孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  スー・チーさんと政権側、軟禁解除後初めての“対話” 欧米・日本、軟化の兆しも

2011-07-26 20:04:01 | ミャンマー

(7月7日 訪問先ニャンウーで住民の歓迎を受けるスー・チーさん By SAUNG WIN HLAING  http://www.flickr.com/photos/65443286@N08/5951677677/ )

演説や政治的活動とみなされかねない行動を避ける
ミャンマーのアウン・サン・スー・チーさんは、今月、前年11月に自宅軟禁を解除されてから初めてヤンゴンを離れて次男キム・アリス氏とともに、中部の古都バガンや近郊の村々を4日間かけて訪問しました。
その行く先々で大勢の歓迎する人びとの輪に囲まれたと報じられています。

“地方遊説”となれば当局による再度の拘束も危惧されていましたが、“旅行中のスー・チーさんには私服警官の監視が付いていたが、妨害などは一切なく、穏やかな旅路となった。これは、スー・チーさんが演説や政治的活動とみなされかねない行動を徹底的に避けたためだ。”【7月8日 AFP】ということで、無事に旅行は終了しました。

その後、スー・チーさんは19日、ヤンゴンで、父の故アウン・サン将軍を追悼する式典に出席しています。
国民が「建国の父」と慕う将軍の命日に催される式典へのスー・チーさんの参加は9年ぶりで、支持者ら約2千人も式典後に集まりました。

****スーチーさん、9年ぶり父の追悼式典に 支持者2千人も****
・・・・支持者らが大規模に行動するのは、昨年11月のスー・チーさんの軟禁解除直後の演説以来。スー・チーさんの政治活動を禁じる政府との緊張が高まる可能性がある。

スー・チーさんは同日午前にアウン・サン廟(びょう)で開かれた政府主催の追悼式典に参加した後、自身が率いる民主化勢力「国民民主連盟(NLD)」本部で支持者らとともに独自の式典を開催。午後にアウン・サン廟に車で再訪する際、支持者らも徒歩で続いた。スー・チーさんは静かに祈りをささげただけで、演説はしなかった。支持者の一人は「指示を受けたわけではなく、みんな自発的についていっただけだ」と話した。 【7月19日 朝日】
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一連の行動でスー・チーさん側が自制していることもあって、今のところ当局との関係は小康状態を保っていますが、スー・チーさん側も当局側も今後に向けての“様子見”ということでしょう。

会談後、硬い表情のスー・チーさん
インドネシア・バリ島で開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)との会議に出席したクリントン米国務長官は22日、ミャンマー政府に対し、「2000人以上の政治犯を無条件で釈放するべきだ」と要求するとともに、スー・チーさんを含む野党勢力や少数民族との「意味のある対話」などを求め、応じなければ「今まで通りの道をたどることになる」と警告しました。

こうしたアメリカの働きかけもあってか、25日には、自宅軟禁を解かれて以来初めての、スー・チーさんと政府側の“対話”が行われました。

****スー・チーさん、ミャンマー政府と会談 軟禁解除後初めて****
ミャンマーの民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんは25日、新政権のアウン・チー労働相とヤンゴンの迎賓館で1時間あまりにわたって会談した。数々の問題が指摘されながらも昨年11月の選挙で軍事政権に代わる新政権が誕生し、スー・チーさんが自宅軟禁を解かれて以来、スー・チーさんが政府側と対話を持ったのは初めて。
数日前には米国が、ミャンマー政府に対し民主化に向けた具体的な進展を示すよう求めていた。

スー・チーさんとアウン・チー労働相は会談後、迎賓館前でそろって記者会見に臨み、同労働相は「これは、将来に進む多くのステップの1つだ」と語った。
また同労働相は、会談の内容は法と秩序や、国民の利益を目的とした緊張緩和におよんだとの内容の共同声明を読み上げた。共同声明は、会談を前向きなものと評価しており、両者は再度、会談することで合意したという。
一方、スー・チーさんは、「会談の結果が、国にとって良いものとなると期待している」と言葉少なに語った。【7月26日 AFP】
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自宅軟禁を解かれて大分時間が経過していますが、ようやく“対話”が実現したのは、民主化へ向けた柔軟姿勢を国際社会にアピールする政権側の狙いとともに、11月の総選挙を無難に乗り越え“民政移管”を実現した政権側の自信の表れでもあるでしょう。

