孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

リビア  終焉を迎えつつあるカダフィ独裁体制

2011-08-22 21:02:57 | 北アフリカ

(8月20日 首都トリポリ攻略開始を喜ぶ東部ベンガジの群衆 “flickr”より By DTN News http://www.flickr.com/photos/dtnnews/6063686109/in/photostream/

人魚の夜明け作戦
リビアでは報道のように、情勢が一気に反体制派の首都トリポリ制圧に向けて動き始めています。

反体制派はトリポリの西方50キロのザウィヤや東方160キロのズリテン、南方100キロのガリヤンなど重要都市を確保して、政府側の補給路を断つ包囲網を形成。
19日夜に海路で武器をトリポリ市内に運び込み、20日夜から首都制圧に向けた戦闘を開始しました。
首都攻略作戦は「地中海の人魚」とも言われるトリポリにちなんで「人魚の夜明け作戦」と呼ばれているそうです。

カダフィ大佐は21日未明、国営テレビで放送された音声メッセージで「ネズミ(反体制派)は人民に攻撃され排除された」と主張、反体制派が一時制圧したと伝えられる東部の要衝でも、カダフィ派が反攻しているとの情報が伝えられていました。

首都トリポリ制圧となると、激しい、また、かなりの時間を要する市街戦が想定されていましたが、きょう22日になって報じられているところによれば、首都に進撃した反政府派は大きな抵抗を殆んど受けることなく、一気に首都の大部分を制圧、カダフィ大佐が居住する区域に迫っているようです。
また、大佐の次男で、後継者と見られていたセイフ・アルイスラム容疑者は拘束され、長男のムハンマド氏も投降しと報じられています。

****リビア:反体制派が首都をほぼ制圧 カダフィ大佐息子拘束****
リビアの反体制派は21日夜(日本時間22日未明)首都トリポリに進攻し、中東の衛星放送アルジャジーラによると、市内の大部分を制圧、最高指導者カダフィ大佐の息子2人を拘束した。カダフィ大佐は国営テレビで反撃を呼びかけたが、音声のみで姿は見せず、所在は不明だ。

反体制派を軍事的に支援する北大西洋条約機構(NATO)はカダフィ政権が「崩壊しつつある」と明言。約42年間続いたカダフィ独裁体制は終焉(しゅうえん)を迎えつつある。
カダフィ大佐が退陣すれば、中東全域を覆う民主化政変「アラブの春」で排除された独裁政権はチュニジア、エジプトに次いで3カ所目となる。

反体制派は21日、主にトリポリ西方のザウィヤと海上から首都に進攻。市内の支持者もこれに呼応し攻撃に加わった。西方からの部隊は21日夜に市内中心部の「緑の広場」に到達。カダフィ派と一時戦闘となったが、大きな抵抗はなかったようだ。広場は大佐が2月に「徹底抗戦」を訴える演説をした場所で、大佐の居住区画まで数キロしか離れていない。
海上からの部隊は西部ミスラタから首都東郊のタジュラに上陸し、政府側と交戦した。

政府側は21日夜までに、カダフィ大佐の警護担当部隊が降伏。国際刑事裁判所から人道に関する罪などの容疑で逮捕状が出ている大佐の次男で、後継者と見られていたセイフ・アルイスラム容疑者は拘束され、長男のムハンマド氏も投降した。

これにより、政府側が死守してきたトリポリ中心部はカダフィ大佐の居住区画を除き、大部分が反体制派の支配下に入った模様だ。現地からのテレビ映像では、住民がカダフィ大佐の写真を踏みつけ、解放の喜びから空中に発砲する様子なども見られた。反体制派の拠点である東部ベンガジでも歓喜する市民らであふれた。

一方、カダフィ大佐は国営テレビで音声を流し「抵抗しなければ(欧米)帝国主義勢力の奴隷になる」と繰り返し反撃を訴えた。アルジャジーラによると、アフリカ連合(AU)がアンゴラかジンバブエへの出国を打診中との情報もある。

リビアでは2月中旬に反政府デモが始まった。3月19日にNATO主導の多国籍軍による空爆が開始された後も、カダフィ大佐は徹底抗戦を主張してきたが、リビア騒乱はその始まりから半年で重大局面を迎えた。【8月22日 毎日】
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40年以上の独裁で民心が大きく離反
“カダフィ大佐の所在は不明だが、現地のAFP記者によると22日午前4時(日本時間午後1時)現在、市内のバブ・アジジヤ地区にある大佐の邸宅付近で激しい戦闘が起きている。(中略)反体制派「国民評議会」のマハムード・ジブリル氏は22日早朝、市内の複数箇所で孤立した抵抗が見られると語っている。
カダフィ大佐は投降を拒否し、ラジオを通じて徹底交戦を呼びかけている。”とのことで、何らかの決着がつくのも時間の問題のようです。

