(ウクライナ東部ハリコフ郊外の地面に刺さった、空になったクラスター弾の容器=2022年6月(ロイター=共同)【7月6日 共同】)
【「ハリウッド映画とは違う」反転攻勢】
日々報じられているウクライナの戦況については、ウクライナ軍の反転攻勢が行われているものの、ロシア軍の抵抗も厳しく、ゼレンスキー大統領が「ハリウッド映画とは違う」と言うような状況です。
****ウクライナ軍、東部でロ軍の攻撃に直面 南部に進展=国防次官****
ウクライナのマリャル国防次官は2日、ウクライナ軍が前線の東部地域でロシア軍の攻撃に抵抗し、北東部では厳しい戦況になっているが、東部ドネツク州の激戦地バフムトの周辺や南部では、攻勢が進展していると述べた。
ロシア側は前線地域について、バフムトを取り囲む集落やそれより南部の地域でウクライナの攻撃を撃退し、北東部でウクライナ軍を抑え込むのに成功したと報告していた。
ロイターは、どちらの報告も確認できていない。(後略)【7月3日 ロイター】
ロシア側は前線地域について、バフムトを取り囲む集落やそれより南部の地域でウクライナの攻撃を撃退し、北東部でウクライナ軍を抑え込むのに成功したと報告していた。
ロイターは、どちらの報告も確認できていない。(後略)【7月3日 ロイター】
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ロシア軍については、ひと頃言われていた装備不足や士気の低さに関する記事を最近はほとんど目にしなくなりましたので、それなりに防御に向けて力が入っているのでしょう。
そうなると、準備を整え待ち構えるロシア軍の防衛線をウクライナ軍が突破し一気に進攻というのは難しくなります。
****ウクライナ反攻作戦、遅い進度 強固な防御線、弱点探る 侵略500日へ****
ロシアによるウクライナ侵略戦争は8日で500日目を迎える。ウクライナ軍は6月上旬、国土奪還を目指す反攻作戦を本格的に始めたが、露軍の強固な防御線や航空戦力に阻まれ、期待されたペースでは進めていない。
他方のロシア側では、民間軍事会社「ワグネル」のトップ、プリゴジン氏が6月下旬に起こした武装反乱の余波が注視される。
ウクライナは、東部国境から南部クリミア半島に至る露占領地を分断し、クリミアを孤立させる戦略を描く。このため南部戦線を特に重視し、要衝メリトポリの奪還やアゾフ海への進出を狙っているとされる。
ただ、約1カ月間の反攻で解放できた国土は南部戦線で約160平方キロ。これは東京23区の約4分の1にあたるが、国土の約2割を占める全占領地の奪還にはほど遠い。ウクライナ高官は、東部戦線も含めて露軍の補給拠点をたたきつつ、防御線の弱点を探っている状況だとしている。
米シンクタンクの戦争研究所はウクライナ軍の進軍を阻んでいるものとして、①塹壕(ざんごう)、地雷原などで固められた防御線②対戦車ヘリなどの航空戦力③無人機やミサイル攻撃を妨害する電子戦−を挙げている。【7月7日 産経】
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「ウクライナは必要な軍事力が整わないまま、反転攻勢を開始した」(元北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍副最高司令官のリチャード・シレフ氏)【7月4日 読売】との指摘も。
ウクライナ・ゼレンスキー大統領としては、欧米諸国の“支援疲れ”が表面化しないように、何としても「成果」を早く示す必要に迫られ、反転攻勢をせかされていた面があります。
一方で、欧米諸国からの武器支援が思うように進んでいないことへの“恨み”も。
****反転攻勢「早く始めたかった」=武器提供の遅れに苦言―ウクライナ大統領*****
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアの侵攻に対する反転攻勢について「もっと早い時期に開始したかった」と述べ、欧米諸国の武器供与が遅れたために苦戦を余儀なくされているとの見解を示した。5日放映された米CNNテレビのインタビューで語った。
オデッサで取材に応じたゼレンスキー氏は、複数の地域でウクライナ軍が「必要な武器」を入手できないため、攻撃開始を「考えることすらできずにいる」と強調した。
また、米国の支援に謝意を示しながらも、欧米の指導者に「もっと早期の反攻開始を望んでおり、そのための武器と物資が必要だと伝えていた」と指摘。
