孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

COP15のコペンハーゲン合意に向けて ブラジル・インド・中国の姿勢変化?

2009-11-18 21:48:32 | 環境

(スモッグに煙る北京 “flickr”より By kevindooley
http://www.flickr.com/photos/pagedooley/386198516/
こうした光景は、昨年9月に北京を旅行した際に私も目にしましたが、翌日にはきれいに澄みきっていたりして、大気汚染によるものなのか、気象現象なのかはよくわかりませんでした。)

【悪化するCO2排出】
温暖化対策が重要な課題となっていますが、現実世界ではむしろCO2排出が増大しています。

****CO2排出:世界で90年比4割増 途上国の石炭利用増え****
化石燃料使用による08年の二酸化炭素(CO2)排出量は世界全体で約320億トンで、京都議定書の基準年(90年)より約4割増となったことが、国立環境研究所などの国際研究チームの調査で分かった。1人当たり排出量も過去最多だった。英科学誌「ネイチャージオサイエンス」電子版に17日掲載された。(中略)
研究チームは「国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が想定した最悪のシナリオに沿った増加スピードだ。経済の回復とともにさらに増加する可能性は高い」と早急な対策を求めている。【11月18日 毎日】
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CO2排出増加の原因は、途上国を中心に排出量の多い石炭の利用が増えていること、また、国際貿易が活発化し、先進国で消費される商品が省エネの進んでいない途上国で生産されていることが指摘されています。
これからみても、途上国・新興国での何らかの削減努力が必要なことは明らかですが、先進国の過去の歴史的責任を重く見て、先進国中心の対応を要求する途上国・新興国と、応分の負担をそれらの国々にも求める先進国との溝が埋まらずにいることは周知のところです。

【コペンハーゲン合意】
12月に開催されるCOP15における法的拘束力がある「ポスト京都議定書」の採択が見送られることが正式に決まりました。

****COP15:ポスト京都採択見送り 閣僚級会合で固まる*****
12月にコペンハーゲンで開かれる国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で、法的拘束力がある「ポスト京都議定書」の採択を見送ることが16日、当地で開幕した閣僚級準備会合で固まった。議長を務めるデンマークのヘデゴー気候変動・エネルギー相と、気候変動枠組み条約のデブア事務局長が会議の冒頭で各国に示した。今後は、政治的合意文書の作成に向けた協議が本格化する。
先進国と新興国・途上国の対立が続くなか、「ポスト京都議定書」を「来月までにまとめるのは不可能」(小沢鋭仁環境相)となったためだ。政治的文書にどこまで踏み込んだ内容を書き込めるかが今後の焦点となる。
デンマークのラスムセン首相は、各国首脳にCOP15への参加を呼びかけており、政治的文書のとりまとめは最終的には首脳レベルによる調整となる可能性もある。【11月17日 毎日】
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この閣僚級準備会合で、議長国デンマークのラスムセン首相は「ポスト京都議定書」の採択は来年以後に先送りするものの、COP15では、先進国の削減目標、途上国の削減方針、途上国支援の枠組みなどを盛り込んだ「コペンハーゲン合意」の採択を目指す考えを提案、各国は包括的な政治合意の作成に向けて努力を続けることで一致しています。

「コペンハーゲン合意」が成立するどうかは、先進国と新興国・途上国の対立が和らぐかどうかにかかっていますが、とりわけ中国、インド、ブラジルという、途上国側の意向を代弁する形で会議をリードする新興国の対応が注目されます。

