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(北朝鮮への食糧支援は、本当に困窮している住民の手に渡るのか確証がないことが、国際社会の支援を鈍らせています。写真は07年のもの。どういう経路でかはわかりませんが、韓国からの支援米を入手した平壌市民 “flickr”より By Kernbeisser http://www.flickr.com/photos/kernbeisser/1582350478/ )
【WFPの緊急支援も遅延】
今年2月~3月に行われた国連世界食糧計画(WFP)と食糧農業機関(FAO)の北朝鮮調査の報告書で、北朝鮮の厳しい食糧事情が明らかになり、国際社会に救援が求められています。
報告書は、都市部世帯の60%が、共同農場で働く親せきから食糧支援を受けていることや、北朝鮮住民が食事量を減らして食糧不足に対処している実態を指摘、29万7000トンの穀物と13万7000トンの栄養強化食品などを610万人の北朝鮮弱者住民に提供すべきだと勧めています。【4月20日 聯合ニュースより】
一方、国連世界食糧計画(WFP)の対北朝鮮緊急食糧支援事業は資金不足のため遅延している状況のようです。
****WFPの対北朝鮮食糧支援、資金不足で遅延****
国連世界食糧計画(WFP)の対北朝鮮緊急食糧支援事業が資金不足のため遅延していると、米政府系放送局のラジオ自由アジア(RFA)が5日に報じた。
WFPの報道官はRFAのインタビューに応じ、29日に発表した北朝鮮への食糧配給はまだ始まっておらず、31万トンの食糧が必要だが、現時点では栄養強化菓子を作る穀物8000トンを保有するにとどまっており、まずは資金を確保しなければならない状況だと伝えた。
WFPは先月29日、約31万トンの穀物で食品と栄養強化菓子を作り、食糧難が深刻な両江道と咸鏡南道を中心に住民350万人に向こう1年間提供していく緊急支援事業を施行すると発表していた。
同報道官は、この緊急支援事業の発表は、すぐに食糧を配給するという意味ではなく、国際社会の基金確保に向け、緊急支援事業の内容を公開したものだと説明した。
また、北朝鮮内で食糧分配を監視する要員を59人まで増やすとしたことに関しては、現在の監視要員は12人で、59人に増やす可能性はあるとしながらも、「資金が十分確保できていないなかで、どう増員するのか」と指摘した。【5月5日 聯合ニュース】
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【アメリカ 軍事転用を警戒】
北朝鮮の食糧困窮は今に始まった話ではなく、当然ながら、住民生活を無視して先軍政治を強行してきた金政権の無謀な政治の結果ですが、さりとて困窮している住民を放置することもできません。
こうした事態に、アメリカは5月末にキング北朝鮮人権問題担当特使が食料援助の必要性を調査するチームを率いて訪朝しました。調査チームには対外援助を担当する国務省の国際開発局(USAID)のメンバーも同行しました。
アメリカは2008年、北朝鮮に対する50万トンの食糧支援を決めましたが、食糧分配の監視をめぐって対立。17万トンは渡されたものの、支援は2009年8月から中断しています。【5月22日 聯合ニュースより】
****北朝鮮の幼児4割、栄養失調 米調査団「予想より良好」****
5月末から6月にかけて北朝鮮を視察した米政府の食糧支援調査団が、北朝鮮の幼児の4割が栄養失調状態などとする分析を進めていることがわかった。米政府が韓国側に伝えた。ただ、米政府は食糧事情は予想よりも良好としており、支援を行うかどうかの結論はまだ出していない。
外交関係筋などによれば、調査団が北朝鮮の6郡で5歳以下の幼児約170人を調べたところ、4割が栄養失調だった。北朝鮮は軍などへの支援物資横流しを防ぐ監視態勢を受け入れる考えを米国に伝えたが、米側は依然警戒する考えを変えていないという。
