孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

欧州信用不安  ギリシャ危機は回避したものの、表面化してきた“イタリア問題”

2011-07-13 21:29:53 | 欧州情勢

(6月28日アテネ デモ隊の投石・火炎瓶に警察は催涙ガスで応戦 ギリシャ旅行にはガスマスクが必需品のようです。 “flickr”より By makisraf http://www.flickr.com/photos/efthymios-gourgouris/5888861951/in/photostream/

終わりにはほど遠いギリシャ危機
深刻な財政危機に陥っているギリシャは、先月29日、政府がまとめた追加緊縮策の基本方針を国会が賛成多数で可決(賛成155、反対138、棄権・無効7)。翌30日は関連法案も可決してEUとIMFからの第5弾融資の条件をクリアし、かろうじて債務不履行(デフォルト)の危機を脱したことは記憶に新しいところです。融資が受けられなければ、7月中旬に迎える国債償還ができなくなるところでした。

ギリシャは昨年5月、緊縮策と引き換えにEUとIMFから総額1100億ユーロの協調融資を受けることで合意しました。しかし財政赤字削減が計画通り進まず、EUなどがこのうちの第5弾融資の条件として、追加緊縮策を要求。これを受けてギリシャ政府は、さらなる増税や歳出削減により2015年までに約280億ユーロの赤字削減を目指す緊縮策を決定したものです。

“国民は追加緊縮策が景気後退や失業率の増加に拍車を掛けるとして反発し、野党も反対を表明。28、29の両日には同国の官民2大労組連合組織が抗議の48時間ゼネストを実施した。アテネの国会議事堂前では29日、警備に当たる警官隊と一部の若者たちとの衝突が起こり、騒然とした雰囲気となった。”【6月29日 毎日】という状況の中での採決でしたが、これによって当面の返済のめどは付いたものの、全借金を返せる見込みはほとんどなく、危機を先延ばししただけに過ぎないとの見方があります。

更に、EUとIMFが支援条件として要求した緊縮策は、ギリシャの財政状況をかえって悪化させるという見方も根強くあります。現にこの1年の歳出削減はギリシャの不況を悪化させ、ギリシャ政府が借金返済のための金策に奔走しているときに、税収は逆に減ってしまったと言われています。【7月13日号 Newsweek日本版より】
この先“秩序だったデフォルト”とか、ギリシャのユーロ圏離脱といった根本的対応が求められる可能性も大きいのが現状です。

【「欧州に関する評価となると、市場には偏向があるようだ」】
ギリシャの後に控えているのはポルトガル、スペインですが、アメリカ格付け会社がポルトガル国債を「投資不適格」水準に格下げしたことが、欧州各国の怒りを買っています。

****ムーディーズのポルトガル国債格下げに欧州が怒り****
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスがポルトガル国債を「投資不適格」水準に格下げしたことをうけ、欧州各国は7日、米国の格付け機関に対する怒りをあらわにしている。
欧州が特に憤慨しているのは、格下げのタイミングだ。ポルトガルは欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)から780億ユーロ(約9兆400億円)の緊急支援を受ける条件として4月に合意した緊縮財政政策に、まさに着手しようとしていたところだった。

EU欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長は、「欧州に関する評価となると、市場には偏向があるようだ」と述べ、米国の格付け機関は欧州に不利な格付けを行っていると示唆。さらに、米国の格付け機関に対抗しうる欧州の格付け機関の台頭が必要だと強調した。
ポルトガル国債の格下げをうけて、ユーロは下落し、ポルトガルの債務は膨らんだ。これにより、スペインやイタリアも影響を受けた。【7月7日 AFP】
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欧州財政不安の焦点は11日から、ユーロ圏3番目の経済大国イタリアへ
信用不安は更に“大物”イタリアにも及んでいます。このところイタリア国債は市場で売り込まれており、週明け11日の取引では5.7%まで上昇、12日には一時的には6%を超えるなど、11年ぶりの水準にまで上昇しています。EU首脳もこのイタリア問題への早急な対応を求められています。