「開始が遅れれば、敵(ロシア軍)に地雷敷設や守備態勢構築の時間を与えると、誰もが分かっている」と訴え、ロシア側が防御を固めたことで、ウクライナの進軍ペースが落ちたとの認識を示した。【7月7日 時事】
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【勝つためにはクラスター爆弾、劣化ウラン弾、更に対人地雷も】
戦局を動かずためには、一にも二にも「武器」がもっと必要、もっと強力な武器が必要・・・ということで、ウクライナや支援するアメリカもなりふり構わない状況にも。
*****米、ウクライナにクラスター弾供与を計画 7日発表も=高官****
米国が殺傷力の高いクラスター弾をウクライナに供与する計画と、米高官が6日明らかにした。ウクライナ軍の反転攻勢後押しが狙い。しかし、クラスター弾が無差別に人を殺傷する兵器であることから、人権団体からは反対の声が上がっている。
米政府高官3人によると、クラスター弾を含む軍事支援パッケージが7日にも発表される見通し。
ホワイトハウスは、ウクライナへのクラスター弾供与を「積極的に検討している」としつつも、現時点で発表することはないとした。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは6日公表の報告書で、ウクライナ国内でロシア、ウクライナ双方の軍がクラスター爆弾を使用し、民間人の死者を出していると指摘。両国に使用の中止を訴え、米国にはクラスター爆弾を供与しないよう求めた。
クラスター弾は通常、1発の爆弾から多数の子爆弾をまき散らすため、広い範囲で無差別に殺傷する可能性があり、民間人を危険にさらす。また、不発弾は紛争終結後も何年にもわたり人々を脅かす。
国際条約で製造や使用、保有が禁止され、約120カ国で採択されているが、米、ロシア、ウクライナは署名してない。
政府高官らによると、発表予定の支援パッケージは最大8億ドル規模で、高機動ロケット砲システム「ハイマース」の弾薬、歩兵戦闘車「ブラッドレー」、装甲車「ストライカー」なども含まれる見通し。
最終決定されておらず、変更される可能性もあるという。緊急時に大統領が議会の承認なしに備蓄から物資などを移転できる大統領引き出し権限(PDA)を活用する。
米国による対ウクライナ軍事支援策の承認はロシアの侵攻開始以降42件目となり、総額は400億ドルを超える。【7月7日 ロイター】
米政府高官3人によると、クラスター弾を含む軍事支援パッケージが7日にも発表される見通し。
ホワイトハウスは、ウクライナへのクラスター弾供与を「積極的に検討している」としつつも、現時点で発表することはないとした。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは6日公表の報告書で、ウクライナ国内でロシア、ウクライナ双方の軍がクラスター爆弾を使用し、民間人の死者を出していると指摘。両国に使用の中止を訴え、米国にはクラスター爆弾を供与しないよう求めた。
クラスター弾は通常、1発の爆弾から多数の子爆弾をまき散らすため、広い範囲で無差別に殺傷する可能性があり、民間人を危険にさらす。また、不発弾は紛争終結後も何年にもわたり人々を脅かす。
国際条約で製造や使用、保有が禁止され、約120カ国で採択されているが、米、ロシア、ウクライナは署名してない。
政府高官らによると、発表予定の支援パッケージは最大8億ドル規模で、高機動ロケット砲システム「ハイマース」の弾薬、歩兵戦闘車「ブラッドレー」、装甲車「ストライカー」なども含まれる見通し。
最終決定されておらず、変更される可能性もあるという。緊急時に大統領が議会の承認なしに備蓄から物資などを移転できる大統領引き出し権限(PDA)を活用する。
米国による対ウクライナ軍事支援策の承認はロシアの侵攻開始以降42件目となり、総額は400億ドルを超える。【7月7日 ロイター】
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上記記事にもあるように、クラスター爆弾についてはロシア軍は昨年2月の侵攻当初から多用し、ウクライナ軍も使用しているとされています。
「ロシア軍の塹壕に対して特に有効だ」(米国防総省のクーパー副次官補)【7月6日 共同】とのことのようです。
開発、製造、貯蔵などを全面禁止したオスロ条約のウクライナ・アメリカ・ロシアは加盟していないということもありますが、人道上の問題云々とり、とにかく強力な武器が必要ということでしょう。
