孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド  男児尊重による人工中絶、性転換手術  人口抑制策あれこれ

2011-07-18 20:19:12 | 南アジア(インド)

(“flickr”より By hbimedialibrary http://www.flickr.com/photos/hbimedialibrary/4266559588/

男児1000人に対して女児914人
家の跡取りとして、労働力として、あるいは女児は結婚などに費用がかかるため・・・などの理由で、女児より男児が望まれる風潮は中国やインドなど各地であります。
こうした風潮は、女児とわかった段階で中絶する、生まれた女児を手放すといったことにもつながって、結果、男女比率が著しくゆがんだものになっています。

そうした国のひとつ、インドにおける状況ですが、安価な持ち運び式の超音波装置が普及したことで、都市部だけでなく農村部でも“産み分け”が進行しているとのことです。

****インド地方部で女児が急減、男女比さらに悪化****
インドで15日に発表された人口調査によると、地方部の子どもにおける女児の比率が急減した。性別を選択して出産するための技術が、インドの最も辺境な地域にまで達したことが示唆される。

最新の調査で、インド農村世帯における6歳以下の男女比は、男児1000人に対して女児が919人だった。2001年には男児1000人に対して女児が934人だったことから、大幅な女児の減少となった。都市部で入手できる安価な持ち運び式の超音波装置が、農村部でも使われ、性別選択による違法な中絶で男児が産み分けられているとみられる。

「以前は農村部住民はソノグラム(超音波検査)を受けるのに都市部まで行く必要があった」と、非営利団体「インド人口財団」のPoonam Muttreja事務局長は語る。「今では、ソノグラム提供者が農村部に訪問して、男児を出産したい人の求めに応じている」

一方、都市部における6歳以下の男女比は、男児1000人に対して女児902人と、農村部よりもさらに開きがある。だが都市部は2001年時点ですでに同906人だった。農村部のほうが女児の比率が急落している。
インド全国における男女比は、男児1000人に対して女児914人と、1947年の同国独立以降最低となっている。世界の男女比は、男児1000人に対して女児は1050人だ。

英医学専門誌「ランセット」が2006年に発表した研究によると、インドで中絶される女児は、毎年最大で50万人に上ると推計されている。【7月17日 AFP】
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意図的誤診で性転換手術
女児の中絶、身売りの話はよく聞きますが、最近は性転換手術で女児を男児にしてしまうことも横行しているとか。

****幼い愛娘に性転換を迫るインドの狂気****
家計の負担になる「娘」を手術で「息子」に生まれ変わらせようとする親が後を絶たない
一家の後継ぎとして、いずれ家族を支える存在になる男の子は大歓迎だが、嫁ぐ時に多額の持参金を持たせなければならない女の子はいらない──そんな考え方が根強く残るインドでは、お腹の赤ちゃんが女の子だとわかると中絶するケースが今も後を絶たない。それどころか、男児を切望するあまり、幼い女の子を男の子に変える性転換手術まで横行している。

地元紙ヒンダスタン・タイムズの報道によれば、マディヤ・プラデーシュ州インドールでは、1歳の赤ん坊を含む300人もの女の子が生殖器形成手術によって男の子にさせられたという。親たちは手術1件につき、約2000ポンド相当の費用を支払うらしい。
この報道を受けて、マディヤ・プラデーシュ州当局は調査を開始。インド医療評議会はこうした手術の必要性を個別の事例ごとに評価・判断する専門組織の立ち上げと、すべての都市におけるアセスメントの実施状況の確認を求めている。