国連機関の呼びかけに応じた各国の食糧支援はロシアの5万トンが最高。米政府は、先週調査を終えた欧州連合(EU)や韓国と支援を巡る事前協議を行う考え。韓国側は米国が支援に踏み切っても、栄養補助食品など軍事転用が難しい物資のごく少量にとどまると予測している。
一方、韓国も米国が食糧支援に踏み切る場合に備え、民間による人道支援を引き続き認める方針だ。玄仁澤(ヒョン・インテク)統一相は15日、国会で「支援物資が住民に正確に渡るよう透明性を強化しながら、人道支援を続ける」と報告した。【6月22日 朝日】
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【EU 「あらゆる配送の段階で監視する」】
4月、アメリカの調査チーム派遣が発表された同時期に、アメリカ財務省は、北朝鮮の武器輸出入業者「グリーン・パイン・アソシエーティッド」社の商取引に協力したとして、北朝鮮の金融機関「バンク・オブ・イーストランド」(別名ドンバン銀行)を新たに金融制裁対象に指定したと発表しています。
食糧支援という“アメ”と、金融制裁という“ムチ”で、北朝鮮をなんとか国際交渉のテーブルに引き出そうというところでしょう。
アメリカに続いてEUも、EU執行委員会傘下の欧州委員会人道支援事務局(ECHO)に所属する職員5人を6月に北朝鮮に派遣して、食糧事情の調査を行っています。
この調査を受けて、EUは北朝鮮に1千万ユーロ(約11億7千万円)分の食糧を緊急支援すると発表しています。ただし、支援食糧が軍などに横流しされないように厳重に監視するとしています。
****EU、北朝鮮に65万人分の食糧支援 横流し監視****
欧州連合(EU)の欧州委員会は4日、北朝鮮に1千万ユーロ(約11億7千万円)分の食糧を緊急支援すると発表した。主に北部と東部の65万人が対象で、食糧が横流しされないよう厳重に監視することで北朝鮮側と合意したという。
欧州委は6月に専門家を北朝鮮に派遣し、病院や配給所などを視察。食糧事情が急速に悪化していることを確認した。4月から6月にかけて1人当たりの配給量が約6割も減り、1日に必要な栄養価の5分の1しか得られていないという。
欧州委は国連の世界食糧計画(WFP)の協力を得て、特に栄養失調で入院中の5歳未満の子どもや、妊婦、乳幼児を抱える母親、老人らに行き渡るようにする。ゲオルギエバ欧州委員(人道援助担当)は「人々が飢えで死ぬことのないよう、あらゆる配送の段階で監視する」とした。(ブリュッセル=野島淳) 【7月4日 朝日】
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“(EU執行委のシャーロック)報道官は、北朝鮮がEU側との約束を破って食糧を軍に転用した場合、すぐに支援を中断することを強調した。何度かに分けて配分することで軍転用に対するチェックを行っていくという。
また、支援食糧が北朝鮮の港に到着した時点からEU執行委と国連世界食糧計画(WFP)の関係者が、軍に転用されないかを徹底的に監視するという。”【7月5日 聯合ニュース】
【軍兵士の食糧事情も困窮】
北朝鮮では、一般住民だけでなく、「春先になると50%が栄養失調になるだろう」といった、軍兵士の食糧事情悪化も報じられています。
****食糧確保できず、兵士の士気低下…北朝鮮の内部映像公開****
ジャーナリスト集団「アジアプレス・インターナショナル」が、北朝鮮国内でひそかに撮影したという映像を公開した。厳しい食糧事情を明かす兵士の証言も収められ、映像を分析したアジアプレスの石丸次郎氏は「『先軍政治』を掲げながらも軍に配分する食糧を十分確保できず、兵士の士気が低下していることがうかがえる」と指摘した。
映像は北朝鮮在住の取材協力者が今年1~4月に撮影したもので、アジアプレスが23日に記者会見を開いた。
