孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

温暖化  ラクダと石炭、そして有機被膜太陽電池

2011-07-07 21:32:32 | 世相

(バングラデシュの水上学校のボートにも太陽光パネルが。バングラデシュでは、人口約1億5000万人のうち6割が電気のない生活をしており、大きなインフラを必要としない太陽光パネルの普及を図っています。その結果、今年6月には太陽光パネルを導入した世帯数が100万世帯に達したそうで、2014年までに250万世帯への導入を目指しています。 “flickr”より By The Earth Awards http://www.flickr.com/photos/theearthawards/4812831798/

オーストラリアの野生ラクダ射殺案に、ラクダ科研究開発国際協会が怒る
オーストラリアで野生化しているラクダが温室効果ガスの排出源になっているとして、二酸化炭素(CO2)削減の取り組みの一環でラクダの殺処分が検討されている・・・・というニュースは、6月11日ブログ「オーストラリア  牛とラクダと難民に見る“人道的”ということ」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110611)で紹介したところですが、ラクダ専門家が登録するラクダ科研究開発国際協会がこの話に怒っているとか。

****CO2削減のラクダ処分案に抗議、オーストラリア*****
オーストラリアで野生化しているラクダが温室効果ガスの排出源になっているとして、二酸化炭素(CO2)削減の取り組みの一環でラクダの殺処分が検討されていることに対し、ラクダ研究者の協会が4日、正式に抗議声明を発表した。
300人のラクダ専門家が登録するラクダ科研究開発国際協会(ISOCARD)は、ラクダたちは人間が生んだ問題の犠牲になっていると怒りをあらわにしている。

オーストラリアの野生ラクダは、19世紀に入植者が連れてきたラクダが野生化した。現在、アウトバックと呼ばれる辺境地帯を徘徊する数は120万頭に上るが、草原を食べ尽くして植生が失われたり、排出される腸内ガスのせいで、1頭あたり年間1トンのメタンを算出している計算になる。

ラクダの殺処分案は、豪政府のオーストラリア気候変動・エネルギー効率化省が公開した諮問書から浮上したもので、アデレードの広告会社ノースウエスト・カーボンが、ヘリコプターからラクダを射殺するか、群れをまとめて食肉処理場へ送り、食用やペットフードに加工する処分案を提案した。

しかし、アラブ首長国連邦に本部があるISOCARDは、この計算はばかげていると一蹴(いっしゅう)し、「ラクダの代謝効率はウシよりもよほどよい。ウシに比べて20%少ない餌で、20%多いミルクを算出する。またラクダの腸内の細菌叢(そう)は、ウシやヒツジよりも、ブタのような単胃動物に近い。したがってラクダによるメタン排出量の計算方法には疑問がある」と反論した。そして、世界にいる計2800万頭のラクダは植物を食べる生き物全体の1%にも満たないとも主張している。
協会では、野生のラクダは食肉やミルク、皮革などが利用できるほか、観光業にも役立っており、乾燥地帯におけるかけがえのない資源とみなすべきだと述べている。

火力発電と鉱山資源の輸出に依存するオーストラリアは、国民1人当たりの温室効果ガス排出量が世界でも最も多い国の部類に入る。政府は2012年の半ばから、温室効果ガス排出量の多い企業などへの課税を計画している。【7月5日 AFP】
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クジラやインドネシアに輸出される牛など動物愛護に熱心なオーストラリアですので、政府としては“ヘリコプターからラクダを射殺”などといった案を検討している訳ではないでしょうが・・・。
植生破壊と言う点では、ラクダより世界各地の原生林を破壊している人間のほうが責任が大きいのは間違いありませんから、やはり人間の範囲で問題解決をはかるべきでしょう。
それにしても、ラクダ科研究開発国際協会なんてあって、やはり本部はアラブにあるというのがちょっと面白い感じです。

ところで、メタン排出量云々という話で言えば、そもそも生物が呼気として吐き出しているCO2はどんなものでしょうか?地球上の人類が爆発的に増加している現在、その吐き出すCO2量の増加もかなりのものになるのではないでしょうか?こればっかりは削減する訳にはいきませんが。

中国で石炭消費が増加した結果、温暖化進行が止まる?】
温室効果ガスの話は、複雑な変動を伴う自然現象の長期間にわたる問題ですので、なかなか本当のところがわかりにくいという側面があり、温暖化が人間活動によるCO2増加によってもたらされているという定説には懐疑論もあります。

