孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

少子化  中国も少子高齢化 欧州の出生率回復

2009-11-26 22:01:03 | 国際情勢

(中国 一人っ子政策のスローガン ただ、中国でも事情は変わってきつつあるようです。
“flickr”より By kattebelletje
http://www.flickr.com/photos/kattebelletje/3349125321/)

【出生率微増も、変わらぬ少子高齢化の構造】
日本の将来を左右する最重要課題が少子高齢化であることは間違いありません。
平成20年度版「少子化社会白書」は、20年10月の人口推計で65歳以上の比率が22・1%に対し、0-14歳が13・5%と世界的にも少ないことを挙げ、「日本は世界で最も少子高齢化が進行している」と指摘しています。
また、生産年齢人口(15-64歳)は、20年の8164万人から67年には4595万人に減少し、高齢化率は40・5%に達するとも。

少子化については、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)でみると、05年の1.26にまで急速に低下したのち、ここ3年ほどは横ばいというか微増しており、08年は1.37となっています。

ただ、この出生率微増も昨年来の景気低迷で今後どう推移するかわかりませんし、出産期(15~49歳)の女性が今後減り続ける見通しの上、晩婚・晩産化も進行しており、出生率が少し上向いても出生数増に結び付かない少子化の基本構造には変わりはない状況です。
厚生労働省も、「出産期の女性人口が今後も減っていくので、出生率が相当上昇しない限り少子化の流れが大きく変わるわけではない」と分析しています。

民主党政権の“子ども手当”がどうなるのかはわかりませんが、“保育所の拡充や教育費の問題、小児科医の不足をはじめとする医療の整備、さらには非正規雇用の改善や女性が子育てしながら働ける環境づくりなど、課題は山積している。”【6月4日 毎日社説】という状況です。

出生率か改善した例としては、08年の2.02と“2人”を上回るところまできたフランスが有名ですが、政府による養育費支援や家族支援手当が定着、また、妊婦支援や育児休暇を提供する労働法が整備されているという制度面の問題のほか、新生児の52%が婚外子となっているように、“家族観”の変化、その社会的受容という面もあります。
ただ、少子高齢化対策としては、出生率上昇だけでは限界があるでしょうから、少子高齢化への社会・産業構造の適応、あるいは、日本では馴染みがない移民問題も直視する必要が出てきます。

【韓国・台湾も同じような少子化】
少子化の状況は、韓国・台湾などでも同様のようです。
韓国の出生率は1.19と、日本より更に低い数字となっています。

****「韓国人増加プロジェクト」入学前倒しや移民奨励を検討*****
小学校の入学年齢の1年前倒しや、韓国への移民奨励による「韓国人増加プロジェクト」――。出生率の低さに悩む韓国政府が25日、思い切った改善策の検討に乗り出した。今後、実際に導入できるかどうか検討する。
大統領直属の未来企画委員会が同日、こうした方針を確認した。2011年から15年にかけた「低出産基本計画」への導入を目指す。

入学前倒し政策は、子育て負担を減らすとともに乳幼児の育児強化につなげる狙い。「増加プロジェクト」は高学歴の外国人らがターゲットで、韓国籍を取りやすいよう、複数国籍の許容範囲を広げることも検討する。育児サービスの充実や3人以上の子どもを持つ家庭への優遇策などを進めるという。
韓国の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)は70年当時で4.53あったが、08年は1.19。日本の1.37より低く、世界的な最低水準にあえいでいる。戦略会議に出席した李明博(イ・ミョンバク)大統領は4人の子持ち。「国の未来を考えた場合、解決すべき国政課題の一つ」と訴えた。【11月25日 朝日】
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台湾では、2021年までに全大学の3分の1以上が閉鎖を余儀なくされる可能性が高いとか。
****台湾の出生率低迷、21年までに大学60校閉鎖も****
台湾の自由時報は13日、台湾の出生率が減少傾向にあることを受けて、2021年までに全大学の3分の1以上が閉鎖を余儀なくされる可能性が高いと伝えた。
教育省によると、現在は毎年約30万人の大学入学資格者がいるが、2021年には19万5000人にまで減少する見込み。その結果、今後12年間で、台湾の全大学164校のうち3分の1以上の大学が学生不足で閉鎖するとみられ、大学教員約1000人が失職する恐れがあるという。(後略)【10月13日 AFP】
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【「未富先老」】
一方、中国は“一人っ子政策”で人口増加を強権的に抑え込んでいるというイメージが強いですが、やはり少子高齢化の深刻な影響が問題になりつつあるようです。

