孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ASEAN外相会議  課題のミャンマー問題では前進なし 米・中・ロの駆け引きの場にも

2023-07-13 23:25:46 | 東南アジア

(【7月11日 NHK】 中央女性が議長国インドネシアのルトノ外相)

【ASEAN外相会議 ミャンマー問題進展なし 足並みの乱れも】
リトアニア・ビリニュスで開かれていた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は12日、2日間の日程を終え閉幕しました。

直前のスウェーデン・トルコの会談で、トルコがこれまでの姿勢を転じて、スウェーデンのNATO加盟に同意。
エルドアン大統領としては、アメリカからのF16供与など「実」を獲得し、そろそろ「潮時」と判断下したのでしょう。

ただ、これまでプーチン大統領に実質的に寄り添う姿勢を見せていたトルコ・エルドアン大統領が、ロシアが強く反対するスウェーデンNATO加盟を認めたことで、ロシア・トルコの今後の関係が注目されます。

ウクライナのNATO加盟に関しては、ゼレンスキー大統領が求めていたNATO加盟への道筋は示されなかったものの、G7各国がウクライナへの長期的な安全保障を提供するための国際的な枠組みが決定されました。

バイデン大統領がウクライナのNATO加盟を明確にすることを拒んでいるのは、ロシアとの戦争に巻き込まれたくない・・・という本音でしょう。これはアメリカ国内では与野党に共通する思いでもあります。

ただ、その「本音」は、台湾有事で中国との戦争が問題になったときも同様かも・・・という憶測にもつながります。

NATOの東京事務所設置に関しては、フランス・マクロン大統領の反対を覆すことはできず、合意されませんでした。

いろいろと注目された国際会議でしたが、同時期、インドネシアの首都ジャカルタで東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相会議が開催されました。

ミャンマー情勢を中心に議論されましたが、“予想されたように”進展はありませんでした。

****ミャンマー問題進展なし=ASEAN外相会議2日目―インドネシア****
東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議は12日、2日目の討議を行った。クーデターで実権を握った国軍による市民弾圧が常態化しているミャンマー情勢を中心に議論したが、事態打開につながる進展はなかった。

インドネシアのルトノ外相は会議冒頭、ミャンマー情勢について「暴力の即時停止などを求めた5項目の合意事項の履行が焦点であることに変わりはない」と強調。インドネシアがASEAN議長国となった1月以降、ミャンマーの利害関係者110人以上と接触してきたとも説明した。

会議では、ミャンマー国軍と民主派の対話を促すべき時に来ているとして、その進め方などについて議論が交わされた。会議終了後、ルトノ氏は「国内対話は次のステップ。(うまくいけば)政治的な問題を解決し、ミャンマーに和平をもたらすことができる」と訴えた。

加盟国はミャンマーへの人道支援を継続することを確認。ルトノ氏は「誰も取り残してはならない」と述べた。【7月12日 時事】
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議長国インドネシアのルトノ外相は「結束」を確認したとのことですが、裏を返せば、今のASEANのミャンマーへの対応は「結束」が乱れているということでしょう。

****ASEAN外相、ミャンマー問題で結束確認 和平計画を重視****
東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国インドネシアのルトノ外相は12日、ジャカルタで開かれている外相会議で、国軍のクーデター以降、不安定な情勢が続くミャンマーについて、打開に向けて地域が結束すべきとの認識を共有したと明らかにした。

会議では、ミャンマーの和平に向けた5項目の合意事項について協議した。ルトノ外相は、ミャンマーを除く全加盟国がこの問題での結束を強調したとした上で「暴力の停止がなければ、対話の開始や援助の提供に必要な環境は決して整わない」と述べた。

ルトノ外相の発言の背景には、タイが先月、ミャンマー情勢を協議する非公式会合を開催したことがある。この会合には、ASEANのハイレベル会合から排除されているミャンマーが出席する一方で、ASEAN加盟国の大半が参加を見送った。