温暖化については、中国の石炭使用がいつも“悪者”としてやり玉にあがりますが、逆に中国の石炭使用で温暖化が阻止されているとの説もあるようです。

****中国が燃やす石炭で温暖化一時止まる、米研究****
1998年から10年間、地球温暖化の進行が止まったのは、中国で石炭消費が増加した結果、大気中の硫酸塩エアロゾルが増え冷却効果をもたらしたためだとする米国とフィンランドの科学者らによる研究結果が、米科学アカデミー紀要(PNAS)にこのほど発表された。
地球温暖化説に対する懐疑論者は、1998~2008年には一定の気温上昇が見られなかったことを根拠に、人間の活動で排出される温室効果ガスが地球温暖化の原因との見方を否定している。

今回、研究を主導した米ボストン大学のロバート・カウフマン教授も、懐疑派の指摘がきっかけで研究を思い立ったとAFPの取材に語った。
カウフマン教授らの研究チームが、気温上昇を防いだ要因と結論付けたのは、石炭だった。
石炭の燃焼量は、急激な経済成長を続ける中国を中心に、過去10年間で急増した。石炭を燃やすと硫黄が排出されるが、カウフマン教授らはこの硫黄の粒子に妨げられて太陽光が地表まで届かず、温暖化を防いだと見ている。

カウフマン教授によると、こうした現象には前例がある。第二次世界大戦後の経済成長期に欧米や日本では温室効果ガスが急増したが、硫黄の排出量も急速に増え、その結果、温室効果ガスの影響が相殺されたという。
研究は、地球の気温が上昇し始めたのは、先進国が硫黄排出量を削減する取り組みを始めた1970年初頭ごろからだと指摘している。

世界の石炭消費量は、03~07年の5年間で26%増加した。うち75%は中国によるものだ。中国は今も世界最大の温室効果ガス排出国であり、排出量も増え続けているが、一方で石炭工場に汚染物質除去装置を設置するなど、ようやく大気汚染の防止対策を始めた。そして、こうした措置を講じたことによって09年から再び、地球の気温が上昇し始めたという。

ただ、大気中の硫黄は一時的な冷却材の役割を果たす反面、酸性雨や呼吸器系の疾患の原因となるなど、数々の有害な影響をもたらす。
このため、地球温暖化を阻止する手段を硫黄に求めることは「毒をもって毒を制すようなものだ」と、カウフマン教授は述べた。「硫黄による温暖化阻止説にも一理あるが、これに満足する人間は少ないだろう。中国のように大気汚染の中で生活することを意味するのだから」【7月6日 AFP】
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石炭の使用で温暖化が阻止され、汚染物質除去装置の設置で温暖化が進行する・・・本当でしょうか?
否定する根拠もありませんので、とりあえずは「フーン・・・」ということで。

【「空白期間」が生じる恐れ
温暖化防止の取り組みは、相変わらず進展がないようです。
****地球温暖化:枠組みづくり ベルリンで閣僚級国際会議*****
京都議定書に定めのない2013年以降の地球温暖化対策の国際枠組みづくりに関する閣僚級の国際会合が3日、ベルリンで2日間の日程で始まった。今年末に南アフリカ・ダーバンで開催される気候変動枠組み条約の第17回締約国会議(COP17)に向け、難航する国際交渉を促進させるのが狙い。日本からは樋高剛環境政務官が出席した。
会合では、地元ドイツのレトゲン環境相と南アのヌコアナマシャバネ外相が共同議長を務め、欧米、アジアなど約35カ国の代表が参加。レトゲン環境相は「ダーバン会議に向け、国際的な課題に対応する準備を進めたい」と語り、ヌコアナマシャバネ外相も各国に「妥協」を促した。

昨年11~12月にメキシコのカンクンで開催されたCOP16は、発展途上国への資金援助や新興国を含む排出削減の検証の仕組みなどの要素を盛り込んだ「カンクン合意」を採択。これに先立つ同年5月、ドイツ・ボン郊外で開催した閣僚級会合が「カンクン合意に道筋をつけた」とドイツ側は位置づけている。
ただカンクン合意後の国際交渉では、途上国への資金援助などで先進国と途上国が対立。COP17での決着は困難との予想が多く、13年以降の温室効果ガスの削減義務がない「空白期間」が生じる恐れが強まっている。【7月3日 毎日】
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世界各国は“温暖化防止”どころではない・・・というのが実情でしょう。
欧州は、ギリシャなどの信用不安に揺さぶられていますし、アメリカは大統領選に突入、日本は震災復興で原発のかわりに火力発電所を再開、中東・北アフリカは民主化問題で蜂の巣をつついた有様・・・といった状況です。

2012年には有機薄膜太陽電池を実用化
化石燃料を減らし、原発も避け・・・・となると自然エネルギー利用となりますが、全くのイメージですが、“風まかせ”の風力より、毎日顔を出すお日様を利用する太陽光のほうがあてになるような感じがします。
風車のような大規模設備も必要なく、どこでも簡便に利用できるのも魅力です。
特に、最近のうだるような暑い日には、この日差しをなんとか利用できないものかと考えてしまいます。

