評決を下しました。
審理を担当したズボフ裁判官は「ポリトコフスカヤさん殺害に実際に関与した人物を特定するため、事件を検察の捜査委員会に戻す」と述べ、検察に再捜査を命じました。
検察は実行犯を起訴しないまま上告、ロシア最高裁は6月25日、殺人ほう助罪などで起訴された被告を無罪としたモスクワ地区軍事裁判所の判決を破棄し、審理のやり直しを命じています。
裁判は上記のように混迷していますが、無罪判決が出された当時、メドベージェフ大統領が検察のやり方を批判したのが目につきました。
****大統領、検察の仕事を批判=女性記者殺害の被告無罪で-ロシア****
ロシアのメドベージェフ大統領は25日、検察当局は陪審員による裁判制度の下で被告の有罪を立証する仕事を学ぶ必要があると述べた。反体制派の著名女性ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤさんが殺害された事件の裁判で、被告4人全員に無罪の評決が下されたことを間接的に批判した。
大統領は「証拠は有罪評決を引き出すのに十分なものでなければならない。陪審員制度がなかったころは良かったと愚痴を言っても仕方がない」と語った。
陪審員制はソ連崩壊後、司法改革の一環として導入された。
一方、最高検察庁のチャイカ長官は「検察官は高い水準のプロの仕事をした」と述べ、ポリトコフスカヤさん事件の担当検事を擁護。検察側は控訴する方針だが、検事を交代させる必要はないとも述べた。【2月26日 時事】
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プーチン支配体制の闇にかかわるこの裁判に、双頭支配のかたわれメドベージェフ大統領はどのようなスタンスで臨んでいるのでしょうか。真相解明を指示しているのでしょうか。適当な所で幕引きをしようとしているのでしょうか。上記記事だけではいまひとつはっきりしません。
事件から3年が経過したことを受けて、アメリカのクリントン米国務長官がロシアを批判しています。
****記者殺害3年でロシア批判=「誰も裁き受けず」-米長官*****
クリントン米国務長官は7日、ロシアの著名女性ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤさんの殺害事件から3年経過したのを受けて声明を出し、「今日まで誰も法の裁きを受けていない」と指摘、ロシア政府の対応を批判した。
同長官は、米民間団体ジャーナリスト保護委員会(CPJ)の集計を引用し、ロシアでは2000年以降、18人のジャーナリストが報道への報復として殺害されたが、犯人が有罪判決を受けたのは1件にとどまっていると強調した。【10月8日 時事】
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恐らく、事件は闇に葬られることになるのでしょう。
最近、次期大統領選挙出馬をめぐってプーチン首相との関係が憶測を呼んでいるメドベージェフ大統領ですが、こうした問題で真相究明の姿勢を明らかにして、プーチン支配を脱することができれば、ロシアの民主化、アメリカとの核削減交渉、イラン問題での国際協調などで、オバマ大統領に続いて来年のノーベル平和賞・・・なんてないか。
グルジアもありますしね。