****中国:一人っ子政策の岐路 本格導入30年 進む高齢化--将来の労働力不足懸念****
中国の「一人っ子政策」に異変が起きている。本格導入から30年。世界一の人口を抱える中国の人口抑制に大きな役割を果たしてきたが、最近は出生率低下などにより高齢化が進み、むしろ将来の労働力人口の不足が懸念される事態を招いている。一人っ子政策の見直しを巡り賛否が渦巻く中、国内で最も高齢化が進む上海市は、一人っ子同士の夫婦に第2子の出産を奨励し始めた。(中略)
合計特殊出生率は、一人っ子政策導入直前の78年が2・72だったのに対し、今や1・8程度だ。(中略)
国家人口計画出産委員会は、総人口は2033年ごろに15億人前後と人口増のピークを迎え、その後は下降線を描くと予測する。
こうした傾向は、中国の急速な経済発展を背景に、乳幼児死亡率の低下や生活の向上も加わり、顕著になってきた。

だが、急速な出生率低下は少子高齢化に拍車をかけ、「未富先老」という言葉が現実味を帯び始めた。社会全体が豊かになる前に高齢化問題が深刻さを増してしまう将来への危機感を表す。労働力人口も2016年の9・9億人をピークに減少に転じると予測される。
今年3月の全人代(=国会)では、人民大学学長の紀宝成代表が「生育政策調整への早期着手」を求める第2子出産承認を盛り込んだ提案書を提出した。インターネットで多くの支持を集め、第2子出産の「解禁」を求める意見が相次ぐ。
こうした中、中国社会科学院マルクス主義研究院の程恩富院長は「(政策見直しは)賛成できない。確かに高齢化問題の緩和や人口構成の適正化につながったとしても人口増加を高め、人口増ピークの時期を遅らせる」と述べ、人口増による「負の産物」に警戒感を強めている。(後略)【11月23日 毎日】
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全国に先駆けて高齢化が進む「白髪都市」上海では、02年、一人っ子同士の夫婦に第2子出産を認めるなど条件を緩和。
更に、今年7月にはその延長線上で第2子出産の「奨励」を強調しています。
しかし、“ベビーシッターや医療保険費のほか、競争が激しい上海では早期教育も欠かせない”【同上】という事情で、庶民は第2子出産に足踏みしているそうです。

【「年老いたヨーロッパ」修正】
日本と同様の先進国であるヨーロッパ諸国については、これまた日本同様の“少子高齢化”のイメージがありますが、このイメージも若干修正が必要なようです。
先述のフランスの出生率2.02のほか、イギリスも1.96に上昇しています。

****「欧州高齢化」はウソだった?*****
「新世界」のアメリカから見ればヨーロッパは「旧世界」。そんなヨーロッパでは高齢化が日々進んでいる──と一般的には考えられてきた。しかし米金融大手ゴールドマン・サックスが最近まとめた人口動態に関するリポートは、ベビーブーム世代の老齢化に伴ってヨーロッパはあと20年ぐらいでよぼよぼになるという常識を一蹴している。
このリポートによると、ヨーロッパの多くの先進国では出生率が2001年に底を打ち、それ以後は上向きに転じている。顕著なのはイギリス、フランス、スペインといった国々。原因は移民の増加だけではない。
先進国の女性は出産年齢が上がっているが、従来の計算では(驚いたことに)その点が考慮されていなかった。「(従来の統計手法が適用される)ヨーロッパ諸国では、実際よりも15~20%低く出生率が見積もられていた」とゴールドマン・サックスのエコノミスト、ピーター・べレジンは言う。
この誤差は重大だ。何より、増加する高齢者を賄うための年金によってヨーロッパの社会福祉制度が押しつぶされる、という不吉な予言が正しいとは限らないことになる。
ヨーロッパにミニ・ベビーブームが再来する兆候も見られる。そうなれば子供たちが労働力になる20年後には国民所得も増加する。
「年老いたヨーロッパ」は、これから「アンチエイジング」の時代を迎えるかもしれない。
【9月30日号 Newsweek】
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「アンチエイジング」かどうかはともかく、人口問題だけでなく、EUによる統合進展がもたらす世界経済・政治への影響力など、「年老いたヨーロッパ」というイメージの修正は必要かもしれません。

コメント (1)
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