****EU財務相会合:金融安定化基金充実で一致****
欧州連合(EU)のユーロ圏諸国(17カ国)は11日、ブリュッセルで定例財務相会合を開き、財政危機が再燃しているギリシャをはじめ欧州信用不安への対応を協議した。会合後に会見したユンケル議長(ルクセンブルク首相)は欧州金融安定化基金(EFSF)の機能充実を図ることで一致したとする声明を発表した。財政危機が経済規模が大きいイタリアなどに波及するとの懸念が広がることに対処する狙いもある。

ユンケル議長は会見で、昨年5月に国際通貨基金(IMF)とともに設立した、総額7500億ユーロ(約84兆円)のEFSFの機能強化を図ると表明した。具体的には、ギリシャやポルトガルなど、EFSFから支援を受けている国の返済期間延長や利子の低減など、より柔軟な対応が取れるよう作業部会を設置して早急に詰める。

一方、これに先立ちファンロンパウEU大統領、バローゾ欧州委員長、ユンケル議長らEU首脳はイタリア問題を巡り緊急協議した。イタリアの国債は先週から市場で売られ始めた。指標となる10年物国債の利回りが5%台を突破、週明け11日の取引では5.7%まで上昇するなど11年ぶりの水準にまで上昇している。

背景には、ギリシャへの追加支援策を巡り、国債を保有する民間金融機関にも応分の負担を求める調整が難航していることがある。危機収束が見通せない中、米格付け会社大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスが5日、ポルトガル国債の格付けを投機級格付けの「Ba2」に4段階引き下げるなど不安拡大が続いている。【7月12日 毎日】
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イタリアの数字の悪さは今に始まった話ではありませんが、「景気回復が遅いことや、国内政治の不安定さなどが注目されるようになった」ことで、市場のターゲットにされているようです。

****揺らぐ欧州、難局再び 各国で財政不安・ユーロ急落****
■もたつくギリシャ支援 イタリア・スペインにも飛び火
12日、欧州連合(EU)の財務相らによる会議が続くブリュッセル。イタリアのトレモンティ経済・財務相は、会議を中座して帰国の途についた。AFP通信によると「財政再建計画を仕上げるためだ」と記者団に語った。

欧州財政不安の焦点は11日から、ユーロ圏3番目の経済大国イタリアに移り、国内の国債市場も株式市場も下落した。12日も、イタリアの10年物国債は一時、年6%を上回った。スペインの国債も売られている。

イタリアの2010年の国内総生産(GDP)比の政府債務残高は127%と、ユーロ圏ではギリシャについで悪い。それでもこれまで市場の標的にならなかったのは、自動車やファッションなどの産業基盤に加え、毎年の財政赤字を抑えてきたからだ。国債の約半分が国内で消化されていることも防波堤になっていたといわれる。

しかし、ここにきて「景気回復が遅いことや、国内政治の不安定さなどが注目されるようになった」(吉田健一郎みずほ総合研究所ロンドン事務所長)。少女買春疑惑や反原発の逆風を受けるベルルスコーニ首相が国民の人気取りのために財政抑制をゆるめるのではとの見方が出ている。

欧州不安は、ギリシャなどの財政危機に陥った国々が借金を減らすために財政支出を削り、景気悪化を招く恐れがあることだけが背景にあるのではない。ギリシャなどがお金を借りるために発行した国債を欧米の銀行が大量に持っているため、お金を返してもらえなくなると銀行が大損を抱え、金融危機につながるという懸念もはらんでいる。

11日午後のユーロ圏17カ国による財務相会合でも、火元であるギリシャへの追加支援の具体策は決まらなかった。
各財務相は、大枠では追加支援で合意している。しかし、ギリシャ国債を保有する銀行などの投資家に一定の損失をかぶってもらう案の詳細がまとまらない。投資家の負担は公的支援の前提としてドイツなどが強く求めていたものだ。官民の負担割合など、追加支援の具体策がまとまるのは9月ごろになるとの見方が広がっている。

11日夜、財務相会合の後に発表した声明と記者会見では、結論の代わりに検討メニューを並べた。EU各国によるギリシャへの融資の返済期限を延ばしたり、金利を引き下げたり、運用条件を柔軟にする手法。融資総枠4400億ユーロに上る欧州の金融安定化のための基金(EFSF)で、直接ギリシャなどの国債を買い上げる可能性も示唆した。
ただ、メニューをどこまで実施するか、いくら支援するつもりなのかは依然、不透明で、市場をなだめるには至っていない。ユーロ圏首脳は近く、緊急サミットを開く方向を模索し始めた。【7月13日 朝日】
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この重大局面にあたって、ベルルスコーニ首相が表に出てこないことへの批判があります。

