孤帆の遠影碧空に尽き

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ロシア  黒海穀物合意離脱 代替ルートへも攻撃 ロシア・アフリカ首脳会議で孤立回避図る

2023-07-27 21:13:39 | ロシア

(【7月26日 時事】)

【ロシアの黒海穀物合意からの離脱 アフリカ最貧国を更に苦しめる懸念】
ウクライナ産穀物輸出を保証する黒海穀物合意から(条件が満たされれば復帰するとしながらも)ロシアが離脱することを発表したことで、世界の食糧事情が悪化することが懸念されています。

その影響は、アフリカや中東、特に現在でも危機的な状況にあるアフリカの貧困国において最も大きいとされています。

****ロシア穀物合意離脱にアフリカ衝撃、食料価格2倍予測も****
ロシアが黒海穀物合意からの離脱を発表したことにソマリアなどアフリカの貧困国は衝撃を受けている。こうした国々の多くは既にインフレや気候変動、紛争などに翻弄されており、合意停止に伴う穀物価格の上昇が追い打ちとなるためだ。

国連とトルコが仲介して2022年7月に成立した黒海穀物合意は世界的な食料価格の押し下げに寄与。援助機関は、緊急性が高まり、資金が不足する状況にあって、数十万トンの食料を手に入れることができた。

ソマリアの首都モガディシオでは、ロシアによるウクライナ侵攻で2倍に跳ね上がった小麦の価格が黒海穀物合意の調印後に25%下落した。今回のロシアによる合意離脱の発表に、トレーダーからパン屋、国内の武力紛争や干ばつの被害者に至るまで、みんな恐怖に慄いている。

5人の子どもの母親でモガディシオの難民キャンプで暮らすハリマ・フセインさんは、「どうやって生き抜いたらいいか分からない」と途方に暮れている。「援助機関は私たちの生活を支えるために最善を尽くしてくれている。できる限りのことをしている」と話す。

モガディシオのトレーダーの間では、小麦は1袋50キロの価格が今の20ドルから30ドル近くまで跳ね上がるとの予想も出ている。

ケニアの外務省幹部は、既に歴史的な高値となっている食料が一段と値上がりし、2倍程度になるとの見通しを示した。

国連のデータによると、ソマリアは昨年のウクライナからの小麦輸入が8万4000トンと、前年の3万1000トンから増加した。

それほどひっ迫していない国も危機感を抱きそうだ。世界最大の小麦輸入国であるエジプトはウクライナ戦争勃発後の世界的な小麦価格高騰で、何百万人もの国民に補助金付きのパンを支給し、財政を圧迫した。食料配給を担当する供給省は先月ロイターの取材に、「世界市場を落ち着かせる上で重要」なため、合意の延長を望んでいると述べていた。

<価格高騰>
ロシアは17日、同国産の穀物と肥料の輸出改善を要求したのに実現していないとして合意からの離脱を発表。貧困国に十分な穀物が届いていないことにも不満を示した。一方で国連は、合意が世界全体の食料価格を20%以上引き下げることに貢献したと主張している。

国連世界食糧計画(WFP)も、ソマリア、イエメン、アフガニスタンなど紛争や異常気象に苦しむ国々における食糧支援で、ウクライナ産穀物に大きく依存している。

アナリストによると、ロシアが合意離脱を決めたことで一部主要な食料の価格は上昇する可能性が高いが、穀物はロシアやブラジルなどの生産国からの供給が増えたため、ウクライナ戦争開始以来、世界的に入手しやすくなっている。

一方、国際救済委員会(IRC)の東アフリカ緊急責任者であるシャシュワット・サラフ氏は、「アフリカの角」と呼ばれる地域に属し、過去数十年で最悪の干ばつに直面しているソマリア、エチオピア、ケニアでは影響が広範囲に及ぶと予想した。

世界最大級の穀物供給国のひとつであるウクライナからの供給が減ることによる直接的な影響に加えて、世界的に市場が不安定になれば、少ないながらも余剰穀物在庫を抱える国々も輸出を手控える恐れがあるという。

IRCのような援助機関は食料価格が上昇すれば予算が苦しくなり、支給対象者を減らさざるを得なくなるのではないかと、シャシュワット氏は危惧している。

17日にモガディシオでは既に買いだめの動きが起きていた。商店主のモハメド・オスマンさんは、「大手が価格を吊り上げる前に、今すぐ小麦を買い足さなければ。そうしないと貧しい客は小麦など値上がりした食料を買えなくなる」と話した。【7月18日 ロイター】
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【米「ロシアは人類を人質に取った」 国連事務総長「深い失望」】
ロシア国防省は、20日以降、黒海からウクライナの港に向かう全船舶を「軍事運搬船」とみなすと発表、民間の船への攻撃も正当化する姿勢を見せています。 ロシア国防省はまた、ウクライナに向かう船の登録国はウクライナ側についたと判断するとも警告しています。

