(中国の死刑執行件数の多さを人権侵害として批判するアムネスティのポスター。そうした厳罰主義で臨まないと社会が収まらないということもあるのでしょうが、より根本的には、そうした犯罪等を生み出す社会の抱える問題にメスを入れることが必要です。 “flickr”より By Foraggio Fotographic
http://www.flickr.com/photos/foraggio/2715130223/)
【拡大を続ける中国経済】
中国が好きか嫌いかという話とは別に、また、いろんな問題を抱えつつも、中国が経済的に急速に拡大していることは事実であり、その経済力を背景に政治・軍事面でも存在感を増していることも否定できないところです。
世界同時不況に関しても、世界に先駆けて回復傾向を示しています。
****中国8・9%成長 V字回復鮮明に 7~9月*****
中国国家統計局は22日、2009年第3四半期(7~9月)の国内総生産(GDP)実質成長率が前年同期比8・9%増だったと発表した。第2四半期(4~6月)の同7・9%を1ポイント上回った。
金融危機への緊急対応策として中国政府が昨年11月に打ち出した総額4兆元(約52兆円)の景気対策が内需を押し上げ、着実に「V字回復」を実現しているとの印象を内外に与えた。中国政府が3月に掲げた通年で「8%前後」との成長目標を達成する可能性も高まった。
中国のGDP成長率は金融危機の影響を受けた08年第3四半期に2けたを割り込み、今年第1四半期(1~3月期)に6・1%に落ち込んだ。欧米向け輸出急減が背景にある。
ただ、中国のGDP統計をめぐっては、地方政府の発表を合算した数字と国家統計局発表に大きな差が生じていることが発覚し、信頼性に疑問符がついている。【10月22日 産経】
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こうした経済成長は膨大な中間層を生みつつあり、今後この中間層が国内消費を牽引すれば、現在の輸出依存型の経済構造も変化することが予想されます。
そのひとつの表れが車への需要拡大でしょう。
****中国:新車販売、米抜き再び世界一 9月133万台超*****
中国自動車工業協会は13日、9月の国内新車販売台数が前年同月比77.9%増の133万1800台だったと発表した。月間販売台数としては過去最高。米国の月間新車販売台数(9月は約74万6000台)を2カ月ぶりに上回り、単月で再び世界一となった。
同協会は、新車販売は「爆発的に増加している」と指摘しており、足取りのおぼつかない米景気と比べ、中国の内需の力強さを示した形だ。(後略)【10月13日 毎日】
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【ひずみも顕在化】
ただ、いわゆる“嫌中”の人だけでなく、すべての人が認めるように、公害・環境問題や汚職の横行など急激な経済成長が生んだひずみも顕在化しています。
最大の問題は、都市と農村、沿海部と内陸部などの経済格差の拡大だと言われています。
少数民族問題も、ある意味、格差問題であり、チベット、ウイグルなどの政治的不安定さを招いています。
また、経済成長とともに急速に進行する都市化は、社会的不安定さを助長しています。
****中国、急速に「都市化」 暴動誘発要因も 研究所予測****
中国の北京国際都市発展研究院はこのほど、中国の都市に人口が集中する「都市化」現象が猛烈な勢いで進むとの調査結果をまとめた。2015年末に都市化率は50%に達するといい、都市人口は農村人口を上回る勢いだ。経済発展に伴う急速な都市化は、深刻な貧富の格差拡大や環境汚染を生むだけでなく、暴動など不測の事態を誘発する要因にもなりかねない。(中略)
中国の都市化は、サービス業などの第3次産業を拡大させ、内需拡大をもたらすとみられている。国家統計局の専門家の予測では、建国100周年の49年には、1人あたりのGDP(国内総生産)は2万5000ドルにも達するという。
ただ、中国社会科学院が6月に公表した都市青書は、「政治的安定」「社会保障の充実」「環境汚染改善」などが都市化の成否を握ると指摘する。周生賢・環境保護相は深刻化する環境汚染の実態を踏まえ、「急速な都市化の中で、経済社会の発展と環境保護との矛盾がますます突出している」と懸念している。
都市への人口集中は、住民のストレスや住居環境の悪化にもつながるといわれる。また、ガン患者が増えるなど、「現代病」に苦しむ人々が増加するとも予想されている。
報告をまとめた北京国際都市発展研究院の連玉明院長は、「(2010年~15年は)中国発展のカギとなる時期だ。経済発展過程で累積した矛盾が極めて爆発しやすい。その矛盾の程度は、これまでのどの時期よりも深刻なものになる可能性がある」と警告している。【10月21日 産経】
