(ティモシェンコ前首相 公判中の最近の写真のようです。 珍しく眼鏡をかけた写真ですが、拘留のせいでしょうか、年齢的なものでしょうか、さすがにやつれた感があります。 “flickr”より By juanzi615 http://www.flickr.com/photos/21427686@N03/6037099670/ )
【波乱万丈の「ガスの王女」「ジャンヌ・ダルク」】
女性政治家をその容姿で云々することは不見識と承知していますが、他愛ない戯言としてご容赦を。
タイでは亡命中のタクシン元首相の身代わりとして、妹のインラック氏が野党首相候補として立候補し、その愛らしい容姿もあってブームを起こし、みごと首相の座を射止めました。
しかし、美しき宰相と言えば、やはりウクライナのティモシェンコ前首相(50)でしょう。(全くの独断偏見ですが)
三つ編にした金髪をアップにしたウクライナの伝統的な髪型がトレードマークで、これまでも何回かこのブログでも記事・写真は取り上げてきました。
旧ソ連支配下でタクシー配車係りだったシングルマザーに育てられた彼女は、ペレストロイカの波に乗り、不法コピーのレンタルビデオチェーンを手始めに、その後エネルギー関連事業に転身し、ロシアからウクライナへの天然ガスの最大の輸入・卸売業者になり、「ガスの王女」と呼ばれるまでになります。単に美しいだけでなく、極めつけのやり手でもあります。
更に、やり手であるだけでなく、相当にしたたかです。
天然ガス事業においても、脱税の疑いや、不正に手に入れた天然ガスを再販するという不正取引も取りざたされ、ロシアでは指名手配もされました。
政治の政界に転身しても成功を収め、1999年には副首相(燃料エネルギー部門担当)に就任します。
しかし、01年には文書偽造・ロシア産天然ガスの密輸入の容疑で逮捕・投獄され、副首相も解任されます。彼女はこの事件に関し、当時のクチマ大統領によってでっち上げられたものであると主張しています。
釈放後は野党勢力を形成してクチマ大統領批判の急先鋒となり、04年の大統領選挙ではユーシェンコ氏を支援して、いわゆる「オレンジ革命」の立役者となり、“ジャンヌ・ダルク”とも呼ばれました。
ユーシェンコ氏が大統領に就任すると首相に任命されますが、数カ月後、確証なしにユーシェンコ大統領と与党の党員の腐敗を告発して解任されます。
その後、07年12月には再度ユーシェンコ大統領と手を組む形で首相に返り咲きますが、大統領権限やグルジア問題で再び大統領との関係が悪化して、ユーシェンコ大統領の連立離脱に至ります。
一方で、指名手配されるほど関係が悪かったロシアとは、天然ガス輸入価格問題でプーチン首相と親密な関係を築きます。
10年の大統領選挙では、頂点を目指し出馬しますが、親ロシア派のヤヌコーヴィチ現大統領に惜敗します。
ティモシェンコ氏は大統領選挙で不正が行われたと主張し、首相辞任も拒否していましたが、首相不信任決議案が議会で可決され、ティモシェンコ氏は失脚することになります。
失脚後は、政権側からの報復のように、首相時代の09年に温室効果ガスの排出取引で日本などから得た資金を本来の環境対策ではなく、年金支払いの穴埋めに流用していたとして、最高検察庁に起訴されています。
更に、ロシアとのガス契約に関する職権乱用事件(首相時代の09年、ロシアと不当に高い価格でガス供給契約を結んだなどとした訴え)でも起訴されますが、公判で「政治目的の不当な裁判」などとして裁判所や検察を公然と批判、今年8月5日には審理妨害の疑いで逮捕されました。【ウィキペディア、8月24日号Newsweek日本版より】
【「10回でも100回でも1000回でも立ち上がる」】
ざっと、これまでの経歴を概略すれば以上のようになりますが、なんとも浮き沈みの激しい波乱万丈の人生で、美しく、やり手であるだけでなく、野心家で、したたかで、不屈の闘志の持ち主でもあります。
****ティモシェンコ逮捕で 最後に笑うのは誰?*****
ウクライナの「ジャンヌ・ダルク」はしたたか 宿敵打倒のためなら「殉教」もいとわない
ウクライナのユリア・ティモシェンコ前首相はいつもよりやや青ざめ、かなりいら立っている様子だったが、長い金髪はいつもどおり三つ編みにしてきちんとアップしていた。司法当局は今月初め、職権乱用の罪で公判中のティモシェンコを審理妨害容疑で逮捕。逮捕後の公判では、直前まで閣議に出ていたかのように背筋を伸ばして座り、挑発的なグレーのドレスを優雅にまとっていた。