アメリカ国連大使は、「ロシアは人類を人質に取った」とロシアを非難しています。

****「ロシアは人類を人質」 米国連大使、穀物合意離脱の撤回要求****
ロシアが一時離脱を発表したウクライナ産穀物を黒海を経由して輸出する「穀物合意」について、米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は17日、ニューヨークの国連本部で記者団に「ロシアは人類を人質に取った」と語り、一時離脱の撤回を要求した。

トーマスグリーンフィールド氏は穀物合意を、昨年2月のロシアのウクライナ侵略開始後に高騰した食料価格を引き下げた「希望の光」と評価した上で、この希望や進歩を「ロシアは投げ捨てた」と批判した。

穀物合意を巡り、ロシアは合意延長に応じる条件として露農業銀行を通じた国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」への再接続などを求めている。

トーマスグリーンフィールド氏は「ロシアが政治的な駆け引きをしている間に特に(ウクライナ産穀物への依存度が高い)中東やアフリカで子供や授乳中の母親らが実際に苦しむことになる」と訴えた。【7月17日 産経】
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ブリンケン国務長官も17日、ロシアが「食糧を武器として使用している」と非難。国連事務総長も「深い失望」を表明しています。

****国連事務総長「無視され深く失望」 米国務長官「非良心的だ」 露「穀物輸出」の合意停止****
(中略)合意停止を受け、国連のグテーレス事務総長は、強い危機感を示しました。

国連・グテーレス事務総長 「私の提案が無視されたことに深く失望している。ロシアによる決定は困窮している人々に打撃を与えるだろう」

事務総長は、先週、プーチン大統領に書簡を送るなどして合意延長に向けた提案を伝えてきましたが、受け入れられなかった形です。事務総長は、世界の食料安全保障と食料価格の安定を推進するため、「解決への道筋を見出すことに専念する」としています。

一方、アメリカのブリンケン国務長官は17日、合意停止について「非良心的だ」と非難した上で、一刻も早く合意を復活させるよう求めました。

また、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は、ロシア政府に決定を覆すよう要請するとした上で、ロシアとウクライナの穀物を世界に供給できるよう、引き続き他の国と協力していく考えを示しました。【7月18日 日テレNEWS】
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【ウクライナが活用したいドナウ川を使った代替ルートへもロシアの攻撃が拡大】
ロシアのウクライナ産農産物をめぐる合意停止発表後、ロシア軍は、黒海に面し農産物を積み出す港がある南部オデーサの近郊でミサイルや無人機による攻撃を強めています。

穀物輸出が困難になったことで、当然ながらウクライナは大きな打撃を受けます。ウクライナは「代替ルート」の活用も検討しています。

****ウクライナ、穀物輸送臨時ルート確立へ ロシア穀物合意停止受け****
ウクライナ政府は19日、ロシアが黒海経由の穀物輸出合意(黒海イニシアティブ)の履行を停止したことを受け、穀物輸出を維持するために臨時の輸送ルートを設定すると発表した。

国連の専門機関、国際海事機関(IMO)に提出した18日付の公式書簡で「推奨される海上ルートの一時的な確立を決定した」と指摘。「その目的は、黒海北西部における国際航路のブロック解除を促進することだ」とした。

書簡によると、回廊の一部であるウクライナのチョルノモルスク、オデーサ(オデッサ)、ピブデンニの3港の近海に、ルーマニアの領海と排他的経済水域(EEZ)につながる航路を確立するという。【7月20日 ロイター】
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オデーサなどからの積み出しに代わるルートとしてウクライナが準備してきたのが、隣国ルーマニアとの国境地帯を流れるドナウ川の河口付近を経由してから黒海に抜ける「ドナウ川ルート」です。

まず南部イズマイールやレニなどウクライナの小規模港で穀物を積載。その後、小型船でドナウ川を使って黒海に抜け、ルーマニア東部のコンスタンツァなどより大規模な港で大型船に積み替えてから各国に輸出するというものです。