使用について賛否がある武器としては対戦車貫通力が大きい劣化ウラン弾も。
****米、ウクライナに劣化ウラン弾提供へ 戦車での使用想定 WSJ報道****
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは13日、複数の米政府関係者の話として、米国がウクライナに対して劣化ウラン弾を供与する見通しだと報じた。秋までに引き渡される米軍の主力戦車「M1エーブラムス」による使用が想定されている。
劣化ウラン弾は貫通力は強いが、ウランの微粒子が人体に入り込んだ場合は「体内被ばく」を引き起こす危険性も指摘されている。
劣化ウラン弾は、核兵器製造や原子力発電のためのウラン濃縮過程で生じる廃棄物「劣化ウラン」を使った砲弾。鉄や鉛の弾頭に比べて貫通力が強く、遠距離からでもロシア軍の戦車の厚い正面の装甲を貫通できるという。
米政府は今年1月に31両のM1エーブラムスを提供すると決定。現在はウクライナ兵がドイツで操縦訓練を受けている。国防総省はM1エーブラムスの装備として劣化ウラン弾の供与を要請しており、米政府高官は承認の手続きに大きな障壁はないと見ているという。
劣化ウラン弾を巡っては、英国が3月にウクライナに提供した主力戦車「チャレンジャー2」の装備に含まれていることを発表した。ロシア側は「核の成分を備えた兵器」の提供と反発している。【6月14日 毎日】
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更に、対人地雷も。こちらはウクライナも禁止条約を批准していますが・・・
****ウクライナの対人地雷使用巡り新たな証拠、国際人権団体が報告****
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は30日、ウクライナ軍が2022年に侵攻したロシア軍に対し、禁止されている対人地雷を使用した新たな証拠を発見したと発表した。
HRWはウクライナ政府に対し、対人地雷を使用しないという約束や軍の使用疑惑を調査し責任を追及するという方針を履行するよう求めた。
在ワシントンのウクライナ大使館は現時点でロイターのコメント要請に応じていない。
ウクライナは05年、対人地雷を禁止し在庫破棄を義務付ける1997年の国際条約を批准した。【6月30日 ロイター】
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戦争は勝ってなんぼのもの、クラスター爆弾だろうが、劣化ウラン弾だろうが、対人地雷だろうが・・・といったところでしょう。それが戦争の現実です。賛否は別にして。
【捕虜交換の現実】
そうした厳しい戦争の中にあっても捕虜交換は行われています。
****ロシアとウクライナが捕虜交換、それぞれ45人解放****
ウクライナとロシアは6日、45人ずつの捕虜を交換したと発表した。
ロシア通信(RIA)によると、ロシア国防省は45人の軍関係者がウクライナから帰国したと明らかにした。
一方、ウクライナ大統領府のイエルマク長官は、45人の軍関係者と2人の民間人が帰国したとテレグラムに投稿、「一人一人が英雄だ」と称賛した。
ウクライナ議会の人権オンブズマン、ドミトロ・ルビネツィ氏は、解放された捕虜の大半が重傷で、全員がリハビリ治療を受けると説明した。【7月7日 ロイター】
ロシア通信(RIA)によると、ロシア国防省は45人の軍関係者がウクライナから帰国したと明らかにした。
一方、ウクライナ大統領府のイエルマク長官は、45人の軍関係者と2人の民間人が帰国したとテレグラムに投稿、「一人一人が英雄だ」と称賛した。
ウクライナ議会の人権オンブズマン、ドミトロ・ルビネツィ氏は、解放された捕虜の大半が重傷で、全員がリハビリ治療を受けると説明した。【7月7日 ロイター】
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最初、人道的配慮か・・・と思ったのですが、“解放された捕虜の大半が重傷”ということで、要するに「自軍兵士の治療で手一杯なのに、敵兵士の治療などできるか!」という話でしょう。
放置して死なせると国際批判を浴びて面倒、帰してしまうのが一番・・・対人地雷同様に相手に治療の負荷をかけることも出来るし・・・という、これまた戦争の現実の一面のように思えます。