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【カネと力の社会】
“暴動”といった社会爆発を憂慮しないといけないのは、ひとつには一党支配体制による国民と政治の断絶がありますが、現在の中国社会が“カネさえあれば”あるいは“権力さえあれば”何をしてもまかりとおるという、“モラル”とか“規範”がないがしろにされがちな社会になっていることによる部分も大きいと思われます。
日本も犯罪には事欠きませんが、中国の社会面の記事には、あまりにも“法を無視した”、あるいは“法の有無に関わらず、人としてやっていいことと悪いことをわきまえない”そんな出来事が溢れています。
*****児童保護者らが書籍販売員を殺害、人身売買グループと勘違い 中国*****
中国・浙江省玉環郡の小学校で26日、パンフレットを届けに来た書籍販売業者5人が、彼らは人身売買グループだとのうわさを信じた児童の保護者らに襲われ、1人が死亡、4人が負傷した。国営新華社通信が、地元警察当局者の話として報じた。
新華社によると、一部の保護者が犯罪者グループが児童をだまして連れ去ろうとしているとのうわさを聞いたことが発端だという。襲撃を受けた5人は警察によって救出され地元の病院に搬送されたが、1人が死亡し、4人は現在も入院中だという。
中国では女性や子どもの人身売買が頻繁に起こっており、国営メディアが8月に報じたところによると、警察当局は4月に人身売買取り締まりを開始して以来、800人以上の人身売買の容疑者を逮捕し、約3400人の女性や子どもを救出したという。【10月27日 AFP】
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“4月に人身売買取り締まりを開始して以来、800人以上の人身売買の容疑者を逮捕し、約3400人の女性や子どもを救出した”という人身売買、あるいは“誘拐・かどわかし”が横行しているのも当然大問題ですが、一般住民が襲い掛かって殺してしまう・・・というのも、法治主義も何もあったものじゃないという感があります。
そこには、中国の治安当局も司法関係者も、カネと力でねじ曲げられている現実が反映しているのかも。
****「黒社会」と結託 中国司法の不正 裁判官・弁護士…わいろ蔓延*****
22日付中国各紙によると、地元権力と結託した「黒社会」(暴力団組織)への捜査が進む重慶市で21日、黒社会幹部ら6人に死刑判決が言い渡された。この事件では、公安幹部や司法関係者を含む600人以上が逮捕され、裁判所幹部や弁護士が裁判を金でねじ曲げる実態が明るみに出た。悪質なその手法は司法にも広がる不正・腐敗の実情を示す“縮図”となっている。
中国紙によると、重慶市検察院の元検察官で、通称“解決屋”といわれた男性弁護士は、250万元(1元約13円)もの報酬を受け取って公安関係者にわいろを送り、ある「重大案件」を「軽犯罪事件」に変更させた。
重慶市の「10大弁護士」に選ばれたこともある女性弁護士は、裁判官の愛人となり、2人は共同で数億元規模の民事案件に不正介入し、弁護士は4000万元を受け取った。
この裁判官はまた、裁判所幹部と共同で土地売買案件に絡んで暴力団と結託、市場価格1億元という土地を約3700万で落札させ、不正に得た5500万元を暴力団と山分けにしていた。
中国紙によると、中国では弁護士が、暴力団幹部に対する刑事裁判で、裁判官に対するわいろ工作を行い、1審で懲役20年だった判決を2審で同5年に変えさせたという事例もある。中国紙はこうした裁判官へのわいろは数百万元に上るケースがあると伝えている。
逮捕された同市元公安局副局長ら公安幹部4人の場合、殺人や強盗、誘拐などの凶悪事件を長年にわたって放置し、6つの暴力団を保護下に置いていたことなども判明している。同市トップの薄煕来書記(党政治局員)は大規模摘発による腐敗の浄化に踏みきり、拘束者はこれまでに1500人を超えたという。【10月23日 産経】
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“「西洋人が400年かけて経験してきた天と地ほどの差のあるふたつの時代を、中国人はたった40年で経験してしまった」。文化大革命期と改革・開放の時代を舞台に生きる人々の姿を描き、中国でベストセラーとなった小説「兄弟」(文芸春秋)。著者の余華氏はあとがきで、文革期をヨーロッパの中世になぞらえ、現代とのギャップをこう表現した。”【10月1日 毎日】
好むと好まざるとにかかわらず、日本はこの巨大な隣人と深く関係していかなくてはなりません。
急速な経済成長が生んだ、あるいは、放置されたままになっている多くの歪が是正されて、普通につきあえる隣人となってくれることを願います。