しかし、この代替ルートは大型船を使えないので量的に制約があるほか、ロシアはこのルートへの攻撃を強めています。

一方、中東欧諸国を経由する陸上輸送ルートは、ウクライナ支援のために関税免除の措置を受けた安価なウクライナ産穀物が通過国に滞留し、その国内市場に出回ることで通過国農家に打撃を与えるとして、通過国の中東欧諸国からの強い要請で制約を受けています。

****ロシア軍、穀物輸出の代替ルートもドローンで攻撃 ウクライナ南部****
ウクライナに侵攻するロシア軍は24日未明、ウクライナ南部オデッサ州の西南端に位置する河港都市レニの穀物倉庫を無人機(ドローン)で空爆した。州当局が24日、発表した。

レニは、黒海を経由するウクライナ産穀物輸出ルートの代替経路として使われるドナウ川沿いの物流拠点で、ロシアの攻撃が代替ルートにも拡大した。

オデッサ州当局によると、レニの穀物倉庫3棟がロシアのドローンによる攻撃を受けて破壊され、7人が負傷した。同州知事は通信アプリ「テレグラム」に、「ドナウ川の河港施設が標的になっている。ロシアは(ウクライナの)穀物輸出を完全に封鎖し、世界を飢餓に追い込もうとしている」と投稿した。ロイター通信は、レニで複数の倉庫が破壊されている映像を確認したと報じている。

ドナウ川はルーマニアからオーストリア、ドイツなどにつながる国際河川で、ロシアによるウクライナ侵攻開始以来、黒海の代替ルートとして輸送量が増加している。ドナウ川沿いのレニは、河港施設のほかに鉄道網も発達しており、穀物輸送の拠点となっている。

ロシアは7月17日、ウクライナ産の穀物を黒海経由で輸出する合意の履行停止を発表。その後、オデッサ周辺の黒海沿岸の穀物関連インフラなどを連日攻撃している。今回、代替ルートである内陸部の施設にも攻撃を拡大したことで、穀物輸出の安全確保が一層困難になった。

欧州連合(EU)は代替ルート強化のため、レニなどドナウ川周辺の施設整備を進めているが、計画に影響が出る可能性もある。

ウクライナ産穀物輸出の陸上経由の代替ルートを巡っては、比較的安価なウクライナ産穀物の流入で自国産穀物が値崩れを起こしたとして、通過国のブルガリア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキアの農家が反発している。

EUは7月上旬、9月15日までの期限付きでウクライナ産穀物が5カ国を通過することを認める一方、各国内での販売を禁じる輸入制限を導入。EUは現在、制限の延長を協議している。

これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、テレグラムに、制限の延長は「いかなる形でも受け入れられない」と投稿した。【7月25日 毎日】
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****ウクライナ、ドナウ川の穀物輸送ルートにもロシアの脅威****
(中略)
24日の攻撃以降、ドナウ川の輸送ルートでは船舶交通の渋滞が解消されていない。
その正確な原因は不明だが、マリントラフィックのデータに基づいてロイターが計算したところでは、イズマイル港付近にいかりを下ろしたままの船舶は20隻に上り、出航可能なのは3隻のみで、24日以降、別の3隻も到着した。そこから約45キロ上流のレニ港の近辺でも7隻が停泊している。

<保険料高騰か>
関係者の話では、ドナウ川の港湾について一部保険会社が条項見直しを行っており、黒海穀物輸出合意の無効化の対象であるウクライナの港に対する戦争リスクのカバーはいったん停止されている。

保険業界関係者は25日、ウクライナのドナウ川沿いの港湾から貨物を積み出す船を新たにチャーターするための保険適用要請はほとんど見当たらないと明かした。

関係者の1人は「ロシアは輸送船舶を脅かすというより、インフラの破壊を狙っているように見受けられる。ただ、結果的には威嚇の効果になる」と説明する。

別の1人は「ドナウ川沿いの港湾に引き続き何らかの保険が適用されるとしても、保険料は著しく高くなる。何が起きるかは分からないのだから」と述べた。

それでも黒海経由の穀物輸出合意が機能しなくなったウクライナにとって、ドナウ川輸送ルートの重要性は高まっている。【7月27日 ロイター】
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【ロシアにとってもアフリカ諸国の反感を買う「瀬戸際戦術」】
ただ、ロシアにとっても、こうした食糧輸出を困難にする対応・攻撃は、アフリカ諸国などの反感を買う恐れがある「瀬戸際戦術」でもあります。