タイのドーン外相は12日、ミャンマーで収監中の民主化指導者アウンサンスーチー氏と面会したと明らかにした。スーチー氏の外国政府要人との面会が認められたのは、同氏が2021年に軍政に拘束されてから初めて。

ルトノ外相は、ASEANは合意された和平計画に注力すべきとし、「他のいかなる取り組みも、5項目合意の履行を支援するものでなければならない」と述べた。

14日には東アジアサミット(EAS)外相会議と、米ロ中などが参加するASEAN地域フォーラム(ARF)の会議が開かれる。【7月12日 ロイター】
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ミャンマー軍政に宥和的姿勢で、インドネシア・マレーシアなどとの足並みが揃わないタイのドーン外相は、スー・チー氏との面会を明らかにしています。

****クーデターから2年以上…ミャンマー 見えない混乱の収束 タイの外相「スー・チー氏は健康です」面会明かす****
(中略)ASEAN外相会議で重要テーマとして討議された「ミャンマー問題」。軍政側と2年前に合意した和平計画はほとんど履行されず、打開策が見えない状況です。

こうした中、タイの外相からこんな発言が…
タイ ドーン外相 「スー・チー氏は健康です。みんな彼女のことを心配しています」

ドーン外相は9日にミャンマーを訪問し、軍に拘束された民主化の指導者、アウン・サン・スー・チー氏と面会したと明かしました。

クーデター以降、外国政府の要人が接触したのは初めてで、ドーン氏は「ミャンマーの政情安定に向けて、タイが軍と対話することにスー・チー氏が賛成した」と強調しています。

タイは軍政側と融和関係にあり、対話を通して問題解決を目指す姿勢を示していますが、一部の加盟国はこれに反発し、一枚岩になりきれていません。

ミャンマー情勢をめぐっては、タイだけでなく中国も軍政側への関与を強めていて、5月には秦剛外相が軍トップと会談。巨大経済圏構想の「一帯一路」を進める中国にとってミャンマーは戦略的な重要拠点で、混乱が長引けば中国の利益を損なう懸念があるとみられます。

一方、アメリカは経済制裁の動きを強めるものの、軍が中国に接近することへの警戒感から関与は消極的だとの指摘もあります。

ある民主派の幹部は取材に対し、「大国の利害関係にミャンマーは振り回され、その間にも多くの命が失われている」として、早期の打開策を求めています。【7月13日 TBS NEWS DIG】
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スー・チー氏が「対話」に賛成したとのことですが、それはドーン外相の言うように「タイが軍と対話することにスー・チー氏が賛成した」ということでしょうか? ミャンマー国軍と民主派の「対話」という意味合いだったのではという疑問も。 秘密裏に行われた面会ですので、はっきりしたことはわかりません。

【ASEANを舞台に米中ロの駆け引き】
ジャカルタでは外相会議に引き続き、関連会議が開催されるということで、アメリカ・中国・ロシアの活発なASEAN取り込み外交が展開されています。

****ASEAN外相会議、インドネシアで始まる 米中露同席の会合も予定****
インドネシアでは、中国やロシアも出席するASEAN(=東南アジア諸国連合)の外相会議が始まりました。ウクライナや北朝鮮問題をめぐって議論が本格化するとみられます。中継です。

一連の会議では、アメリカやロシア、中国が同席する会合も予定されています。ASEANを舞台に早速、駆け引きが始まっています。

12日、ロシアのラブロフ外相と中国外交トップの王毅政治局員は、ASEAN議長国インドネシアのルトノ外相と会談しました。西側諸国との対立が深まるロシアと中国は、ASEANを取り込むことで、外交上の孤立を避ける狙いがあるものとみられます。

ブリンケン国務長官と王毅政治局員が、13日に会談するとの情報も入ってきました。14日には米中露の3者が同席する東アジアサミット外相会議もあり、ウクライナや台湾の問題をめぐって激しい応酬も予想されます。

一方、日本からは林外相が出席しています。北朝鮮が参加する会合もあり、ミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮に対し、各国がどう言及するかも注目されます。【7月13日 日テレNEWS】
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中国・ロシアとインドネシア外相の会談については、以下のようにも。

