孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  深刻な麻薬性鎮痛剤「フェンタニル」蔓延 供給源とされる中国は冷ややかな対応

2023-07-21 22:49:13 | アメリカ

(身動きしない薬物中毒者ら。路上には注射器が散乱している=4月下旬、米フィラデルフィア郊外(共同)【6月4日 西日本】)

【米では昨年、約10万9000人が薬物過剰摂取により死亡、その約7割がフェンタニルによるもの】
アメリカ社会を覚せい剤・ヘロイン・コカインなど違法薬物が蝕んでいるのは、映画や本などを通して日本でもよく知られた、ある種の「常識」ともなっていますが、現実の深刻さはそうした常識を遥かに凌駕したものとなっています。

最近の違法薬物の中心は、麻薬性鎮痛剤の一種である「フェンタニル」。
米疾病対策センター(CDC)のデータによると、アメリカでは昨年、約10万9000人が薬物過剰摂取により死亡していますが、その約7割がフェンタニルによる死亡。

「アメリカ人の18歳〜45歳の死因のトップが心臓疾患やがん、自動車事故、新型コロナなどではなく、フェンタニルである」という状況にあります。

そして、その供給源が中国企業ということも指摘されています。

****米国で違法薬物「フェンタニル」が蔓延 過剰接種により死者増加…中国企業から流入か****
今、アメリカでは密造・密売されている薬物の過剰摂取で死亡する人が増加し、深刻な問題となっている。アメリカに流入する違法な薬物が止まらない背景には、中国が関係していると指摘されている。

■医療用麻薬 去年の押収量は…米国人全員の命を奪う量
アメリカのハリス副大統領は18日、各州の検事総長らと会談し、“危機感”を示した。

ハリス副大統領:「今、若者たちのパーティーでは錠剤が配られています。こうした錠剤にはフェンタニルが混入されているんです。我々は、公衆衛生上の危機に直面していることを認識し、きょう、共に団結することになりました」

近年、アメリカでは、鎮痛剤の一種である「フェンタニル」の乱用による死亡が急増。2022年には、11万人が死亡したとみられている。

「フェンタニル」は、がん患者などに処方される薬だが、鎮痛作用は、ヘロインより最大50倍、モルヒネよりも100倍強力だとされていて、過剰に摂取すると死に至るという。

アメリカ麻薬取締局によると、去年、密造・密売された「フェンタニル」の押収量は粉末4.5トンと錠剤5060万錠で、3億7900万人分の致死量にあたると発表。およそ3億3000万人のアメリカ人全員の命を奪うのに十分な量だとして、危機感をあらわにした。

■中国企業から流入?「国内での対策を強化すべき」
そして、アメリカに「フェンタニル」が違法に流入する原因となっているのが中国企業だという。

アメリカ司法省は先月23日、「フェンタニル」の原料となる化学物質を、アメリカやメキシコに密輸したなどとして、中国に拠点を置く化学企業など4社と、中国人の従業員らを起訴したと発表した。

アメリカ ガーランド司法長官:「これらの企業と従業員は、アメリカ国内で流通させるためにフェンタニルを製造することを故意に共謀した」

アメリカのバーンズ駐中国大使は、これまでも中国のフェンタニル密輸取り締まりが不十分だと指摘していた。これに対し、中国は次のように述べている。

中国外務省 汪文斌副報道局長:「中国政府は人道主義の精神に基づき、フェンタニル類似物質全体をリストに掲載し、その違法生産、密売、乱用の防止に重要な役割を果たしている。アメリカがすべきことは、他国を中傷したり責任転嫁することではなく、自ら反省し国内での対策を強化することだ」

■アメリカ人の死因トップは「フェンタニル」
なぜ、アメリカで密造・密売された「フェンタニル」が蔓延(まんえん)しているのか見ていく。

アメリカ国立薬物乱用研究所の報告によると、薬物の過剰摂取で死亡した人は、おととしには10万6000人を超えていて、そのうち違法なフェンタニルによって亡くなった人が、およそ7割に及んでいるとしている。

政治専門のアメリカメディアも、「アメリカ人の18歳〜45歳の死因のトップが心臓疾患やがん、自動車事故、新型コロナなどではなく、フェンタニルである」とし、深刻な社会問題になっていると伝えている。

