孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ソマリア  深刻化する飢餓 武装勢力の壁に苦しむ支援活動

2011-07-29 21:02:05 | ソマリア

(イスラム系の支援組織「Muslim Aid」による支援物資配布の様子 7月11日 ソマリア・モガディシオ “flickr”より By Muslim Aid Serving Humanity http://www.flickr.com/photos/muslimaiduk/5935953461/ )

【「1000万人が餓死しかねない」】
7月11日ブログ「東アフリカ 過去60年で最悪の干ばつ、避難先で餓死者」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110711
7月22日ブログ「ソマリア 南部2地域に飢餓宣言、今行動しないと地域拡大の恐れ」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110722
に続いて、アフリカ東部・ソマリアの飢饉の話題です。

過去60年で最悪の干ばつに襲われている東アフリカですが、内戦で実質的無政府状態が続くソマリアの混乱は特に厳しく、過去20年間のアフリカで最悪の食糧危機に苦しむソマリア南部2地域に、国連は“飢餓”を宣言しています。
食料危機は、アフリカ北東部一帯に広がっており、国連は「1000万人が餓死しかねない」と警告しています。

****ソマリア大飢饉 370万人、生命の危機****
飢えから逃れ、戦乱の首都へ 干ばつのソマリア南部

20年以上内戦が続くソマリアの首都モガディシオは頻繁に銃声が響き、廃虚同然の建物が並ぶ。だが、こんな街に助けを求めに来る人が絶えない。深刻な干ばつによる飢饉(ききん)に苦しむ同国南部の人々だ。

モガディシオのバナディル母子病院を記者が訪ねると、2週間前に運ばれたムハンマド君(2)がいた。12キロあった体重はいま5キロ。350キロ離れた村から一緒に来たという父フセインさん(30)が嘆いた。
「村には4年間も雨が降らない。ヤギ200頭は売ったり死んだりで、いなくなった。家族皆が飢え、この子の異状に気づくのが遅れた。10日間歩いて首都に着き、救急車に助けてもらった」

病院によると、ムハンマド君と同様、重度の栄養失調で約250人の子どもたちが入院している。だが、薬や食糧が足りず、毎日2、3人が亡くなっているという。
ソマリア南部は暫定政府と対立する武装勢力が実効支配し、救援物資は届かない。人々は危険を顧みず、首都や周辺国に向かわざるを得ない。国連によると住民370万人の生命が危機に直面している。
国連機関などは、ソマリアを含む東アフリカ一帯が過去60年で最悪の干ばつに見舞われ、1200万人以上が支援を必要としていると訴えている。【7月27日 朝日】
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【「国民は家にこもって雨を待つのだ」】
緊急の国際支援が必要なソマリアですが、暫定政府と対立する武装組織の支配地域のため、救援活動も困難を極めているようです。
今朝のTVニュースでも、モガディシオかどこかの倉庫にうず高く積まれて支援食糧が放映されていました。国際支援が不十分な点もありますが、全く物資がない訳ではなく、住民に届けられないのが一番の問題となっています。

“国連が20日、飢饉が起きていると宣言したバクール地方とシェベリ川下流地方は、イスラム過激派組織アルシャバブが実効支配している。アルシャバブは2010年初頭、外国の支援団体に対し2年間の活動禁止令を出し、WFPもソマリアからの撤退を余儀なくされていた。
今月になって、アルシャバブは深刻な干ばつに苦しんでいる人民を助けたいとして活動禁止令の解除を発表し、支援を要請。これを受け、各支援団体はソマリアでの支援活動再開を検討していたが、暫定政府に任命されたばかりの女性・家族問題担当相が21日、アルシャバブに誘拐される事件が発生。武装勢力支配地域での支援再開の難しさが浮き彫りになった。” 【7月22日 AFP】

“南部を実効支配するイスラム武装勢力シャバブは、人々の困窮に向き合おうとしていない。広報担当ラゲ氏は20日の記者会見で、「国民は家にこもって雨を待つのだ。外国人のやっている難民キャンプには行ってはならん」。ラゲ氏は「スパイ活動」として2009年から禁じている国連や欧米系NGOの援助活動も、改めて禁止を通告した。深刻な飢饉を招いたのは、こうしたシャバブの強硬姿勢にあるのは間違いない。” 【7月27日 朝日】
「国民は家にこもって雨を待つのだ」とは、狂気としか言いようがありません。

動き出した支援活動
そうした困難な状況で、赤十字国際委員会や国連世界食糧計画(WFP)の支援活動が行われています。
****ソマリア干ばつ、武装勢力支配の一部地域に食糧援助****
赤十字国際委員会(ICRC)は24日、干ばつの直撃を受けたソマリア南部の武装勢力支配地域の1つゲド州バルデラに、食糧400トンを届けたと発表した。支援活動への妨害はなかったという。