****中国・ロシアの外交トップがインドネシア外相と会談 ASEANの取り込み図り、外交的孤立を回避する狙いか****
インドネシアでASEAN=東南アジア諸国連合の関連会議に出席する中国とロシアの外交トップは、議長国を務めるインドネシアの外相と会談しました。欧米との対立が深まる中、東南アジア諸国の取り込みを図る狙いがあるとみられます。

インドネシアで13日から開かれるASEAN関連会議には、日本の林外務大臣やアメリカのブリンケン国務長官のほか、ロシアのラブロフ外相、中国の王毅政治局員らも出席します。

前日の12日には、ラブロフ氏、王毅氏と議長国インドネシアのルトノ外相が会談。

インドネシア外務省によると、ルトノ外相は会談で「より多くの対話と協力が必要で、世界の平和と安定のためにともにできることを議論したい」と呼びかけたということです。

中国やロシアとしては、ウクライナ情勢や台湾問題などをめぐって欧米との対立が深まる中、ASEANの取り込みを図ることで外交的孤立を回避したい狙いもあるとみられます。

また、中国外務省の発表によると、会談で王毅氏は「世界経済の回復が遅く、地政学的な緊張が激しさを増す中、平和と協力を求める流れは止まらない」としたうえで、「中国、ロシア、インドネシアは多国間主義と地域の平和と安定のプロセスを促進するのに役立つ交流を行う」とASEANで存在感を示す考えを強調しました。

会談では食料、エネルギー安全保障についても意見交換したということです。【7月12日 TBS NEWS DIG】
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「孤立」ということではウクライナ戦争で喫緊の課題となっているロシア・ラブロフ外相はASEAN各国外相とも会談。将来的なウクライナとの停戦協議では、どれだけの国際支援が得られるかが重要なポイントとなります。

****ロシア、ASEANと関係強調 停戦交渉にらみ米欧に対抗****
ウクライナ侵攻を続けるロシアのラブロフ外相はインドネシアのジャカルタで13日、東南アジア諸国連合(ASEAN)と外相会議を開いた。ウクライナとの将来的な停戦交渉をにらみ、米欧の外交圧力に対抗してASEANとの関係維持を強調。関係が戦略的パートナーシップに格上げされて5周年に当たることから、共同声明も出す見通しだ。

ASEANは昨年2月の侵攻後もロシアと対話してきた。今年の議長国インドネシアは停戦仲介に前向きで、6月に現在の戦線での即時停戦や非武装地帯の設置、国連主導の停戦監視などを独自に提案した。ウクライナはロシア寄りの提案だとして一蹴している。【7月13日 共同】
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一方、アメリカはミャンマー軍事政権への圧力を強める構えです。

****米国務長官、ASEAN外相会議出席へ ミャンマーに圧力強化****
米国務省は7日、ブリンケン国務長官が9─15日に英国、リトアニア、インドネシアを歴訪すると発表した。13日からインドネシアの首都ジャカルタで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議では、ミャンマーの軍事政権に対する圧力を強め、南シナ海における中国の行動をけん制するよう訴える。

クリテンブリンク米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は記者団に対して、2021年の軍事クーデターで混乱に陥ったミャンマーがジャカルタで話し合う「重要な議題の一つ」になるとし、ミャンマーにおける暴力を止め、民主主義を復活させるためにASEAN諸国が軍事政権に対して引き続き圧力を強めることを望んでいると説明した。

南シナ海の領有権を巡る問題については、威圧的で無責任な中国の行動に対抗するためASEAN諸国と協力すると述べた。【7月10日 ロイター】
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中国は経済を軸にASEAN諸国との関係を強化する姿勢です。

****中国とASEAN、自由貿易圏3.0版を協議=王毅氏****
中国外交担当トップの王毅共産党政治局員は13日、同国と東南アジア諸国連合(ASEAN)はジャカルタでのASEAN首脳会議で自由貿易協定第3バージョンに関する協議を進めていると明らかにした。