原発再開でもめる日本ですが、菅首相は「太陽光発電のコストが6分の1になれば、原子力とほぼ同等になる」と、その普及に意欲を見せているとか。
*****太陽光コスト、6分の1なら原子力と同等…首相*****
菅首相は7日午前の参院予算委員会で、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた再生可能エネルギー(自然エネルギー)活用の柱とする太陽光発電について、「(新型のソーラーパネルの開発を)是非とも進めることで、発電コストの6分の1への引き下げを実現したい」と述べ、普及に重ねて意欲を示した。
首相は、「太陽光発電のコストが6分の1になれば、原子力とほぼ同等になるとの自分なりの見通しを持っている」と語った。
首相は5月の訪欧時、太陽光発電のコストを2020年に現在の3分の1、30年には6分の1に引き下げるとの目標を示している。

一方、海江田経済産業相は、運転停止中の原発の再稼働の是非を判断するためのストレステスト(耐性検査)について、「さらなる安心を近隣自治体や県などに持ってもらうためのものだ」と述べ、理解を求めた。【7月7日 読売】
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コストは、技術革新と普及による大量生産で、想像以上に急速に変化するものなのではないでしょうか。
太陽光発電に関するいろんなニュースで、どれが実用面で重要なニュースかは判断できませんが、最近目にした有機被膜電池の話題。

****どこでも太陽電池 - 三菱化学/中ノ森 清訓****
インクのように塗り加熱することで太陽電池とすることができる半導体材料につき、三菱化学が2012年の実用化の目処をつけた。色々な用途が考えられそうで、夢が膨らむ材料だ。

三菱化学が次世代太陽電池として実用化が待たれている有機薄膜太陽電池において、世界最高値となる9.2%のエネルギー変換効率を達成した。
同社によると、これまでの有機薄膜太陽電池の最高値だった8%台で、それを一気に1%も向上させることができたことになる。同社は、エネルギー変換効率を10%にできれば実用化に踏み切れると考えており、今回の成功により2012年にはこの有機薄膜太陽電池を実用化できる見通しという。

この有機系の太陽電池は、現在、普及している無機系の結晶シリコン太陽電池に比べ低価格、安定調達が見込まれている。結晶シリコン太陽電池は原料に高純度シリコンを使っており、日本の場合、その調達を中国からの輸入に全面的に頼っている。一方で、三菱化学が研究開発を進めている有機薄膜太陽電池は、入手しやすい原料を使っており、従来の結晶シリコン太陽電池に比べて、生産コストや原料調達リスクを低く抑えられる。

同社が開発を進めているもう一つの特徴は、印刷技術が利用可能な製造方法という点だ。有機薄膜太陽電池の製造方法としては、大掛かりな製造装置が必要な真空蒸着法が主流とされていたが、同社の製法では、フィルム基板などに印刷して簡単に製造できる。製造装置も比較的小さなもので済み、低コストでの大量生産が可能になる。真空蒸着法では難しかった大面積化も容易だという。

この製法を可能にしたのが、同社が開発した有機半導体材料だ。この材料は結晶化前の前駆体の段階では有機溶媒に溶かしてインク状にすることができる。それをフィルム基板に塗布して加熱すると、この半導体材料が結晶化し、太陽光電池に適した薄膜の半導体特性を持つ。

こうしてできた同社の有機薄膜太陽電池は、薄く、軽く、曲げられるという特徴を持つため、応用範囲が広く、様々なデザインに加工できる。たとえば、同社では「屋根だけでなく、自動車のボディ、家の壁面や部屋の壁紙、カーテンで発電する」といった用途を考えている。

同社によると、衣服でも太陽光発電ができるようになるとのことで、正しく、日のあたる所であれば何でもどこでも太陽電池とすることができるという位の勢いだ。製品に塗るだけなので製品重量も嵩まない。よって、性能だけでなく、物流面でも環境経営を材料として非常に面白いものである。

材料メーカが非常に魅力的な素材を提案してきた。我われが次に問われるのは、こうしたユニークな材料を前にして、どの様に魅力的な製品、サービス、事業を作れるかだ。「どこでも太陽電池」とでも言うべきこの素材なら、色々なことができる気がする。(参考:2011年6月20日 日経ビジネスONLINE 山田久美「日本キラピカ大作戦」)【7月4日 INSIGHT NOW!】
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かつて液晶テレビは「1インチ1万円」と言われていましたが、あっという間に価格が下がりました。
太陽電池も今後の技術革新と大量生産で、一気に低価格になるのでは・・・と、なぜかきょうは妙に楽観的です。
もちろん、そのためには適切な政策誘導が必要ですが、そっちはいささか心もとない感があります。

コメント
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