違法なフェンタニルが流通する背景には、ヘロインなどよりも安価で取り引きされていることがあるという。

アメリカ議会の諮問機関の報告書によると、中国政府が違法に作られたフェンタニルを規制したことで、直接流入される量が減少したとする一方、中国の密売組織は、違法フェンタニルの元となる化学物質をメキシコのカルテルに密輸し、そこでフェンタニルが密造されアメリカに流入しているとしている。ですので、アメリカで取り引きされる違法フェンタニルの主要な原産国は中国であると結論付けている。

■中国「フェンタニル危機の根源はアメリカ自身にある」
バイデン政権は、こうしたフェンタニルの密造を可能にした中国とメキシコへの制裁を強化している。

違法に製造された「フェンタニル」への関与や、錠剤の製造機器を密売業者に供給したとして、中国を拠点とする7つの団体と6個人、メキシコを拠点とする1つの団体と3個人を制裁対象に指定した。

ただ、中国は、こうしたメキシコ側との関係を否定している。

在メキシコ中国大使館は18日、違法フェンタニルの原料となる化学物質は中国から密輸されていないと表明し、アメリカ当局の主張を否定している。

そして、中国では違法薬物の原料の密輸を防止する措置が講じられていると説明したうえで、アメリカが国内対策を取らないのは責任回避で「アメリカのフェンタニル危機の根源はアメリカ自身にある」と声明を出している。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2023年7月21日放送分より)【7月21日 テレ朝news】
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【米の規制要請に冷ややかな中国 「21世紀版アヘン戦争」との指摘も】
上記記事にもあるように、アメリカ司法省は「フェンタニル」の原料となる化学物質をアメリカやメキシコに密輸したなどとして、中国に拠点を置く化学企業など4社と、中国人の従業員らを起訴しました。また、ブリンケン国務長官の訪中でも、中国側に取締まりの強化を求めています。

****米司法省 薬物密造に関わった疑いで中国企業4社などを起訴****
(中略)アメリカ司法省は23日、フェンタニルの密造や密売に関わったとして、中国 湖北省武漢の化学メーカーなど4社と中国人8人を起訴したと発表しました。

化学メーカーの幹部3人は、密造に使われると知りながら、過去8か月間で中国からフェンタニルの原料200キロ以上をアメリカに向けて輸出したとして罪に問われていて、このうち2人は、今月8日に滞在していた南太平洋のフィジーから退去処分となり、アメリカの当局に拘束されました。

司法省によりますと、フェンタニルの原料をアメリカに流入させる違法取り引きで、中国企業や中国人が起訴されたのは初めてです。

フェンタニルをめぐっては、ブリンケン国務長官が今週、北京で行った秦剛外相との外相会談で、取締まりの強化を求めるなど、中国側に繰り返し協力を呼びかけています。

司法省の高官は、記者会見で「フェンタニルの供給網の根源をたたくことで、新しい境地を切り開く」と述べ、今回の起訴の意義を強調しました。【6月24日 NHK】
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ただ、中国側の対応には「米国人による過度の薬物依存が問題だ。なぜ中国のせいにするのか」冷ややかなものもあります。そうした中国の対応について、「21世紀版アヘン戦争」を仕掛けているとの指摘もあるほどの米中間の問題となっています。

****中国産麻薬フェンタニル、米国に大量流入し「21世紀版アヘン戦争」の引き金****
7分に1人が中毒死、メキシコのマフィアが中国から原料輸入し密造

ブリンケン米国務長官は7月13日、訪問先のインドネシアで中国外交担当トップの王毅政治局員と会談した。ブリンケン氏は今年6月中旬、米国務長官として約5年ぶりに中国を訪問した際にも王氏と会っており、米国外交トップの会談は2カ月連続だ。(中略)

中国外交部は翌14日の定例記者会見で、米国との間で「フェンタニル」の問題について意見交換を行ったことを明らかにした。ブリンケン氏も6月の訪中時にフェンタニルの問題を協議したことを認めている。(中略)

規制強化したい米国、交渉に応じない中国
米国でまんえんする違法フェンタニルの直接の生産者はメキシコの麻薬マフィアだが、その原料を供給しているのは中国だ。フェンタニルが「チャイナ・ガール」と呼ばれるゆえんだ。

