孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  当世若者事情 厳しい競争社会 人生を決める“一発勝負”「高考」 20%超の失業率

2023-07-02 22:51:14 | 中国

(【6月29日 FNNプライムオンライン】 中国のSNSで流行っている、大学を卒業した人たちによる“死んだふり”をした写真の投稿、通称「死亡卒業写真」)

【「厳しい競争社会」の中で「自分の身は自分で守る」自分優先主義】
昔は社会主義の悪弊として、働いても働かなくても結果は同じみたいな悪平等、その結果として、働くモチベーションが低く、生産は非効率に陥る・・・と言われていましたが、現代の「中国の特色ある社会主義」は全く事情が異なります。

資本主義以上の熾烈な競争社会であり、これの一体どこが社会主義なのか?という感も。

****“周りは敵ばかり” 自分を優先する中国社会と中国人の生き方****
渋滞に見る“自分優先主義”
中国・北京で誰もが経験するのが交通渋滞だ。日本と違い交差点の中にまで車両が入るため、ひどい時には縦横斜め全てが行き詰まる無秩序に陥る。まさに「にっちもさっちもいかない」状態で、それが渋滞にさらに拍車をかける悪循環だ。

なぜ交差点にまで車を入れるのかを友人に聞いたところ「行けるときに行っておかないと損をするからだ」という。確かに中国の交差点は、方向が同じだからといって信号機の色が同じとは限らない。赤と青が交互に来る日本と違うので、信号待ちの時間は日本より長いところが多い。礼儀正しく待つよりも「行けるところまで行く」の気持ちはわからないでもない。

信号待ちに限らず、北京の交通事情は先に入った方が優先で、車両同士が譲り合う光景はほとんど見ない。感覚的には、ほかの車両を優先させていると自分はいつまでたっても前に進めない。つまり自分を優先させることが求められる。

交通事情が全てとは言わないが、確かに中国は「厳しい競争社会」(中国筋)である。政策が突然変わることもあれば、コロナ禍でのロックダウンのように自由が制限されることもある。仕事や生活環境は簡単に影響を受けるし、補償金などの話はほとんど聞かず、あてにする人も少ない。「自分の身は自分で守る」が基本なのである。

上海で焼き鳥屋を営む友人はコロナ禍の際、「いつ何があるかわからないので休めない」とこぼしていた。一概には比べられないが、中国にいると日本は人に優しい社会だとつくづく思う。

それを踏まえれば、中国の貧富の格差は当然の結果とも言える。14億人の競争は熾烈だし、急激な環境の変化に備え、自分の利益を追求、確保するのは当たり前だからだ。金持ちにはより金が集まり、貧しい人は浮上する余地がさらになくなる。問題は貧富の格差だけでなく、「格差が固定化していること」だと以前から言われている。

また、政治に参画できないことは「公」の意識を希薄にさせる。寄付の文化はほとんどない。高齢者や子供に優しい習慣があることに少しの安心を覚えるが、家族や親しい友人などの「味方」以外は、基本的に「敵」だという考え方なのだろう。

中国の友人に「残りものには福がある」という日本のことわざを教えたところ、「中国では残りものを待っても意味がない。なくなるだけだ」と言われた。自分勝手という印象もある中国人だが、言い方を変えれば生き残るために必死なのだろう。(後略)【6月11日 FNNプライムオンライン】
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結局のところ、「中国の特色ある社会主義」というのは、社会主義を標榜しながらも実際は資本主義を行う経済制度であり、 政治面では中国共産党の一党独裁を維持しながら、経済面では中国政府が定めている規制の中で市場経済を実行している制度です。

そこでの「厳しい競争社会」を生き抜くルールは「自分の身は自分で守る」ということであり、周りは敵ばかりという“自分優先主義”のようです。

(もちろん、上記のような話は中国社会の特徴を表す一面であり、全部が全部そういうことだと言うつもりもありませんが)

【人生を決める“一発勝負”「高考」狂騒曲】
中国の若者にとって「厳しい競争社会」を生き抜くうえで必要になるのが学歴であり、人生を決める“一発勝負”ともなるのが、科挙の伝統を引き継ぐような「高考」です。今年は6月7日から始まりました。