北西部の平安北道で接触した20代の男性兵士は「配給はあるが、情けなくて何を食べているか言えない。春先になると50%が栄養失調になるだろう」と証言。この兵士は上官のために山菜採りをしていたという。
平安北道で行商人の女性が市場管理員に「軍糧米」の供出を強要される場面を隠し撮りした映像や、平壌郊外の市場でコメや穀物などを軍に寄付した住民の名前が「援軍美風の先駆者」として掲示されている映像もあった。【6月28日 朝日】
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【ロシア 小麦5万トンを支援】
すでにロシアは、5月18日、人道支援として小麦5万トンを近く北朝鮮に送る方針を発表しています。
ロシアは、フラトコフ対外情報局長官と金正日総書記との会談で、2国間の経済協力のほか、韓国も加えた天然ガスのパイプラインや鉄道、送電施設の建設も協議したとも報じられています。【5月19日 読売より】
【中国 中国式の社会主義的市場経済モデルを推進】
北朝鮮の後ろ盾である中国に関しては、5月、金正日総書記が訪中していますが、ここ1年間で3回目の方中であり、「北朝鮮側にかなり緊急な事情があるかもしれない」とも憶測されています。【5月22日 産経より】
中朝間では、北朝鮮が海外資本に開放している特区「羅先経済貿易地帯」を有する羅先特別市と中朝国境を流れる鴨緑江の中洲の島・黄金坪を市場経済原理を適用する拠点産業ベルトにする案を本格的に進めていると伝えられています。黄金坪では、中国主導によるインフラ整備が本格化しているとも。
****金総書記の訪中で中朝密着誇示、中国依存度深まる****
中国を訪問している北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記は25日、胡錦濤国家主席と首脳会談し、中国首脳部が大挙出席する夕食会にも出席した。首脳会談では食糧支援と経済協力の活性化、中国企業の北朝鮮投資拡大などについて、踏み込んで協議したと伝えられた。(中略)
中朝は今回の金総書記の訪中と首脳会談を通じ、堅固な友好関係が今後も持続することをアピールした。そうしたなかで外交専門家らは、友好な中朝関係の裏側に、北朝鮮の中国依存度がさらに深まるという現象が定着したと指摘する。
北朝鮮は核実験などで国連から制裁を受け、国際社会から孤立している。外交的にも相当部分で中国に頼っているのが実情だ。食糧援助を含む各種援助も中国から受けている。また、米国主導の経済制裁が続くうえ、韓国とは韓国哨戒艦撃沈、延坪島砲撃事件の後、開城工業団地を除くすべての経済交流が途絶えた。北朝鮮が頼ることができるのは中国しかなく、中朝の経済協力強化は、経済的な面でも北朝鮮の中国依存度の深刻化につながっているとの指摘も多い。
中国は、改革開放を通じ世界第2位の経済大国に成長したということに、大変な自負がある。世界金融危機の発生後は米国の経済システムを非難し、中国式の社会主義的市場経済モデルが、より経済発展に適格だとの主張を掲げている。
中国はこうしたプライドを基に、北朝鮮との経済協力を推し進め、北朝鮮にさまざまな助言を行う可能性が高い。北朝鮮がその助言通りに開放を進めれば、貿易、投資部門で両国間の経済的なつながりはさらに拡大する可能性がある。
ただ、中国が膨大な資本、市場、技術を有するのに対し、北朝鮮は人員、鉱山、農水産物などを除いては比較優位を持つものがさほど多くない。国連の制裁などで資本調達も難しい。中朝の経済協力が活性化されれば、中国企業の投資資本に対する依存度が高まるものと予想される。【5月26日 聯合ニュース】
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中国は北朝鮮にこれまでも中国式の社会主義的市場経済モデルを実行するように働きかけてきたと言われてもいますが、北朝鮮側に本格的に改革・開放経済を受け入れる意思があるのかどうかはわかりません。