(米軍普天間飛行場上空 “flickr”より By boviate
http://www.flickr.com/photos/boviate/346637305/)
【“米国に公然と反論するようになった風潮”】
鳩山民主党政権に変わって、インド洋での海上自衛隊による給油活動の問題、米海兵隊普天間飛行場の移転計画見直し、岡田外相の核先制不使用に関する対米協議への言及、更には鳩山首相の掲げる東アジア共同体構想など、日米関係に一石を投じるような事案が相次ぎ、アメリカからは日本の対応への不満も聞こえてきます。
アメリカ国務省高官からは、「今や、最もやっかいな国は中国でなく日本だ」との発言もあったとか。
****「最もやっかいな国は日本」鳩山政権に米懸念****
22日付の米紙ワシントン・ポストは、鳩山政権が米海兵隊普天間飛行場の移転計画見直しなど「日米同盟の再定義」に動いていることに、米政府が神経をとがらせている、とする記事を1面で掲載。
国務省高官の「今や、最もやっかいな国は中国でなく日本だ」という発言を伝えた。
記事は、オバマ政権がパキスタンやアフガニスタン、イラクなど多くの課題をかかえており、「アジアの最も緊密な同盟国とのトラブルは、事態をさらに複雑にする」という米側の事情を紹介した。
鳩山政権については、「新しい与党(民主党)は経験不足なのに、これまで舞台裏で国を運営してきた官僚でなく政治家主導でやろうとしている」とする同高官の分析を示した。さらに、民主党の政治家たちが「米国は、今や我々が与党であることを認識すべきだ」(犬塚直史参院議員)などと、米国に公然と反論するようになった風潮も伝えた。【10月23日 読売】
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このほか、アメリカのメディアには日米同盟の行方を案ずる論調が目立っているそうです。
*****米主要紙、日米同盟の行方憂慮の論調******
沖縄の米海兵隊普天間飛行場移設問題に関する鳩山政権の姿勢などをめぐり、日米同盟の行方を案ずる論調が米主要紙で目立っている。
22日付ウォール・ストリート・ジャーナルは、ブッシュ前政権で国家安全保障会議の拡散防止戦略部長を務めたカロリン・レディ氏の、「広がる日米安全保障のみぞ」と題した論文を掲載した。
レディ氏は、「鳩山政権の姿勢は東アジア安全保障の礎石である日米同盟を損なう恐れがある」と憂慮。岡田外相が「核の先制不使用」を議論したいと主張していることについて、日本のこれまでの政権が米国の「核の傘」の抑止力を維持するため、先制不使用の約束に反対してきたことを指摘し、「民主党の考えは意味をなさない」と切り捨てた。
東アジア共同体構想に関しては、「中国の増大する軍事力や北朝鮮の弾道ミサイルの脅威にどう対抗するのか」と疑問を投げかけた。日米の安保関係で、米国が財政的にも作戦的にも日本より多くを負担してきたと強調し、日米の対等な同盟関係を掲げる鳩山首相に対し、「この不平等な関係を是正したいなら、大衆迎合の政策より防衛に予算を回すことから始めるのがよい」と皮肉った。
同紙が26日に掲載した社説は、普天間飛行場の移設問題で「鳩山政権内に意見の不一致が見られる」と、閣内の混乱を懸念した。
ワシントン・ポストは22日掲載の記事で、「最もやっかいな国は中国でなく日本だ」とする国務省高官の発言を紹介。鳩山政権は中国の軍事力増強にしっかり対応していくことに関心が薄いと指摘した。
さらに、民主党の谷岡郁子参院議員が、普天間飛行場移設問題をめぐってワシントンで国務省高官と面会した際、米側が「計画は民主党幹部とも合意した」と述べたところ、「私は(話し合いに当たった)幹部より頭がいい」と反発した逸話を紹介。「『合意している』と言えば『ああそうですか』と納得してもらえる時代は終わった」という米国の元外交官の表現を取り上げ、米国側の戸惑いを示した。【10月27日 読売】
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こうした事態を、一番率直に表現しているのは、次の北朝鮮機関紙ではないでしょうか。
****「飼い犬が手をかんだ」北朝鮮紙、日米関係を論評*****
北朝鮮の党機関紙・労働新聞は28日、鳩山政権発足で日米関係に「亀裂が入りかねない傾向が現れている」「不協和音は今後、さらに大きくなる」とする論説を掲載した。
平壌放送の報道をラヂオプレス(RP)が伝えた。
論説では、米国と日本が「主人と手下の関係」にあったとした上で、鳩山政権が米海兵隊普天間飛行場の移設計画見直しなどを求めたため、「米国の不安を呼び起こしている」とした。「東アジア共同体」構想については、米国にとって「飼い犬に手をかまれるようなもの」と評した。【10月28日 読売】
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【自己主張と外交】
当然ながら、日本国民の多くが、今後とも日米同盟が日本の外交戦略の基本であるとの認識は疑っていません。
ただ、そうであるにしても、日本には日本の事情なり立場なりがあるのも、これまた当然の話です。
“米国に公然と反論するようになった風潮”・・・・日本の考えを率直に伝えるのは主権国家としては当たり前のことです。
“「『合意している』と言えば『ああそうですか』と納得してもらえる時代は終わった」”・・・・もし、そうであるなら、今まで方に問題があったのでしょう。
何も、アメリカと意見の相違を煽り立てるつもりもありませんし、日本のおかれている現実を見るとき、最終的にはアメリカの主張をのむ形でまとめざるを得ないケースも多々あるでしょう。
それは現実外交ではやむを得ないことです。
しかし、自国の利害について主張し、議論の場にあげることは当然あってしかるべきことです。
それを“不愉快”と思うのであれば、その関係はまさしく北朝鮮機関紙の言うような、“手下”だか“飼い犬”だかと“主人”の関係になってしまいます。
昨今の日米関係の変化は、政権交代のもたらした良い影響のひとつかと考えます。
ただ、立場が異なる二国間の外交にあっては、いたずらに自己主張すればいいものでもなく、どこかでまとめなければならないものですから、そうした議論が有益になされるためには、国民世論やメディアにあっても、“弱腰”とか“アメリカに屈した”とか、あるいは“最初の言い分と違う、ブレた”いった類のレッテル張りは慎むべきかとも思います。
自己主張がとおらないことが安易に批判されることになると、結局、議論自体を水面下に隠してしまう、これまでのような対応にもどってしまいます。