アウン・チー労働相は07年、スー・チーさんとの対話窓口となる「連絡担当相」に任命され、自宅軟禁されていたスー・チーさんと計9回会談している人物ですが、今回の会談では、改めてスー・チーさんに政治活動の自粛を求めた可能性が指摘されています。

「何を議論し実行するにせよ、国益を考える」とも語ったスー・チーさんですが、約1時間20分の会談の雰囲気は会談後の記者会見の写真によくあらわれています。
にこやかに記者に手を振りスピーチするアウン・チー労働相に対し、少し距離を置いて立つスー・チーさんは腕を前に組み、硬い表情です。両者の握手などもなかったそうです。

【「透明性を確保し、国民のためになる支援である必要がある」】
政権側はスー・チーさんとの“対話”などの柔軟姿勢を示すことで、欧米が続ける経済制裁の解除へ、局面打開をめざしたとも見られています。
欧米諸国、日本も新政権の対応を見定めながら、柔軟な対応も織り交ぜた軌道修正を図っていると報じられています。

****対ミャンマー、対話もじわり 日米欧 距離感探る****
欧米諸国がミャンマー(ビルマ)との距離感を模索している。20年ぶりの総選挙を経て形式的に民政移管した3月の新政権発足後の情勢変化を見定めつつ、これまでの経済制裁に柔軟な対応も織り交ぜ始めた。日本も欧米の動きを見つつ、軌道修正を図る。

米政府はインドネシア・バリ島ヌサドゥアで22日に主催する初の「メコン下流域フレンズ(友好国)閣僚会議」にミャンマーを招いた。従来のビルマ呼称に加え、「ビルマ/ミャンマー」の表記も容認。また在ミャンマー臨時代理大使の大使への格上げも検討中だ。キャンベル国務次官補は「以前の軍事政権との決別を期待する」と話す。

オバマ政権発足後の2009年9月に直接対話に踏み切った米国は、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんの総選挙からの排除に強い失望を表明してきたが、対話は閉ざしていない。議会で追加経済制裁を訴えてきた共和党の重鎮、マケイン上院議員も6月、約15年ぶりにミャンマーを訪問。関係改善を語るなど、対話の環境に変化が生まれつつある。

欧州連合(EU)は4月、対ミャンマーの輸入や直接投資の禁止など経済制裁を1年間延長する一方、外相らに対するビザ発給停止や資産凍結を解除することで制裁を一部緩和。6月に代表団を率いてミャンマーを訪れたロバート・クーパー欧州対外活動庁顧問は「(ミャンマーの)変化の可能性はとても大きい」と語り、制裁解除も視野に入れた姿勢を示した。

日本も政策変更を表明。03年のスー・チーさんの拘束以降、人道支援などに限定してきたODA(政府の途上国援助)を、スー・チーさん解放と新政権発足を受け、農業や医療・保健分野などにも拡大させることを検討している。松本剛明外相は21日の日本メコン外相会議で「総選挙の実施や民政移管は不十分ではあるが一歩前進。流れを後押しするために協力を強化していきたい」と述べた。

元々日本は、制裁を重視する欧米諸国とは異なり、援助などを通じた「関与」で民主化を促そうとしてきた。中国からの対ミャンマー援助や投資が増える中「このままでは中国の影響力が強まるだけだ」(外務省幹部)との懸念もある。

6月下旬にミャンマーを訪問し、新政権高官やスー・チーさんと会談した菊田真紀子外務政務官は「スー・チーさんから『透明性を確保し、国民のためになる支援である必要がある』という話があった。新政権の民主化への努力が見えるかなどを見極めて、実施を判断する」と話した。【7月22日 朝日】
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日本側が検討している新規ODAは、〈1〉結核やマラリアの予防接種や妊産婦への医療支援〈2〉海外留学を含む人材育成支援〈3〉塩害に強い苗木や農機具の供与――などが想定されています。
歴史的経緯でミャンマーとは深い繋がりを持つ日本ですが、中国との援助競争だけでなく、「透明性を確保し、国民のためになる支援」を期待します。

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