孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コソボ  セルビア人支配地域ミトロビツァで衝突 遠い和解への道

2011-08-06 20:14:53 | 欧州情勢

(“分断の街”ミトロビツァで  壁の中央には“Mitrovica(ミトロビツァ) peace”と書かれています。 “flickr”より By Délébile  http://www.flickr.com/photos/delebile/4451387168/ )

セルビア 最後の戦犯を逮捕
セルビアでは、ボスニア・ヘルツェゴビナのスレブレニツァで1995年に起きた大虐殺に関する罪などに問われているボスニア・ヘルツェゴビナ内戦(92~95年)当時のセルビア人武装勢力指導者、ムラディッチ被告(69)の5月末の逮捕に続き、クロアチア内戦(91~95年)時のセルビア人勢力指導者だったゴラン・ハジッチ被告(52)も先月逮捕されました。
旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷が起訴したすべての戦犯を逮捕したことで、EU加盟の条件のひとつをクリアした形となっています。

****セルビア:内戦時の最後の戦犯を逮捕 EU加盟にはずみ*****
東欧のセルビアは20日、クロアチア内戦(91~95年)時のセルビア人勢力指導者だったゴラン・ハジッチ被告(52)をセルビア北部の山岳地帯で逮捕したと発表した。ハジッチ被告は、旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷が起訴した161人のうち唯一拘束されていなかった。

セルビアが5月末のムラディッチ被告に続き、最後の戦犯を逮捕したことを欧州連合(EU)は「大きな一歩」と歓迎しており、加盟交渉開始へ向けた手続きが一層加速するとみられる。
戦犯法廷によると、ハジッチ被告は内戦中、数万人のクロアチア人や非セルビア人をセルビア人支配地域から追放したほか、一部を収容所に入れたり殺害したりした。戦犯法廷は04年に人道に対する罪などで起訴したが、被告は逃亡していた。【7月20日 毎日】
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EUの仲介で始まったコソボ・セルビア直接交渉
しかし、セルビアのEU加盟に関しては、分離独立した隣国コソボとの和解という、もうひとつの高いハードルがあります。
今年3月、コソボ独立宣言以来初めての直接対話が始まったとの報道がありましたが、その後の進展は聞いていません。

*****セルビア:コソボと直接対話開始 独立宣言以来初*****
セルビアとコソボは8日、08年のコソボ独立宣言以来初めて、高官級の直接対話をブリュッセルで始めた。英BBCが伝えた。セルビアは自国からのコソボ独立を認めていないが、欧州連合(EU)の仲介で対話が実現した。両国は今後、コソボの国際的地位など困難な問題を先送りしたまま、交通や通信など市民生活に直結する課題を中心に協議を続ける。

ロイター通信によると、EU当局者は直接対話の目的について「バルカン地域の生活改善と相互協力の向上を図り、欧州基準に向けて引き上げるためだ」と述べた。相互に対立するセルビアとコソボだが、早期EU加盟という共通の目的に向けて、どれだけ歩み寄れるかが焦点だ。

アルバニア系住民が多数を占めるコソボは、90年代の旧ユーゴスラビア崩壊に伴い、セルビアからの分離独立を図った。北大西洋条約機構(NATO)を巻き込んだ紛争では、1万人以上が死亡、数十万人が故郷を追われたと言われる。

国連統治下に置かれたコソボは08年2月、一方的に独立を宣言。国際司法裁判所が昨年7月、独立宣言は国際法に違反しないと判断したため、セルビアへの国際的な圧力が強まっていた。コソボを国家として承認した国は、日本や米国、EU加盟国の多くなど計75カ国に及んでいる。【3月9日 毎日】
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コゾボ “分断の街”ミトロビツァで衝突
和解よりは、むしろコソボ北部のセルビア人支配地域でのコソボ警察特殊部隊とセルビア系住民の衝突のニュースが最近伝えられています。

****コソボ:北部で衝突…特殊部隊がセルビア地域に進入*****
コソボ北部ミトロビツァのセルビア人支配地域にコソボ警察特殊部隊が進入してセルビア側と衝突し、26日までに警官1人が死亡、数人が負傷した。現場一帯に国際部隊が投入されたが、27日にはセルビア側住民の一部が国境検問所に放火するなど緊張が高まった。欧州連合(EU)の仲介で始まったコソボ・セルビア直接交渉への影響も懸念されている。

ミトロビツァは市内を東西に流れるイバ川を境に、北部のセルビア人地域と南部のアルバニア人地域に分断されている。セルビア人地域は隣国セルビアの影響下にある。コソボ政府は事実上「野放し状態」のセルビア国境を掌握するため、25日深夜から26日朝にかけ特殊部隊を派遣した。
コソボ警察は衝突後、国境から撤退した模様。ミトロビツァ北部では怒ったセルビア人が道路にバリケードを築くなど抵抗の構えをみせている。

EU加盟国の多くや米国は、08年のコソボ独立を承認、これを認めないセルビアとの仲介役を務めている。【7月28日 毎日】
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ミトロビツァはアルバニア人住民とセルビア人住民が川を挟んで対峙する“分断の街”で、町の北部のセルビア人住民居住地区は、コソボのセルビア人共同体の事実上の首都ともなっています。
また、04年3月には、アルバニア人の子供が川で溺れたことがきっかけとなって、セルビア人とアルバニア人の間での大規模な暴力衝突“コソボ暴動”に発展したことも知られています。

今回の衝突に関しては、北大西洋条約機構(NATO)は、指揮下の国際治安部隊(KFOR)が暫定的に国境管理にあたることで隣国セルビアと基本合意したと発表しています。
しかし、“「蚊帳の外」に置かれた”形のコソボ政府は国境の掌握を目指しており、この合意に反発しています。

****コソボ:北部国境でセルビア側と衝突 NATOが介入****
コソボ北部ミトロビツァのセルビア人支配地域に先月末、コソボ警察特殊部隊が進入してセルビア側と衝突、警官1人が死亡、数人が負傷する事件があり、北大西洋条約機構(NATO)は3日、指揮下の国際治安部隊(KFOR)が暫定的に国境管理にあたることで隣国セルビアと基本合意したと発表した。だが、国境の掌握を目指すコソボ政府は合意に反発しており、火種は残ったままだ。

コソボ政府は先月25日に特殊部隊を派遣。怒ったセルビア系住民らが国境検問所2カ所を封鎖していた。NATOはKFORを増派する一方、セルビアとの交渉に乗り出すなど介入を強めていた。
コソボ北部のセルビア国境はこれまで、欧州連合(EU)の文民支援隊(EULEX)が管理。コソボ政府は事実上セルビアの支配下にあると非難してきた。
コソボ政府は国境管理に関する今回の交渉で「蚊帳の外」に置かれた。依然として自国の実権が及ばないことに強い不満を募らせており、NATO・セルビア間の合意は「受け入れられない」との声明を発表した。

また、今回の基本合意を受けてセルビア系住民らは国境封鎖を解き、退去することになっているが、セルビア本国の意向にどこまで従うか不透明な点もある。
コソボは08年、セルビアからの分離独立を宣言。セルビアはこれを認めていない。【8月4日 毎日】
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分離独立までの過程で互いに多大の犠牲者を出した両国が和解に向かうのは、容易なことではありません。
今後、相当に長い時間が必要になるのではないでしょうか。
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