数カ国の外相と共にフォーラムに出席した王氏は「双方は自由貿易圏3.0版の交渉を積極的に進め、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の完全実施を推進している」と述べた。

RCEP協定は中国が支援する世界最大の貿易圏。2022年1月1日に発効し、オーストラリアや日本、ASEANの全10カ国を含むアジア太平洋地域15カ国が参加している。

王氏は「ASEANとの包括的な戦略的パートナーシップを引き続き深めていく」と表明。それにより「双方の発展と再活性化、また地域の長期的な平和と安定に向けた一段と強力な戦略的環境」が生まれると述べた。【7月13日 ロイター】
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統一した強固な対応がとれないASEANが、米・中・ロの“草刈り場”となっているようにも見えます。

【相次ぐ米中の接触 「ガードレールを敷く」】
一方、ブリンケン米国務長官と中国外交トップの王毅共産党政治局員の会談も。

****米中外交トップが会談=関係安定目指し対話継続****
ブリンケン米国務長官と中国外交トップの王毅共産党政治局員は13日、ジャカルタで会談した。AFP通信が伝えた。米中双方は関係安定化を目指して閣僚級の対話を重ねており、会談でも意思疎通の維持を確認するとみられる。

会談では台湾問題のほか、ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮の核・ミサイル開発、南シナ海での中国の海洋進出の動きなどについて協議する見通し。バイデン米大統領と中国の習近平国家主席との首脳会談に関しても議論する可能性がある。

ブリンケン氏は11日、米メディアとのインタビューで「米中両国が協議し、高官レベルで対話していくことが重要だ」と強調。「特に軍に関し、あらゆる誤算を回避することが双方の利益なのは明らかだ」と述べ、国防当局間の対話再開を模索していく考えを示した。

ブリンケン、王両氏は、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の外相会議のためジャカルタを訪問。王氏は「体調」を理由に欠席した秦剛国務委員兼外相に代わって一連の会議に参加する。米中外交トップの会談は、ブリンケン氏が北京を訪れた6月以来となる。【7月13日 時事】
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米中関係では、ジョン・ケリー大統領特使(気候変動問題担当)が7月16日から訪中することにもなっており、6月のブリンケン国務長官訪中以来、接触が頻繁になっています。

****ケリー米大統領特使が訪中、気候変動分野での協力再開を協議する「本当の狙い」****
二松学舎大学国際政治経済学部・准教授の合六強が7月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ケリー米大統領特使の訪中について解説した。

ケリー米大統領特使が訪中、協力再開を協議へ
米国務省はジョン・ケリー大統領特使(気候変動問題担当)が7月16日〜19日の日程で北京を訪問し、中国政府当局者と会談すると発表した。アメリカの政府高官としては6月のブリンケン国務長官、7月のイエレン財務長官に続く訪中となる。

米中ともに関係性を回復したい 〜根本的な考え方の違いから関係改善は簡単ではない
飯田)相次いで訪中しているように見えますが、それぞれの狙いは違うのでしょうか?

合六)アメリカからすると、競争はするけれども、それが実際の対立・衝突にはつながって欲しくないし、望んでいないわけです。(中略)

できるだけ対話を制度化・定例化することによって、安定的な関係を築こうとしている。バイデン政権では「ガードレールを敷く」という言い方をしています。(中略)

中国側の意図も、同じようにアメリカと対話することで、いまの段階では衝突を引き起こしたくないという部分もあると思います。また、関係性を安定化させることによって、経済回復、特にコロナ後の落ち込んだ状態を引き上げたい思惑もあると思います。(中略)

ただ、米中では根本的な考え方にいろいろな相違がありますので、実際に関係改善へつながっていくかと言うと、まだ見通せないところがあると思います。(後略)【7月13日 ニッポン放送 NEWS ONLINE】
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いろんなチャンネルで「ガードレールを敷く」なり、関係性を安定化させるなりすることは良いことでしょう。
実際の目に見える関係改善へつながっていくかどうかは定かではありませんが。
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