孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

第2回日メコン外相会議  東アジア共同体構想とミャンマー民主化問題

2009-10-05 22:06:14 | 国際情勢

(ラオスの古都ルアンパバン プーシーの丘から眺めるメコン川 2003年5月)

3日、カンボジア(議長国)、タイ、ベトナム、ラオス、ミャンマーのメコン川流域国と日本の間で、「第2回日メコン外相会議」が開催され、日本からは岡田外相が出席しました。

****日メコン外相会議:北朝鮮に6カ国復帰要求で一致*****
タイやベトナムなどメコン川流域5カ国と日本の「第2回日メコン外相会議」が3日(日本時間同)、カンボジア北西部のシエムレアプで開かれた。北朝鮮に対し核、ミサイル開発の放棄と6カ国協議への即時復帰、拉致問題への早期対応を要求することで一致した。

日本と同地域の緊密な連携も申し合わせ「日メコン首脳会議」を11月6、7両日、東京で開催することを正式決定した。
また日本が掲げる2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比25%削減する中期目標や、日本の国連安保理常任理事国入りへの支持を確認。ミャンマーに対し10年に予定される総選挙が民主的に実施されるよう期待感を表明した。【10月3日 毎日】
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【「ASEANの10カ国が中心となることを希望する」】
岡田外相は、鳩山政権が掲げる東アジア共同体の構築に向け、メコン地域への開発支援の強化を表明。会議後の会見で「メコン地域の発展は東南アジア諸国連合(ASEAN)域内の格差を是正し、東アジア共同体の構築という長期的なビジョンの具体化に資する」と述べています。
一方、タイのカシット外相は岡田氏との会談で、東アジア共同体について「ASEANの10カ国が中心となることを希望する」と述べ、日中韓が主導権を握ることを牽制したとのこと。【10月4日 朝日】

東アジア共同体についての疑問は、今日5日に訪日したシンガポールのリー首相も表明しています。

****東アジア共同体構想に“疑問” シンガポール首相**** 
■「米国との強い関係維持必要」
シンガポールのリー・シェンロン首相は5日からの訪日を前に報道各社の書面インタビューに答え、鳩山由紀夫首相の提唱する「東アジア共同体」構想について、米国との関係を含め、本音を聞きたいとの考えを示した。東南アジア主要国の首脳からこうした意見が出るのは初めて。

リー首相は、すでにある東南アジア諸国連合(ASEAN)+3(日中韓)やASEAN地域フォーラム(ARF)、東アジア首脳会議(EAS)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)などの枠組みを維持することは日本や各国の利益になると指摘。同時にアジアは経済だけでなく、安全保障でも米国との強い関係を維持しなければならないと強調した。
そのうえで、「東アジア共同体の提案について詳しい説明がほとんどない。(会談では)鳩山首相の本心をよく理解できることを期待している」と述べ、首脳会談では米国との関係を含め、首相に同構想について詳しい説明を求める考えを示した。また、域内での日本の役割について、米国との関係を進めつつ、ASEAN各国とも連携を強化し、経済だけでなく政治的な役割を果たすべきだと語った。
シンガポールでは11月、APEC首脳会議が開かれる。アジア・太平洋域内では、中国の経済進出に警戒感が根強い。東アジア共同体構想を進めるうえで鳩山首相が今後、各国首脳の理解をどう得るかが課題となる。【10月4日 産経】
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3日夜閉幕した先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、アメリカがG7を再編し、新たに中国を加え欧州連合(EU)、日本、米国からなるG4への衣替えを非公式に打診したことが報じられています。

“G7から外れることになる欧州各国の反対で今回は具体化しなかったが、将来的にはG4化へ進む可能性が高まった。新興国を加えた主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)定例化に続き、中国を加えたG7の再編で、日本の地盤沈下が一段と加速しそうだ。”【10月4日 毎日】

国際的に中国の発言が増大し、日本の影響力が制約される流れのなかで、東アジア共同体構想をどのように位置づけ具体化するのか。
当然、日本と中国の思惑にも差があるでしょうし、東南アジア各国の意向、アメリカの思惑・・・なども踏まえて進めて行く必要があります。

【“連帯意識”】
東アジア共同体構想と並んで、岡田外相が今回の日メコン外相会議で強く取り上げたもうひとつの問題がミャンマーの民主化でした。
岡田外相は、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんを来年の総選挙までに解放するよう求めましたが、各国の反応はいまひとつだったようです。
域外の北朝鮮に対してはそれなりの姿勢を見せていますが、ミャンマー民主化については、“あたりさわりのない”表現になったようです。

2日に事前に行われた高級実務者協議で、日本は議長声明にミャンマー民主化問題を盛り込むべきだと主張しましたが、当事者ミャンマーが当然のごとく反発。時間内に結論がでませんでした。
他の国々はこのやりとりを“静観”していたとのことで、カンボジアのフン・セン首相は「あくまでもメコン川流域の開発を議論する場。ミャンマー民主化をめぐる議論にカンボジアは介入しない。」との消極姿勢を示しています。

こうした背景には、カンボジアにしても、ベトナム・ラオスにしても、強権的な政治体制がミャンマーと共通しており、国際社会からの人権問題追求については互いにかばいあってきたという“連帯意識”があるとのこと。【10月3日 朝日】

【ミャンマー民主化にこだわる民主党政権】
「ミャンマー民主化を支援する」と総選挙前の政策集に明記した民主党は、ミャンマー問題へのこだわりがあります。
おりしも、経済制裁一辺倒だったアメリカが直接対話に乗り出す動きを見せているだけに、「アメリカの考え方が日本の対応に近づいてきた」との認識もあって、日本の存在感を示す好機ととらえているそうです。

岡田外相はミャンマーのニャン・ウィン外相と会談し、民主化を求めています。

****スー・チーさんと対話を=ミャンマー外相に岡田氏*****
カンボジアを訪問した岡田克也外相は3日、シエムレアプのホテルで、ミャンマーのニャン・ウィン外相と会談した。外務省によると、岡田氏は軍政当局の下で自宅軟禁状態にあるアウン・サン・スー・チーさんが欧米諸国によるミャンマーへの制裁解除に協力する意向を表明していることを踏まえ「スー・チーさんの動きを真剣に受け止めて対話再開を検討すべきだ」と指摘した。
これに対し、ニャン・ウィン外相は「スー・チーさんが制裁解除への協力を申し出ている話は聞いているが、詳細は知らない」と述べるにとどめた。岡田氏はまた、2010年に予定されている総選挙までにスー・チーさんら全政治犯を釈放するよう求めた。【10月4日 時事】
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日本の存在感がどこまで示せるかはともかく、ミャンマー民主化についての積極的な関与の姿勢は正しい方向での一歩ではないでしょうか。

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