ゲド州は、国連が飢饉宣言を出したバクール地方とシェベリ川下流地方に隣接しており、ともにイスラム過激派組織アッシャバーブが実行支配している。ICRC主導による住民への直接の食糧投下は2009年以来で、今後、追加の投下を予定しているという。【7月25日 AFP】
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****飢饉発生のソマリアへ、子供向け栄養食品を空輸 WFP****
国連世界食糧計画(WFP)は27日、干ばつによる被害が深刻なソマリアへの緊急食糧支援を開始した。首都モガディシオへ、栄養失調に陥っている数千人の子供向けにピーナッツ・ペースト10トン分を空輸した。
「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ大陸北東部では、過去60年で最悪の干ばつが発生。ソマリアでの被害は最も深刻で、約1200万人が飢餓の危機にさらされている。
WFPのスポークスマンによると、栄養強化のためのピーナッツ・ペーストを毎月100トン、3万5000人の子供に供給する計画で、今回の空輸はその第1弾だという。【7月28日 AFP】
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予断を許さない状況
この飢饉が武装勢力の力を弱めており、和平実現の好機が生まれているとの見方もあります。
****干ばつ・戦闘、続く苦しみ 弱る武装勢力「和平の好機」 ソマリア飢饉****
・・・・一方、飢饉によってシャバブが弱体化し、和平の好機が生まれているとの皮肉な指摘もある。
07年から台頭してきたシャバブの勢いは、ここ数カ月間弱まり、かつてモガディシオでも6割を支配したが、今では3割程度に過ぎない。
「シャバブの資金源の一つは地元住民から徴収する『税金』だが、近年の干ばつで激減した。略奪を始めており、士気も落ちた。今後の戦略をめぐる内部分裂もある。結果的に和平実現の機運が到来している」。暫定政府の治安関係者は、そうした見方を示した。(後略)【7月27日 朝日】
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しかし、ことはそう簡単ではなさそうで、暫定政府・アフリカ連合ソマリア・ミッションとアッシャバーブとの交戦も伝えられており、予断を許さない状況です。

****飢饉のソマリア、首都で政府軍と反政府勢力が交戦****
飢饉に陥っているソマリアの首都モガディシオで28日、緊急援助物資の供給ルートを確保しようとする暫定政府とアフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)の合同部隊と、イスラム過激派組織アッシャバーブとの間で戦闘が起きた。5時間にわたる戦闘で武装勢力10人と暫定政府軍兵士2人が死亡したほか、合同部隊の兵士2人と民間人27人が負傷した。

ソマリアを含む「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ大陸北東部は記録的な大干ばつに見舞われ、1200万人あまりが飢餓の危機にさらされている。ソマリアでは、干ばつと絶え間ない紛争により、全人口1000万人のおよそ半数が支援を必要としている状況だ。

国連は今月、ソマリア南部に21世紀初の飢饉の発生を宣言。首都モガディシオでも数千人の子どもたちが飢えに苦しんでおり、国連世界食糧計画(WFP)が27日に緊急食糧支援を行ったばかり。【7月29日 AFP】
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英BBCによると、今回の作戦で暫定政府側がアルシャバブ支配地域の一部を制圧した模様で、WFPは今後、1カ月当たり100トンを目標に供給を続けるとのことです。
しかし、“ しかし、今月末ごろにはイスラム教の断食月(ラマダン)が始まり、宗教心が高揚することから、アルシャバブが反転攻勢に出る可能性も指摘されており、切迫した状態が続きそうだ。”とも報じられています。【7月29日 毎日より】

【「どこへそうした資金が流れたのか、何も分からない」】
ソマリアのアフメド暫定政府大統領は、アルシャバブと和平交渉を断固拒否する姿勢を崩していません。
****武装組織が支援阻止」アフメド・ソマリア暫定大統領****
干ばつにより飢饉(ききん)が起きているソマリアのアフメド暫定政府大統領が、朝日新聞のインタビューに応じた。飢饉は同国南部で深刻だが、この地域を実効支配するイスラム武装組織シャバブが支援活動を阻止しているとして、「シャバブのせいで被害が拡大している」と批判した。主なやりとりは次の通り。

 ――飢饉の理由は。
「干ばつはソマリアのほかの地域や、ケニアなどでも起きているが、問題は、シャバブや(シャバブと関係が深い国際テロ組織)アルカイダが支援活動を阻止している点にある。彼らがそうした地域を支配しているため、飢饉が深刻化しているのだ」

 ――暫定政府としての対策は。
「いくつかの避難民キャンプを作った。食糧や居住地を提供し、病気の拡大も防ごうとしている。外国からの送金の円滑化も進めている」

 ――内戦が20年以上続いている。飢饉を契機として、シャバブと和平交渉する考えはないのか。
「彼らも飢饉で苦しんでいる。だが、シャバブやアルカイダの目的は、ソマリアだけでなく世界を対象にしたテロ活動にある。交渉は絶対にしない」

 ――治安の問題もあり、首都モガディシオでは、外国の援助団体の姿がないが。
「それが問題だ。多くの資金がソマリアの飢饉のために使われたと言われているが、我々はその成果を見ていない。どこへそうした資金が流れたのか、何も分からない。ケニアを拠点にしている国連のソマリア関係事務所がモガディシオへ移り、生産的な仕事ができるよう望んでいる」【7月28日 朝日】
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“どこへそうした資金が流れたのか、何も分からない”というのが現実です。
反政府武装組織か、政府側か、あるいはNGOか・・・物資も資金もどこかに消え、戦闘に逃げ惑い飢えに苦しむ住民が残される・・・悲惨な現実です。
コメント (2)
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