****「きょうは人生の分かれ道」受験者は過去最多“約1290万人” 中国の大学入試「高考」始まる ゼロコロナ政策終了後 初の実施****
厳しい学歴社会と言われる中国で、全国統一大学入試「高考」が始まりました。ゼロコロナ政策終了後、初となる実施です。(中略)

今年の高考の受験者数は過去最多のおよそ1290万人。「ゼロコロナ政策」の終了により、北京の会場では、▼マスクの着用義務はなくなり、▼48時間以内のPCR検査の陰性証明も不要になりました。(中略)

保護者 「子どもは十何年も勉強して大人になった。きょうは人生の分かれ道です」

縁起物のチャイナドレス姿で見送る母親も。中国で「人生を決める」とも言われる「高考」は、最長で10日まで続きます。【6月7日 TBS NEWS DIG】
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当然のように過熱する受験戦争、資力のある家庭が有利となる教育格差・・・・そうした現状を是正するため、中国政府は学習塾などを禁止する大胆な施策を実施していますが、「上に政策あれば下に対策あり」という中国社会のことですから・・・

****勉強は1日16〜20時間、書店員がやたらと親切な“闇学習塾”も出現 「一発で人生を変えられる唯一のチャンス」中国の大学受験戦争****
(中略)中国では当たり前でも、日本人からすると信じられない光景がある。そのひとつが「大学受験」。

中国の受験名物である、「赤いチャイナドレス」。漢字で書くと「旗袍(チーパオ:旗を掲げて勝利する)」を意味し、おめでたい色である赤のドレスを身にまとって、げんを担ぐ。最近では、教師や父親もチャイナドレスを着るという。「旗開得勝(勝って旗を掲げる)」を意味する中国語のTシャツも人気だ。

また警察は、受験票を忘れたり、遅刻しそうだったりする生徒を、パトカーや白バイで送り届けることも。また入試が近づくと、カラオケ店や飲食店が大きな音を出さないよう、取り締まりも行われる。

受験生はこの時期、1日16時間から20時間勉強するため、集中できるようにするための施策だ。受験科目は国文や数学、英語など4科目あるが、中でも大変なのが5000年にわたる「歴史」だという。

中国に詳しいジャーナリストの高口康太氏は、大学受験が「一発で人生を変えられる唯一のチャンス」だと指摘する。

かつて中国には、世界最古の官僚試験「科挙」があった。科挙に合格すると「一族を三世代にわたって食わせられるような権力」を得られた時代からの伝統が、受験戦争の背景にあるという。

また、激しい経済成長のなか、貧しい人でも「自分はともかく、子どもたちは出世できるのではないか」との見込みもあると、指摘する。

試験結果によって、「一本大学」「二本大学」「三本大学(短大・専門学校)」のレベルに分けられ、公務員や有名企業といった就職の道筋も定められる。

こうした学歴システムは、格差のない共産主義と矛盾しているようにも思える。事実、過熱する受験戦争の抑制と、受験勉強の格差を是正するため、学習塾などが禁止されたものの——。

「たとえば、学校の参考書を売っている『書店』の名目だが、店員がやたらと親切で、買いに来た学生が質問すると、なんでも教えてくれる。超高学歴で英語も数学も教えてくれるメイドさんもいる」(高口氏)

では、そのような教育システムに弊害はないのか。高口氏は、「良い成績をとって良い大学を出なくても、いろいろな仕事はできる。今の中国の価値観だと軸が1つしかなく、そこから落ちこぼれた時にリカバリーの手段が少ない。エリートを輩出する仕組みとしては優れているが、想像力を発揮して、今までにないイノベーション、ビジネスを起こすのは、必ずしも『詰め込み教育』による高学歴人材とは限らない。社会の多様性がなくなってしまう」と指摘した。(『ABEMA的ニュースショー』より)【7月1日 ABEMA TIMES】
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【卒業しても20%を超える失業率】
そうした競争を経て大学を卒業しても、更なる試練が。

毎年大量の大学卒業生が労働市場に参入しますが、もはや「大学を卒業すれば、それにふさわしい職がある」といった時代ではなくなっており、若者の失業率は20%を超える状況。失業を避けて大学院に進む者も多く、そうしたことを考慮すると、実際の就職難は「20%」という数字以上とも推測されています。