手術費用が格安な上に、周囲に知られずに手術を受けられるため、インドールにはニューデリーやムンバイからも大勢の「矯正」手術希望者が押し寄せていると、ヒンダスタン・タイムズは伝えている。
女性と子供の権利拡大を訴える活動家たちは、こうした手術を「インド女性を馬鹿にした社会的狂気」だと非難している。小説家でフェミニストのタスリマ・ナスリーンは「衝撃! 胎児を殺すだけでなく、生まれた女の子を手術によって男の子に変えるなんて」とツイートした。(後略)。【7月4日 Newsweek】
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手術を行う医師らは、手術を受ける資格があるのは、男女双方の性的特徴を有した「半陰陽」の子供だけだと主張しています。しかし人権擁護団体は、彼らは手術を可能にするために意図的に誤まった診断を下していると批判しています。手術では女性器からペニスを形成した上で、子供に男性ホルモンの注射を打つとのこと。

【「ハネムーン手当」】
男女比の問題を離れて、人口増加全体を眺めると、過去10年、“一人っ子政策”の中国の人口増加率は0.6%以下に抑えられているのに対し、インドは1.8%近くと人口増加の勢いが止まりません。
インドの人口は国勢調査の暫定結果によると、12億1000億人に到達。中国の13億4000万人に肉薄しており、2030年までに中国を抜くと見られています。

こうした人口動向を背景に、多くの経済学者はインドの未来は明るいと予測しています。
“子どもと老人が少なく生産年齢人口が多い「人口ボーナス」期にあるからだ。インドの人口構成は中国より若い。今後10年でインドの就業人口は26%増加し、若い労働者が経済発展を後押しし、貯蓄率を増やし、投資を促進するはずだ。一方、中国は少子高齢化が進み、労働力や貯蓄率は減少するとみられる。”【5月4日 Record China】

しかし、インドの労働人口は毎年新たに1280万人増えているが、うち約4分の1にあたる310万人しか育成することができていないという実情もあって、「若者にいかに十分な技能を身につけさせるか。インドにとって今後30年の大きな課題だろう。インドが抱えるプレッシャーは中国より大きい」との見方もあります。

「人口ボーナス」期がマクロ的に経済成長にプラスに働くことは事実ですが、野放図な人口増加が水・電力・住宅の不足、森林の減少、地球温暖化、天然資源の枯渇、健康管理、雇用不足といった、社会の様々な問題を引き起こすことも事実であり、インド政府も人口抑制策をとっていますが、実現していないのが現状です。

なかには変わった人口政策もあります。
治安状況が悪化し、強盗事件が多発することで知られるインド中部マディヤプラデシュ州のShivpuri地区では、精管切除術(いわゆるパイプカット)を受ければ銃使用許可証の発行手続きを優先的に行う制度が導入されて論議を呼んだこともあります。【08年3月19日 AFPより】

そうした施策に比べればしごく穏当なのが、赤ちゃんを産まなかった新婚夫婦を対象とした「ハネムーン手当」制度です。

****子供を産まなかったら現金を支給、人口抑制と母子の健康増進 インド****
少子化が深刻な問題になっている日本やカナダ、オーストラリアでは、赤ちゃんを産むと「児童手当」がもらえるが、インドのとある地域では、赤ちゃんを産まなかったら現金がプレゼントされる。

マハラシュトラ州(州都:ムンバイ)のサタラ県は、新婚夫婦を対象に、通称「ハネムーン手当」制度をもうけている。結婚後2年間子供が産まれなかったら現金5000ルピー(約9200円)、もう1年間産まれなかったらさらに2500ルピー(約4600円)がもらえるというもので、これには人口増加の抑制と女性の健康増進という2つの目的がある。(中略)

申請は簡単で、婚姻届を提出していることと、自由意思でこの制度を利用したことを確認する書類に署名することが条件だ。ただし申請後2年間は3か月に1度、夫婦でカウンセリングならびに家族計画に関する授業を受けなければならない。コンドームや避妊薬は無料で配布され、中絶手術の手配も可能。
07年の制度開始以来、約4300組の夫婦が申請した。途中で離脱したのは150カップル程度にとどまっているという。