【ブラジル:数値目標設定】
ブラジルについては、最近、温暖化対策に前向きな姿勢も報じられています。

****ブラジル:温室効果ガス36%削減へ 20年までに*****
ブラジルのルセフ官房長官は13日、温室効果ガスの排出量について、特別な対策を取らなかった場合に比べ、2020年までに少なくとも36%削減するとの政府目標を定め、来月にコペンハーゲンで開かれる気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で提案すると発表した。
同国が具体的な数値目標を設定するのは初めて。長官はあくまで努力目標であり、削減義務を負う数値ではないとしている。
COP15に向けた交渉では、中国やインドなど新興国と先進国が排出削減をめぐり対立しており、新興国の一角のブラジルが中期的な目標を定めたことで、停滞している交渉の進展を促す可能性もありそうだ。
有力ブラジル紙フォリャ・ジ・サンパウロ(電子版)などによると、長官は、特別の対策を取らない場合に予測される20年の排出量の36.1~38.9%を削減するとしている。
ミンク環境相によると、世界最大の熱帯雨林があるアマゾン地方では違法伐採の取り締まり強化などで森林の消失面積が大幅に減少しており、ブラジルの対策の多くがこうした施策に依拠しているという。【11月14日 毎日】
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“「地球の肺」とも呼ばれるアマゾンの森林を抱えるブラジルは、これまで森林伐採の削減量の数値目標設定には難色を示していた。アマゾンでは96年から05年までの年間平均で1万9千平方キロの森林が伐採されていたが、政府は昨年末に初めて、2017年までに伐採面積を72%減らすと発表。今回は削減目標をさらに80%まで増やし、2020年のアマゾンの森林伐採を年間4千平方キロにとどめるとしている。
アマゾンでの森林伐採は、焼き畑などによる農耕地の造成が主な原因とされる。政府は、焼き畑をしなくても農作物を作れる方法の指導や、違法伐採の取り締まりを進めている。” 【11月14日 朝日】

切り札のアマゾン熱帯雨林というカードを切ってきた訳ですが、こうした自国対応を背景に14日には、フランスのサルコジ大統領とブラジルのルラ大統領が、先進国に対し、2050年までに地球温暖化ガスの排出量を1990年代の水準から少なくとも80%削減することなどを求める共同文書を採択しています。
世界の2大温暖化ガス排出国である米中2カ国に、コペンハーゲン会議で大きな譲歩を迫る狙いがあるとも報じられています。

【インド:「排出量削減義務を負うべき」】
一方、インドでは、ラメシュ環境相がシン首相に「インドは排出量削減義務を負うべきだ」と方針の大転換を迫ったとする、首相への書簡がスクープされ大きな騒動になっているとか。

****温室ガス削減交渉“壊し屋”に大国の自覚? インド、牽引役狙う****
来月上旬にコペンハーゲンで開催される国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)に向け、多国間交渉の“壊し屋”といわれるインドが、交渉の“牽引役”として存在感を発揮しようとしている。温室効果ガスの排出量削減を義務づけられることに強く抵抗してきたこれまでの姿勢に変化がみられ、国際社会における“真の大国”としての地位の確保に本腰を入れ始めたようだ。(後略)【11月18日 産経】
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環境相の書簡は、“08年6月、政府は気候変動に関する行動計画を策定し、「インドの排出量が先進国を上回ることはない」と宣言した。これは排出量削減をめぐる論議そのものを遠ざけてきた姿勢を返上したものだ。今年のイタリア・ラクイラでの主要経済国フォーラム(MEF)では、産業革命以来の気温上昇を2度以内に抑えることを盛り込んだ首脳宣言に署名した。排出量削減へ国内法を整備する準備も進めており、積極的に関与する動きが目立つ”【11月18日 産経】という、インドの最近の姿勢変化の流れに沿うものです。
ただ、これがスクープされ騒動となるということは、国内に根強い抵抗勢力が存在することも意味します。

【中国:途上国の削減策具体化で合意】
ブラジル、インドとくれば、次は中国です。
****米中、COP15へ協調 温室ガス削減策の具体化めざす*****
訪中しているオバマ米大統領と胡錦濤・中国国家主席が17日、北京で会談し、共同声明を発表した。12月にコペンハーゲンでの国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)でめざす「政治合意」を実効性のあるものとするため、米国を含む先進国の温室効果ガス削減目標と、中国など新興国も含む途上国の削減策を具体的に盛り込むことで一致した。13年以降の枠組み(ポスト京都議定書)に向け、弾みがつく可能性が出てきた。オバマ氏は会談後「我々はコペンハーゲンでの成功に向け努力することで合意した。我々の目標は部分的な合意や宣言ではなく、(ポスト京都の)すべての論点を網羅した合意だ」と明言した。(後略)【11月18日 朝日】
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米中首脳は、デンマーク・ラスムセン首相の政治合意を目指す方針を支持したそうですが、ただ胡主席は、先進国と新興国の責任の違いも強調したとも。

【コペンハーゲン合意への期待】
ブラジル、インド、中国、それぞれこれまでの先進国を非難するだけの姿勢からの転換が窺われます。
国際政治の場でイニシアチブを取りたい思惑もあるのでしょう。
こうした姿勢がコペンハーゲン合意にストレートに結びつくものではないでしょうが、合意形成に向けた期待も若干感じます。

コメント
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