トランプ前政権は2018年から中国政府に対し、フェンタニルの米国への輸出を規制するよう働きかけを強めた。この問題が重視されたのはトランプ氏の支持者が多い「ラストベルト」が全米で最も深刻な被害を受ける地域の一つだったからだ。

米国との貿易摩擦を回避する観点から、中国政府は2019年からフェンタニルの輸出規制を強化した。これによりメキシコ経由での流入は続いているものの、中国からフェンタニルが米国に直接輸出されることはほとんどなくなった。

だが、バイデン政権の圧力強化に不満を募らせる中国政府は、その報復として2019年に強化したフェンタニルに関する輸出規制を緩めている(2022年12月27日付米ウォールストリート・ジャーナル)。

中国の動きが顕著になったのは、昨年8月にペロシ連邦下院議長(当時)が台湾を電撃訪問した直後だ。
中国政府はフェンタニル規制関連の交渉窓口を閉鎖した。米国政府は在米中国大使館などを通じて対話を求めているが、中国は没交渉の姿勢を貫いている。

米司法省は中国企業を起訴
米国からの度重なる抗議に対し、中国外交部は「米国人による過度の薬物依存が問題だ。なぜ中国のせいにするのか」とけんもほろろだ。

米中対話が中断したことでメキシコ経由の中国製フェンタニルの流入が一層拡大することに危機感を覚えた米国政府は、強硬手段に乗り出している。

米司法省は6月23日、フェンタニルの原料を違法に取引したとして、中国の原料製造企業4社と中国人8人を起訴した。米当局が中国企業を訴追するのは初めてだ。

起訴された8人のうち2人が6月上旬におとり捜査で逮捕されたことに中国は猛反発している。在米中国大使館のスポークスマンは「たくみに計画されたおとり捜査が、中国と米国の麻薬対策協力の障害を生むことになるだろう」と米国を非難した。

7月13日の会談後も中国は「米国は中国の取り組みを評価しないばかりか、フェンタニルの問題で中国を中傷し、責任を転嫁するため、おとり捜査で中国籍の住民を逮捕した」と重ねて批判している。

対話重視と言いながら、バイデン政権は自らの覇権を維持するため、先端半導体に関する規制など中国の経済成長の基盤を崩す戦略を進めている。米国の「真綿で首を絞める」戦略に対し、中国はこれに反撃するため、米国社会のアキレス腱を狙い打ちしているのではないかと思えてならない。

だが、この戦術が有効であればあるほど、米国内での反中感情は高まる。「21世紀版アヘン戦争」を仕掛ける中国に対する米国の激しい怒りが、両国関係を危険なレベルにまで悪化させてしまうのではないだろうか。【7月21日 藤和彦氏 JPpress】
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【「ゾンビドラッグ」とも呼ばれる動物用鎮静剤のキシラジンとフェンタニルの合剤も】
現実は更に悪化していきます。供給側は“製品改良で付加価値をあげる”かのように、新たな薬物を広めていきます。今、「ゾンビドラッグ」とも呼ばれる動物用鎮静剤のキシラジンとフェンタニルを混ぜた薬物が蔓延しています。

****「ゾンビドラッグ」乱用が米国で拡大 政府が対策を約束****
米政府は11日「ゾンビドラッグ」とも呼ばれる動物用鎮静剤のキシラジンと、オピオイド鎮痛薬のフェンタニルを組み合わせたドラッグの乱用による死亡例が国内で相次いでいること受け、暫定的な対策を発表した。

「トランク」とも呼ばれるキシラジンは、動物用の強力な鎮静剤で、人間に対する使用は承認されていない。フェンタニルやヘロイン、コカインなどに混ぜることでドラッグの効果が増幅し、取引価格も上がる。

使用すると皮膚がただれる症状が出るほか、オピオイド鎮静剤の過剰摂取の治療に有効なナロキソンなどの薬が効かないため、特に危険な薬物となっている。

バイデン政権は、キシラジン関連の過剰摂取による死亡者の数を今後2年間で15%減らすことを目指すと表明。一方で、人間を対象とした検査の不足や、医薬品の検査体制の整備不足から、キシラジン乱用問題の規模を正確に把握できていないことを認めた。