■18歳未満の出産は、新生児にも妊婦にも危険
・・・インド社会、特に保守的な農村部では、子供はいまだに重要な稼ぎ手、一家の担い手と見なされている。その一方で、同国では女性の早婚傾向が根強い。保健当局によると、マハラシュトラ州では花嫁の10人に4人が法定年齢の18歳未満だという。サタラ県では女性はたいてい19歳で結婚し、その80%以上は1年以内に妊娠する。

ある医師は、出産を遅らせることを奨励するハネムーン手当のような政策は、赤ちゃんと母体の健康のために極めて重要だと話した。18歳未満の出産は、産婦または新生児が命を落とす危険性が極めて高くなるという。実際、サタラ県では1歳未満で死亡する新生児は1000人中31人、妊娠に関連した要因で死亡する女性はインド全体で出産10万回(死産を除く)につき254人(08年)となっている。

サタラ県のハネムーン手当制度は来年で終了する予定だが、現在州内の別の3県が同様の制度を検討しているほか、中部のマディヤプラデシュ州、東部のジャルカンド州も関心を寄せている。【4月30日 AFP】
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【「管理下における精子の可逆的抑制」】
確実な避妊方法は男性のパイプカットですが、実行する男性はそう多くはありません。
そうしたなかインドで、1回の注射で、外科的手術を受けることなくパイプカット(精管切除)と同じ効果を10年間得られるという方法が開発されているそうです。

****注射1本で効き目10年の男性用避妊法****
コンドームもパイプカットもいらなくなる画期的避妊法が、人口増加に悩むインドで完成間近

およそ400年前、ある賢人が自分の男性器に羊の腸を被せるというアイデアを思いついた。これがコンドームの始まり。以来、様々な改良が重ねられてきたとはいえ、男性用避妊具は基本的には今も初期の形状を踏襲している。
だが間もなく、男性の避妊法をめぐる常識が一変する日が来るかもしれない。

インド人技術者のスジョイ・K・グハは30年に及ぶ研究の末、生殖技術の世界でピル(女性用経口避妊薬)以来の大革命となりえる画期的な避妊法を完成させようとしている。今回のターゲットは男性だ。
「管理下における精子の可逆的抑制」の略称で「RISUG」と名づけられた新メソッドは、精管にゲル状のポリマーを注入し、精子の細胞膜を破裂させて受精能力を奪うというもの。1回の注射で効果は10年。外科的手術を受けることなくパイプカット(精管切除)と同じ効果を得られるうえに、性欲減退などの副作用もないという。

生殖機能の回復も注射1本で簡単に
それだけではない。猿などを使った動物実験では、別の薬剤を注入することで、簡単に生殖機能が回復することも確認されている。つまり、この方法を使えば、ホルモン剤を使わなくても一時的に生殖機能を停止でき、しかも好きなときに元の機能を取り戻せるのだ。

今も女性の避妊手術が最もポピュラーな避妊法だというインドにとって、この発明は劇的なインパクトをもたらすかもしれない。インドでは、37%の女性がリスクの高い卵管切除手術を受けているのに対し、パイプカット手術を受ける男性はわずか1%。人口を抑制するために男性の手術率を引き上げたい当局は、様々なインセンティブを用意している。ラジャスタン州では、手術を受けた男性は銃のライセンスに加えて、車とオートバイ、テレビまでもらえる。

「体にメスを入れる必要がないのは、RISUGの重要なメリットの1つで、心理的インパクトは大きい」と、グハは言う。「2つ目の利点はもちろん、機能が復活する可能性がある点だ」
RISUGによる避妊法は、まだ商品化には至っていない。だが、長年に渡って人知れず重ねてきた研究は最終段階を迎えている。(後略)【7月14日 Newsweek】
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“長年に渡って人知れず重ねてきた研究”ということで、果たして実用化できるものかどうかは知りません。
少なくとも、女性側に負担を負わせることが多かったこれまでの避妊法にくらべ、“元から断ってしまう”方法は、方向としては妥当なのでは。

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