働く場が絶対的に不足しているというより、大学卒業生が希望するような職種の新規雇用が少ないという“雇用ミスマッチ”が指摘されています。

****中国の大卒者は就職難 雇用ミスマッチ****
景気回復にもかかわらず若年層の失業率が上昇

中国では若年層の失業率の急上昇に歯止めがかからず、政府にとって大きな頭痛の種となっている。この問題には雇用のミスマッチが関係しており、政府が打ち出す解決策が何年も効果を発揮しない可能性もある、と多くのエコノミストが話している。

16~24歳の若者の失業率は4月に20.4%と過去最高を更新。数カ月前から大幅に上昇し、新型コロナウイルス流行前の水準をはるかに上回っている。2019年の失業率は概して13%以下にとどまっていた。

中国では4月の都市部全般の失業率が5.2%と前年同月の6.1%を下回っており、これが若者の失業率の高さを一層際立たせている。

今夏には過去最高となる1160万人の大学生が卒業する見込みであることから、若者の雇用市場は一段と悪化すると一部のエコノミストはみている。

エコノミストによると、主な問題点は中国が高賃金・高技能職を十分創出できていないことにある。同国では高学歴の若者が増えており、その多くは前世代の人たちよりも仕事に高い期待を抱いている。

多くの若者は、妥協して賃金が低めの仕事に就くことよりも、さらなるチャンスが訪れる可能性に賭け、就職を先延ばしにすることを選んでいる。

クレディ・スイス・グループの中国担当チーフエコノミスト、デービッド・ワン氏は「中国の若者の失業率の高さは一過性のものではなく、構造的なものだ」と指摘。「若者が訓練を受けているスキルと既存の雇用が必要とするスキルがマッチしていない」と述べた。(中略)

エコノミストの中には、この問題は一過性のものであり、中国経済全般の回復が進むにつれ、若者の雇用は増えるとみている人たちもいる。(中略)

しかし、この問題は中国経済の不均衡を反映していると指摘する人たちもいる。それが中国の若者がやりたい仕事を見つけるのを難しくしており、問題を長引かせる可能性が高いという。

中国経済全体に占めるサービス業の割合は高まっている。しかし、過去10年に創出されたサービス職の多くは配達員やレストランのウエーターなど、大卒者にとって必ずしも魅力的とは言えない低位職だ。調査会社TSロンバードの中国・アジア調査責任者ローリー・グリーン氏はそう話す。

中国では過去10年間で高等教育進学者が大幅に増加した。過去3年間に労働市場に加わった大卒者は2800万人を超え、都市部の新たな労働供給の約3分の2を占める。

求人サイトの智聯招聘の調査によると、今夏に卒業する大学生の約30%がインターネットや通信、教育業界での就職を希望している。しかし、それらの業界の多くがここ数年の規制強化で混乱し、雇用主は増員に慎重になっている。

また、求職者が増えているため、雇用主が採用のハードルを上げている場合もある。
フ・ツーハオさんは、北京で体育教師を募集しているほぼ全ての学校に履歴書を送ったが、全滅だったと話す。

「学士号しか持っていないため、断られた。最近の学校は、たとえ小学校であっても、体育教師に修士号を求めている」。瀋陽体育学院でスポーツトレーニングを専攻するフさんはこう話し、採用されるまで頑張ると述べた。

マッコーリー・グループの中国担当チーフエコノミスト、ラリー・フ氏は、中国の平均的な家庭が豊かになるにつれ、親世代と比べて求職活動に長い時間をかける余裕のある若者が増えていると話す。

多くの若者が、より高度な学位を得るために学校に戻っている。今年、大学院の募集枠120万人に対し、入学試験を受けた学部生は470万人と過去最高に達した。国営メディアの報道によると、2021年には上海の大学の3分の1近くで、既に大学院生の数が学部生の数を上回っていた。

米ノースウェスタン大学のナンシー・チエン教授(経済学)によると、就職を遅らせたり、求職活動を断念したりする若者は、公式統計では求職者としてカウントされない。カウントされれば、実際の失業率はもっと高くなるはずだという。

中国の丁薛祥副首相は今月開いた政府当局者との電話会議で、国有企業に今年、卒業生の採用を拡大させるよう命じた。同国はそうした措置などにより、2023年に約1200万人の新規雇用を創出する目標を掲げている。