****今度はイタリアを襲った国家破綻の危機****
国債利回りが急上昇し、緊縮策を主張して対立する財務相が脚光を浴びるなか、姿を消したベルルスコーニの真意は(アレッサンドロ・スペチアーレ)

イタリアのシルビオ・ベルルスコーニ首相はいったい今、どこにいるのだろう。7月11日、イタリア国債の保証コストが過去最高に上昇。ドイツ連邦債とイタリア国債の利回り格差が急拡大し、イタリアがヨーロッパにおける次の財政危機国家になる恐れが広がる中、この国の首相はいつになく静かに沈黙を決め込み、イタリア国民を戸惑わせている。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相も戸惑ったに違いない。事実、メルケルは11日の午後にベルルスコーニに電話し、金融市場からの信頼が厚いイタリアのジュリオ・トレモンティ経済・財務相が推進している緊縮財政法案を承認するよう説得しようとしたと、独政府は語っている。

指図とも受け取れるメルケルのこの行動は、イタリアの世論を刺激した。政治との結びつきが強いこの国のメディアはこれまで、ベルルスコーニや政治家たちのスキャンダルを取り上げることばかりに熱を上げ、イタリアの財務状況についてほとんど報じてこなかったのに、今度ばかりは大騒ぎだ。
だがメルケルからの呼びかけにもかかわらず、ベルルスコーニは姿を現そうとしない。「イタリアはギリシャ型の危機を回避する」と宣言して世界の投資家たちを安心させようとするつもりはないらしい。

ベルルスコーニは、イタリアサッカーのセリエAで自らの保有するチーム、ACミランの初トレーニングを視察するはずだったが、予定をキャンセル。政府報道官によれば、「経済状況」に対処するために12日にはローマに戻ったという。

政争で見えない統一見解
イタリアの経済指標に注目するにつけ、投資家たちは不安を募らせている。債務残高はGDPの120%近くにまで膨らみ、EU内ではギリシャに次いで多い。イタリアの債務は合計1兆8000億ユーロにも上り、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、アイルランドの債務を足したよりも多い。
その上、イタリアの経済成長率はここ数カ月ほぼ横ばいで、他のヨーロッパの国々に遅れをとっている。失業率は上昇し、輸出主導の国にとっては致命的なことに、金融危機以前のピーク時に比べて輸出は13%減で推移している。

これらはすべて目新しいことではない。だがユーロ圏を債務危機が襲い、ギリシャやポルトガル、アイルランドがデフォルト(債務不履行)に陥る危険性が高まってEUやIMF(国際通貨基金)から救済を受けるという事態に迫られる中、イタリアはこれまでどうにかして危機を回避してきた。

ローマのルイス大学のマッシモ・スピスニ教授によれば、イタリアにとって救いだったのは金融市場での「評判が良かった」こと。「イタリアの問題点はよく知られているものの、これまでのところ、約束したことは守ってこられた」とスピスニは言う。
だがそんな評判が様変わりしてしまう可能性もある。「ひとたび評判が傷つけば、名誉を回復するにはとても長い時間がかかる」とスピスニは指摘する。

だからこそ今、政府が沈黙を続け、政治的対立が続いていることが、スピスニの不安をかき立てている。「イタリアは明確な統一見解を発信していない。今回私たちにとって必要なのは、アメリカがまさに今そうしているように、市場の一歩先を行き、市場に明確で力強いメッセージを送ることだ」

イタリアにとっては14日が1つの正念場になるだろうと、スピスニは言う。この日、5年ものと10年ものの長期国債の入札が行われる。「投資家は1年もののイタリア国債には手を出すだろうが、長期国債となるとどうだろうか」とスピスニは言う。(後略)【7月13日 Newsweek】
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経済大国イタリアが救済へ追い込まれるような事態になると、その規模もギリシャの比ではありませんので、救済が可能かどうかも問題になります。もちろん救済できない、デフォルトなどという話になると世界経済へのその影響は甚大です。
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