首都トリポリの攻略作戦を始めてわずか1日余りでの急展開は、私だけでなく多くのメディアにも意外な展開と受け止められています。

****鉄壁」トリポリあっけなく…市民、部隊を歓迎****
リビアの反体制派が首都トリポリの攻略作戦を始めてわずか1日余り。鉄壁の守りを誇るとされた最高指導者カダフィ氏の牙城は22日、一部を除いてあっけなく反体制派の手に落ちた。
カダフィ氏は本格進攻が始まった後、市民に抗戦を呼びかけたが、呼応する動きはほとんどなく、40年以上の独裁で民心が大きく離れていた実態が浮き彫りになった。

リビアからの報道によると、反体制派民兵が到達したトリポリ中心部「緑の広場」では、多数の市民が反体制派の旗などを掲げて部隊を歓迎し、「アッラー・アクバル(神は偉大なり)」などと気勢を上げた。
反体制派部隊は21日、トリポリ東方や西方から首都に本格的な進軍を始めた。カダフィ氏の邸宅がある首都は、最精鋭部隊や同氏を支持する民兵らが配備されているとされ、激戦も予想された。しかし、多くの部隊は反撃を受けることなく首都に入り、沿道の市民から歓迎を受けたという。【8月22日 読売】
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TV報道で流された、政権側を離脱した兵士が脱ぎ捨てた軍服が道のあちこちに散乱している様子が印象的でした。
カダフィ大佐は、これまでの言動からすれば投降は考えにくいところです。エジプトのムバラク前大統領の裁判を目にしては、ああいう事態だけは何としても避けたいと思うのでは。
そうなると、毎日記事にあるようなアンゴラとかジンバブエへなどへの亡命か、大佐自身がこれまで言ってきたように、自ら銃をとり、リビアの大地を赤く染めるまで戦うか・・・ということになります。

【「リビアの将来はリビア国民の手にある」】
反体制派、及びこれを支援してきた欧米諸国としては、“カダフィ後”をどうするかが、喫緊の課題となってきます。

****リビア:NATO「カダフィ後」にらみ反体制派と連携強化****
リビアの反体制派支援のため約5カ月に及ぶ空爆を続けてきた北大西洋条約機構(NATO)は、首都トリポリの完全制圧を目指して空爆などの側面支援を継続している。一方で、カダフィ体制崩壊後の混乱を最小限に食い止めるため、反体制派との連携強化を図る方針だ。

NATOのラスムセン事務総長は22日、「市民へのすべての暴力を停止すべきだ」と最高指導者カダフィ大佐を支持する残党に戦闘の即時停止を求める声明を発表した。また「政権移行は今、平和的に行われるべきだ」と述べ、新政権樹立を全面的に支援する意向を表明した。

地上軍を派遣できない中、NATOはカダフィ政権軍の抵抗に手を焼き、戦況は長くこう着状態に陥っていた。「リビアの戦闘は何カ月も続き、首都は際限のない市街戦になる」(外交筋)との悲観的な見方が支配的だっただけに、トリポリ制圧の可能性を伝える報道を、NATO側は予想外の朗報と受け止めている。

ラスムセン事務総長は、大佐が敗北を自覚すれば「市民の流血は避けられる」と改めて退陣を要求。NATOは情勢を注視し「市民への脅威があれば行動する」とカダフィ派に警告した。

一方、夏休み中のオバマ米大統領は21日、「カダフィ体制は崩壊の兆候を見せている」との声明を出した。大統領は「もはやリビアを支配していないことを認識すべきだ」とカダフィ大佐に改めて退陣を迫り、「リビアの将来はリビア国民の手にある」として米国が反体制派と緊密に協力することを確約した。

米政府はフェルトマン国務次官補(中東担当)をリビア東部の反体制派の拠点都市ベンガジへ派遣し、現地情勢の把握に全力を挙げている。
国務省のヌーランド報道官は21日、記者団に「国民評議会がリビア社会の全ての階層を支援し、カダフィ後の計画を立てるよう促す」と述べた。【8月22日 毎日】
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中国も反体制派容認を明らかにしています。
****中国外務省、リビア反体制派を事実上容認****
中国外務省の馬朝旭報道局長は22日、リビアの反体制派が首都トリポリをほぼ制圧したことについて、「中国はリビア国民の選択を尊重する。情勢が早期に安定を取り戻し、国民が正常な生活を送れるように希望する」との談話を発表した。

胡錦濤政権は6月ごろからリビアの反体制派との関係強化を進めており、今回の作戦行動も事実上、容認したと言える。
馬局長は「中国は国際社会と共にリビア再建で積極的な役割を果たしたい」と述べ、カダフィ政権崩壊後発足する新体制への支持を示唆した。【8月22日 読売】
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ただ、反体制派は、軍事部門を率いるアブドルファタハ・ユニス最高司令官が7月28日に射殺体で発見された事件に見られるように、“カダフィ政権の元幹部や、政権に弾圧されたイスラム主義者も加わる寄せ集め集団”【8月1日 読売】でもあり、内紛も噂される状況ですので、多くの内戦同様に、戦闘が終わってから、新しい国づくりに向けた、更に厳しい戦いが始まります。
コメント
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