****「穀物合意」離脱 ロシアにもリスク 非欧米諸国と関係悪化も****
ロシアがウクライナ産穀物を黒海経由で輸出する手続きを定めた「穀物合意」からの一時離脱を表明したことは世界の食料事情を悪化させる恐れが強い。一方、合意離脱はロシアにとっても、合意維持を求めてきた途上国などからの支持の低下といったリスクをはらんでいる。

ロシアは合意復帰をちらつかせて自身の要求を認めさせる構えだが、国際社会がロシアの揺さぶりに屈する保証はなく、ロシアの「瀬戸際戦術」が成就するかは不透明だ。
(中略)タス通信によると、ロシアの合意離脱を受け、シカゴ取引所の小麦先物価格は3%超上昇した。(中略)

一方、ウクライナ侵略で欧米と敵対したロシアはアフリカや中東など非欧米諸国との関係を強化し、制裁の打撃や国際的孤立を回避しようとしてきた。合意の失効で各国の食料事情が悪化すれば、ロシアの外交戦略にも一定の打撃となる。

ロシアは今月下旬、19年に続き2回目となる「ロシア・アフリカ首脳会議」の開催を露北西部サンクトペテルブルクで予定している。ロシアはアフリカとの連携を強める思惑だが、合意を失効させたことで首脳会議にも水を差した形となった。

ロシアは従来、合意から離脱した場合でもアフリカなどに無償で食料を供給すると説明。だが、制裁下にあるロシアにそれがどこまで可能かは疑問が残る。【7月17日 産経】
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7月27日からサンクトペテルブルクで開催される「ロシア・アフリカ首脳会議(サミット)」は、アフリカ諸国首脳の参加が少なく、ロシアが期待するような盛り上がりを欠いているとの指摘も。

****アフリカ諸国にも嫌われた?首脳が少ししか来ないロシア・アフリカ首脳会議****
<27日開幕のロシア・アフリカ首脳会議に出席する首脳は、アフリカ54か国のうち17か国だけ。きてくれた首脳の一人、エチオピア首相とプーチンとの握手は感謝のあまり?長過ぎて話題に>

(中略)27日に開幕するサミットに出席を予定しているアフリカの国家元首はわずか17人と、2019年の43人に比べてかなり減る見通しだ。だがロシア政府は、これに加えてアフリカの32カ国が、政府高官または大使を派遣する予定だと強弁している。

AP通信によれば、ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、サミットに出席する国家元首の数が以前よりも減ったことについて記者団から質問を受けると、「アメリカ、フランスやその他の国が厚かましくも介入し、アフリカ諸国の指導部に圧力をかけ、サミットへの積極的な参加を阻止しようとした」と述べけた。「とんでもないことだが、これによってサミットの成功が阻まれることはまったくない」

ウクライナ戦争や穀物輸出合意の離脱を非難する声も
(中略)ウクライナ内務省のアントン・ゲラシチェンコ顧問は、アフリカの一部の指導者が会議に出席しない決定を下したことについて、ロシアは「食糧テロリストで恐喝屋」だからだ、と非難した。

一部の有識者は、アフリカ諸国の指導者らがサミットへの出席を見送ったことについて、ロシアによるウクライナ侵攻と、ウクライナ産の穀物を黒海から安全に輸出させるための黒海穀物合意の履行をプーチンが反故にしたことが理由だと指摘している。ウクライナ産の穀物を黒海経由で輸出するためのこの合意が破綻したことで、世界の食料安全保障が脅かされている。

プーチンはロシア産の穀物を無償で供与する案などを提示し、アフリカ諸国の不安を和らげようとしてきた。24日には声明を出し、「我が国(ロシア)はウクライナ産穀物を有償でも無償でも代替できる」と述べた。(後略)【7月27日 Newsweek】
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なお“ロシアのプーチン大統領は27日、サンクトペテルブルクで開催されたロシア・アフリカ首脳会議で、ウクライナ産穀物のアフリカへの輸出をロシアが代替することは可能とした上で、3─4カ月以内にアフリカ6カ国への穀物の無償供給を開始する用意があると述べた。”【7月27日 ロイター】とのこと。

一方、アフリカ諸国については、“ロシアの合意履行停止の表明を受け、アフリカ連合(AU)当局者は遺憾の意を示し、履行再開を求めた。ケニア外務省高官も「裏切り」だと交流サイト(SNS)に投稿して批判した。ただ、大半のアフリカ諸国は沈黙を守っており、首脳会議を前にロシアを刺激したくないとの思惑がのぞく。”【7月27日 産経】とのことです。
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