4月には広東省政府が、今後3年間で30万人の卒業生を地方に送り込み、スタートアップ企業の育成支援やその他の仕事に就いてもらう計画を打ち出した。

当局はまた、高学歴の若者に仕事に対する期待値を下げさせ、自分の学歴に見合わないと見なしている仕事にも目を向けさせようとしている。

国営メディアの報道では、20世紀初頭の中国の小説に登場する、プライドが高過ぎて仕事に就くことも労働者と交流することもできなかった貧乏な学者を教訓として取り上げている。(後略)【5月25日 WSJ】
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20%超の失業率という状況のため、軍に入隊を希望する大学卒業生も増えているとか。

****中国で大学生6000人が軍への入隊申し込む 志願増加の背景には20%超の「失業率」****
中国で今、大学生の就職先として「軍隊」が注目されています。背景に何があるのでしょうか。

6000人が大学生が軍への入隊を志願
「張美瀚です。清華大学から来ました」
これは中国軍が作成した動画。習近平国家主席の母校で中国屈指の名門、清華大学を卒業したという兵士が訴えるのは。「皆さん、軍に参加して、建軍100年の目標に青年の力で貢献してほしい」

今、中国では軍への入隊を志願する大学生が増えています。首都・北京市ではインターネットで入隊を申し込んだ7000人のうち6000人が大学生でした。

地方の大学でも地元政府がイベントを開催。中国軍への入隊を呼びかけたところ、多くの大学生が集まりました。その背景にあるのが。

中国軍は待遇を改善 就職難の大学生と“思惑一致”
大学生 「(Q.就職状況について)あまり良くないです。卒業後すぐに就職できるのは、優秀な人だけ」
大学生の就職難です。中国の都市部に住む16歳から24歳の失業率は、新型コロナの感染拡大前の2019年の5月には10%前後でしたが、今年はおよそ2倍、20.8%に増えています。(中略)

危険が伴うとして、かつては避けられていた若者の軍への入隊。給与の引き上げなど待遇改善も進む中、就職難の大学生と人材確保を進めたい中国軍の思惑が一致した状況が生まれています。【6月27日 TBA NEWS DIG】
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一方で、中国のSNSでは大学を卒業した人たちによる“死んだふり”をした写真の投稿、通称「死亡卒業写真」が流行っているとか。

****中国・死んだふりをする「死亡卒業写真」大学卒業生が相次ぎ投稿 背景には“史上最悪の就職難”****
(中略)投稿された写真を見ると、2人の人物が階段の手すり部分に力なく もたれかかる写真とともに、「学校を離れたら死んだ方がいい」という一文が。

別の投稿では、木に力なくもたれかかる3人の姿や、「卒業したら失業するよ」という言葉を添えて投稿する人も。
なぜ、こうした写真の投稿が相次いでいるのでしょうか? そのヒントは、6月に北京で行われた就活フェアにありました。

就職フェア参加者:私の知っているクラスメートで、内定をもらった人はほとんどいません。
実は今、中国の大学生たちは史上最悪の就職難に直面しているのです。

中国メディアによると、5月の16〜24歳の失業率は20.8%。5人に1人が職に就けない状況にあるのです。
さらに、2023年は過去最高となる1158万人の大学の卒業生が、就職戦線になだれ込む見込みだといいます。

中国のこうした現状について、拓殖大学海外事情研究所の富坂聰教授は、理由のひとつに「大卒者が増えすぎた」ことがあるといいます。

富坂聰 教授: 大学が増えすぎて、大卒者が増えすぎた。それに反して大卒に見合った仕事が少ないんです。こういう慢性的な問題がある中で、さらにゼロコロナ政策によるダメージですべての経済が止まったので、全般的な雇用の問題を悪くしたと。

“ゼロコロナ政策”による経済活動の停滞と大学の卒業生の増加が相まって、狭まってしまった就職の門。今後改善の兆しは見えてくるのでしょうか。(めざまし8「NewsTag」より 6月26日放送)【6月29日 FNNプライムオンライン】
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激しすぎる競争に疲れ、競争に参加するのを拒否する・・・そんな心情でしょうか。
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