
(スー・チーさん率いる最大野党「国民民主連盟」(NLD)の地方事務所。
“flickr”より By Dave*M
http://www.flickr.com/photos/anhdave/2132065649/
flickrでミャンマーの写真を検索すると、抗議活動の写真はすべて外国でのものです。ミャンマー国内でのそうした抗議活動は圧殺された状況にあります。
まずは、NLDが新体制において一定の基盤を築き、民意を議会に反映させる道筋を得ることが先決かと思われます。)
【「近く自宅軟禁を解かれるだろう・・・」?】
ミャンマーの民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんについて、自宅軟禁が近く解かれるのでは・・・との情報が報じられています。
****スー・チーさん 近く解放か 軍政筋明かす****
ミャンマーの軍事政権筋は10日、産経新聞に対し、同国の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんが、近く自宅軟禁を解かれるだろうと述べた。具体的な日時は明らかにしなかったが、きわめて近いとの認識を示した。
スー・チーさんをめぐっては、ミャンマーの外務省高官も9日、AP通信に対し、スー・チーさんが解放され、来年中に予定される総選挙にかかわることができるだろう、と述べていた。
オバマ米大統領は15日にシンガポールで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳との会合で、ミャンマー問題について米国が関与政策へと転換したことを説明し、理解と協力を求める考え。ミャンマー軍政としては、こうした動きを見極めながら、スー・チーさんの解放に踏み切る可能性がある。
今月4日、ミャンマーを訪問したキャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は、首都ネピドーで軍政幹部と会談したほか、最大都市ヤンゴンで、スー・チーさんや、スー・チーさんが率いる最大野党、国民民主連盟(NLD)の幹部らとも会談。米国として、ミャンマー軍政と関係改善に向けた話し合いを行う用意があると明言。スー・チーさんをはじめとする政治犯の解放とすべての当事者が参加した総選挙の実施など、民主化への具体的努力を行うよう軍政側に要請していた。【11月11日 産経】
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来年の総選挙前に軍政側がスー・チーさんを解放するというのは、俄かには信じられない話です。
今ところ、この情報に関しては産経記事しかなく、なんとも判断しようがないところですが、実現の方向に向かうことを期待したいものです。
先日の7日、鳩山由紀夫首相はミャンマー軍事政権のテイン・セイン首相と首相官邸で会談し、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんら「すべての関係者」を来年の総選挙に参加させるよう求めています。
これに対し、テイン・セイン首相は「どのような政党でも、政府と考え方の違う人でも参加できるようになる」と応じています。【11月8日】
また、産経記事にもある15日のASEAN首脳とオバマ米大統領の会談については、明らかにされている共同声明案によると、ASEAN首脳はアメリカ政府のミャンマーへの関与政策を歓迎、2010年のミャンマー総選挙は、誰もが参加できる選挙でなければならないと強調しているそうです。【11月11日 共同】
スー・チーさんは9日、自宅で弁護団と面会し、先週ミャンマーを訪問したキャンベル米国務次官補との会談をセットしてくれた軍事政権への謝意を表明したと報じられています。
これまで軍事政権を批判してきたスー・チーさんがこうした謝意を表明するのは異例のこととされています。
なんらかの動きはあるようにも窺えます。
【新憲法枠組みの中で】
もっとも、仮に総選挙前にスー・チーさんの自宅軟禁が解かれたとしても、スー・チーさん自身の議員立候補など政治活動は制約されるのではないかと思われます。
昨年5月に、サイクロン被害のなかで国際支援を拒否しながら、投票が強行された新憲法によれば、「大統領と議員は外国人の影響や恩恵を受けていてはならない」とされており、英国人と結婚したスー・チーさんは排除される仕組みになっています。
新憲法では、そのほか、大統領については「政治、行政、経済、軍事」の見識が必要としており、軍人を前提としています。また、国会は地域代表院と民族代表院の2院制ですが、各4分の1は国軍司令官が指名することになっており、軍政が実質的に維持されるシステムにもなっています。
さらに、憲法改正には全議員の75%以上の同意が必要ということで、枠組み変更も実際上できない仕組みでもあります。
なお、議員の立候補資格については、犯罪歴のないことが条件となっており、過去に実刑判決を受けた者が多い民主化運動の活動家らの立候補を事実上阻止しています。また、議員立候補者や政党が、外国政府や宗教団体からの支援を受けることも禁じられており、国際社会や仏教界からの干渉も排除されています。
もし、軍政側がスー・チーさんを選挙前に解放するとすれば、こうした何重もの制約で守られた新システムにそれだけ自身があり、ここで国際社会へ民主選挙をアピールすることの方が得策と判断した・・・ということでしょう。
スー・チーさん率いる最大野党「国民民主連盟」は、こうした新憲法を認めない姿勢をとってきていますが、現実問題としてこの枠組みでミャンマーの政治が動き始めるなかでは、枠組みの外で批判するよりは、この枠組みの中にいったん入って少しでも影響力を発揮できる道を選んだほうがいいように思えます。
とりあえずは、15日のASEAN首脳とオバマ米大統領の会談を受けて、ミャンマー側がどのように反応するのかが注目されます。