氷のような視線は裁判官にひたと据えられていた。6月下旬の公判で裁判官を「政権の操り人形」と呼んだことが、審理妨害容疑での逮捕を早める結果となった。職権乱用罪での公判はティモシェンコヘの揺さぶりだと、弁護側は主張する。
重苦しい空気に包まれた法廷にティモシェンコの毅然とした声が響き渡った。「あなたの前で起立する気はありません」と彼女は裁判官を一喝した。「マフィアにひざまずくのと同じですから」(中略)
野党陣営の巻き返しも
確かに、ティモシェンコが殉教者になれば、来年の議会選挙で野党の支持率拡大につながるかもしれない。裁判所の外ではティモシェンコの支持者たちが「盗賊は出て行け!」「ユリア愛してる!」と連呼し、白地に赤いハートが描かれた野党の旗を振っている。(中略)
それでもヤヌコビッチは、ティモシェンコ逮捕による政治的ツケをあまり心配していないようだ。議会ではヤヌコビッチ率いる地域党主導の委員会が、是が非でもティモシェンコを刑務所送りにしようと、彼女が90年代に行ったとされる天然ガスの不正取引疑惑を調査中だ。ティモシェンコは服役することになるだろうが実際の罪はもっと重いと、インナ・ボゴスロフスカヤ委員長は本誌に語った。(中略)
いずれにせよ今後数カ月間、ティモシェンコは拘置所で過ごすことになるだろう。それでも彼女は強気だ。「盗賊(ヤヌコビッチのこと)を権力の座から追い落とす」チャンスがあれば、「10回でも100回でも1000回でも立ち上がる。ほかに選択肢はないから」。【8月24日号 Newsweek日本版】
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【体のあちこちに原因不明の内出血?】
今回、ティモシェンコ前首相を取り上げたのは、獄中で謎の症状が出ているという下記の記事を目にしたからです。
****ティモシェンコ前首相、獄中で謎の症状 陰謀論も ウクライナ****
ウクライナの「オレンジ革命」の立役者の1人で、職権乱用罪で起訴されたユリヤ・ティモシェンコ前首相の健康状態が獄中で悪化したと、前首相の広報担当が19日、AFPに語った。
ティモシェンコ前首相は、首相在任中の2009年に職権を超えてウクライナに不利な条件でロシアの天然ガスを輸入する契約に署名したとして起訴され、6月24日から裁判が行われている。
ティモシェンコ前首相は今月5日、審理を妨害したとして法廷内で逮捕され、当局に身柄を拘束された。前首相は18日に医師の訪問を求めた後、同日の法廷で体調不良を訴え、この日の公判は22日に延期された。
ティモシェンコ前首相の弁護人は18日、ティモシェンコ前首相は体のあちこちに原因不明の内出血があるという懸念すべき症状が出ていると判事に述べた。
前首相の広報担当者は、「捜査の破綻が明らかになりつつある。法的にティモシェンコ氏を倒せない政権側が、その他の方法で前首相を傷つけようとしているのではないかと恐れている」と述べ、何らかの犯罪行為の可能性を示唆した。【8月22日 AFP】
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ウクライナと言えば、オレンジ革命当時、大統領を目指していたユーシェンコ氏が突然重病にかかり、顔面は痘痕だらけとなった“事件”が記憶にあります。
ダイオキシン中毒によるものとも言われ、ユーシェンコ陣営では反対陣営による陰謀を主張、国民の同情が高まる結果になりました。
ティモシェンコ前首相の場合は、体のあちこちに原因不明の内出血が出ているとのことですが、ユーシェンコ前大統領のように顔面の症状でなく何よりです。
単なる病気・体調不良か、陰謀かわかりませんが、自作自演ぐらいやりかねないしたたかな女性でもあります。
なお、彼女が手本にしているのは「鉄の女」サッチャー元英首相と、アルゼンチンのファーストレディーとして大衆に支持されたエバ・ペロンだそうです。
また、「ジャンヌ・ダルク」という呼称については、「あんな結末を迎えるのはごめんだわ」とよく言っていたとか。【8月24日号 Newsweek日本版より】