(無人航空機“Reaper” “flickr”より By BWJones
http://www.flickr.com/photos/bwjones/2285449366/)
【増える無人航空機】
現在、戦場では無人航空機が活躍していることは周知のところです。
ロボット兵器みたいなものが開発されていることもときおり耳にします。
ですから、下記の記事は特段の目新しさはありません。
****未来の戦場は無人機だらけ?******
いま最もホットな武器は無人航空機だろう。人間を乗せずに衛星通信で操作する無人機は国防費の予算削減のあおりを受けず、逆に各国に広まりつつある。アメリカ以外にイギリス、カナダ、トルコ、スウェーデン、ロシアが導入、あるいはテストしている。
偵察用だけでなくミサイルを搭載したものもあり、米軍によるアフガニスタンとパキスタンでの無人機の使用は過去2年間で約2倍になった。人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は6月30日、イスラエル軍が昨冬 のガザ地区攻撃で、無人機を使って市民29人を殺害したと非難した。
無人機は長い目で見れば民間人の犠牲を減らせる可能性もある。HRWの報告書は無人機を「(イスラエルの)最も正確な武器」の1つと呼ぶ。ピンポイントでミサイルを撃ち込めるので、巻き添えになる市民を減らせるというのだ。
「将来的には米軍機はすべて無人になるだろう」と、HRWの報告書を書いた国防総省出身のマーク・ガラスコは言う。「軍にとって多くの利点がある」
最終目標は人間が無人機を遠隔操作せず、プログラムによって攻撃させることだとガラスコは言う。03年のイラク戦争ではこうした爆弾が戦車に対して使われた。
今のところ、ミサイル発射というつらい決断は人間が下している。だが無人機が暴走したら誰が責任を担うのか。プログラマーか、計画を承認した議員か。それともほかの誰かなのだろうか。【7月15日 Newsweek】
***************
【F22からUAVへ】
目新しくはありませんが、上記記事が指摘している現象を想起させる記事をふたつ目にしました。
ひとつは、「将来的には米軍機はすべて無人になるだろう」という部分に関係しますが、実際、アメリカ空軍では有人戦闘機から無人航空機(UAV)への急速なシフトが起きているそうで、そのあたりを紹介しているのが「さらば栄光のトップガン」(10月14日 Newsweek)です。
アメリカ空軍はステルス戦闘機F22ラプターを新たに20機導入するための40億ドルの予算を強く求めていましたが、7月17日上院はF22導入中止を決定しました。オバマ大統領はもし議会が導入を決定した場合拒否権を行使することを明らかにしていましたが、そこまでいたらず中止が決定されました。
F22戦闘機は日本も次期主力戦闘機として希望していた機種で、この生産中止は日本の防衛計画にも影響するものとして話題になりました。
この件は、F22生産に要する巨額の費用と財政赤字の観点から論じられることが多いのですが、そもそもF22は冷戦の時代に開発が決まったもので、ソ連の戦闘機との空中戦を想定していましたが、現在のイラクやアフガニスタン・パキスタンでの戦闘は当時想定したものとはまったく変わってきており、その役割が時代の要求にあわなくなってきているという問題があります。
イラクでも、アフガニスタンでも、F22が爆撃すべき戦略拠点は殆どなく、空中で追跡・撃墜すべき敵機もありません。(実際、どちらにもF22は投入されていません。)
両戦場における空軍の役割は、物資の空輸や地上部隊が敵を発見・攻撃するのを手助けすることにあり、そうした地上部隊支援で主流になってきているのが無人航空機UAVです。
これまで、アメリカ空軍参謀長は1947年~82年の10人は爆撃機か戦闘機のパイロット出身、82年~08年の9人はすべて戦闘機パイロット出身だったそうです。
パイロット出身の空軍幹部にはUAVへの抵抗感が強く、ゲーツ国防長官は空軍のUAVへのシフトについて苦労していたそうですが、08年6月のそれまでの空軍参謀長を不祥事(爆撃機が核爆弾を搭載したままアメリカ国土上空を飛行していたなど)の責任をとらせる形で更迭し、代わりに現在のシュワーツ空軍参謀長を任命しました。
彼は、戦闘機にも爆撃機にも乗っておらず、彼が操縦していたのはC130輸送機でした。
この人事にも、空軍の役割を輸送・地上部隊支援にシフトさせようとする政権の意図が表れています。
09年に空軍で訓練を受ける要員は、爆撃機や戦闘機のパイロットよりUAV操縦士のほうが多いとか。
「空軍の活動の中心に身をおきたければ、この職種を選択するべきだ」(シュワーツ空軍参謀長)
なお、ロシアや中国との有事の際の戦闘機としては、F22より小型で安価な開発中のF35で十分だそうです。
以上が「さらば栄光のトップガン」(10月14日 Newsweek)の要旨ですが、空軍のエリートは戦闘機パイロットからUAV操縦士に代わりつつあるようです。ゲーム機で育った現代若者にはうってつけのようにも思えます。
【UAV制御不能】
もうひとつ、冒頭記事のなかの「無人機が暴走したら誰が責任を担うのか」という部分にかんするもので、笑えると言うべきか、怖いというべきか、興味深い情報がありました。
****ロボット戦闘機が制御不能で暴れだしたら?****
すでに前線で実戦配備中という米空軍のUAV(無人機)の最新鋭機「MQ-9 Reaper」なんですけど、このほどアフガニスタン上空で原因不明の制御不能状態に陥ってしまい、緊急発進した仲間の有人戦闘機によって打ち落とされねばならない悲劇を招いてしまいましたよ。
「急いで撃墜せねばならない非常事態ではあったものの、幸い墜落した山中は人里離れた場所で、民間人や民間施設などの被害は一切なかったことを報告する」
そう慌てて公式声明が出されてはいるのですが、詳しい状況説明はなされることなく、真実は霧の中に包まれている感じなんだとか。こういうUAVには、かなりの安全装置なども備わっていて、たとえ制御不能になってしまっても、他に何ら危害を加えることなく基地まで戻ってくるような設定が組み込まれているはずなんですけど、どういうわけか機能せず、しかも最後の選択肢ともいうべき、自軍の戦闘機で大急ぎで撃墜して葬り去らねばならない事態って、一体どんな狂いぶりだったんでしょうね?
ちなみに、そんなに大きなニュースにはなってませんけど、実はこの1カ月ほどで、他のUAV「MQ-1 Predator」なんかも、敵軍に打ち落とされるわけでなく、次々と意味不明の墜落事故に世界各地で見舞われているなんて報告まであり、なにやら不気味な様相を呈してきております。もしやターミネーター?【9月30日 ギズモード・ジャパン】
************************
【サイバースペースの戦争】
ついでに、こんな記事も。
****次の世界大戦はサイバースペースで起きる危険性、ITU事務総局長が警告****
次の世界大戦はサイバースペースで起きるかもしれない――国連の専門機関、国際電気通信連合(ITU)のハマドゥーン・トゥレ事務総局長は6日、警鐘を鳴らした。
トゥレ事務総局長はスイスのジュネーブで開催されているITU主催の通信見本市「テレコムワールド2009」で演説し、専門家らがサイバー攻撃撲滅を訴えるなか「次の世界大戦はサイバースペースで起きるかもしれない」と警告した。トゥレ氏は、仮にそのような事態となれば「大惨事になるだろう」と指摘し、「(サイバースペースでの戦争においては)超大国などというものが存在しないことを各国に理解してほしい」と強調した。(後略)【10月7日 AFP】
******************
冒頭記事で「最終目標は人間が無人機を遠隔操作せず、プログラムによって攻撃させることだ」とありますが、サイバースペースでの戦争というになると、コンピュータ管理下の無人航空機やロボット兵器が自軍や民間人を攻撃し始める・・・なんてことも、あながち妄想の世界の話ではなくなります。
まさに、ターミネーターの世界です。
核兵器はテロリストの手に渡り、ロボット兵器は自国民を攻撃し始める・・・そんなこともあるかも。