具体的な対策としては、押収されたドラッグの検査の強化、医療現場で使用できる迅速検査の開発、病院での過剰摂取患者の検査実施を約束。また、キシラジンが人体に及ぼす影響や、フェンタニルと混ぜた際の効果について研究を行い、解毒薬の早期開発を目指すとした。

米国では、キシラジンに関連した薬物過剰摂取による死者が急増している。特に併用されることが多いのがフェンタニルだ。連邦政府機関のデータによると、キシラジンが検出されたフェンタニル過剰摂取による死者は2019年1月から22年6月にかけて276%増え、薬物過剰摂取の死者全体に占める割合は2.9%から10.9%に増加した。

検査体制が不十分であることから、実際の数はこれよりも多い可能性が高い。ただ、近年急増しているフェンタニル乱用の死者とくらべると、キシラジン関連の死者は比較的少数にとどまっている。

米疾病対策センター(CDC)のデータによると、米国では昨年、約10万9000人が薬物過剰摂取により死亡した。年間の死者数は2020年から15%近く増加し、初めて10万人を超えた。【7月12日 Fobes】
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****肌が腐る「ゾンビ・ドラッグ」新たな薬物が米で拡大****
米国の都市部で新たな薬物が蔓延しつつあるとして、専門家が警鐘を鳴らしている。

「キシラジン」は動物用の鎮静剤で、これを含んだドラッグは「トランク」や「トランク・ドープ」、「ゾンビ・ドラッグ」などの俗称で呼ばれている。米北東部のフィラデルフィアで使用され始め、その後、サンフランシスコやロサンゼルスへと拡大しつつあるという。最近では、フェンタニルなど他の薬物の中から検出された例もある。

ニューヨークタイムズによると、フィラデルフィアでは2006年の時点で、馬の鎮静剤を使用した薬物が確認されていた。ただし、本格的に広まったのは、パンデミック以降だという。

同地区の薬物防止センターへの訪問者数は、過去3年で300%以上増加。2021年には、研究室で検査した薬物のうち、90%からキシラジンの陽性反応が示されたという。

一部の疫学者はパンデミックの期間中、獣医の処方箋や医師のサプライチェーンから流出したキシラジンが、安価なオピオイドのフィラーとして注目されたと推測している。こうしたドラッグの価格は、ヘロインの半値で流通しているという。

市内の麻薬取引の中心地ケンジントンにある医療サービスセンターの職員はタイムズに、地域の「供給は飽和状態」で、対応は「すでに手遅れ」と現状を語り、他の地域への拡大に警鐘を鳴らした。

トランクを摂取した場合、過度の眠気や呼吸抑制、低血圧などの症状を引き起こす。繰り返し使用するうちに、急速に皮膚に傷が広がる。これらは硬い壊死組織となり、治療せずに放置すると、体の一部を切断するケースに至る場合もある。

右足を切断した今も、禁断症状を抑えるために薬物を使用し続ける38歳の女性は、「トランク・ドープは、文字通り肉を食べる。最高の自己破壊だ」と語っている。

28歳の男性はSkyニュースに、足と指に2つの穴ができたと明かし「人体をゾンビ化する」と話した。(後略)【2月23日 Mashup】
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【違法薬物使用が全世界で増加 メンタルヘルスに障害を持つ人や、社会・経済的に弱い立場の人、若者などが、薬物に依存しやすい】
違法薬物、特にフェンタニルの増加は世界的な問題ともなっています。

****違法薬物使用が全世界で増加、フェンタニルが深刻化=国連報告書****
違法薬物を注射している人がこれまでの予測より多いことが、国連の最新報告書で明らかになった。
国連薬物犯罪事務所(UNODC)が発表した「世界薬物報告」によると、2021年には全世界で1320万人が注射器を使って薬物を使用した。以前の予測より18%多かった。

全体の薬物使用はこの10年で23%増加し、2021年に2億9600万人だった。薬物使用による疾患のある人も45%増加し、4000万人近くに達している。

現在は、フェンタニルやメタンフェタミンといった合成化合物が違法薬物市場を独占している。フェンタニルは、北米のオピオイド(麻薬性鎮痛剤)市場を大きく塗り替えて普及し、深刻な結果を招いているという。

報告書は、メンタルヘルス(心の健康)に障害を持つ人や、社会・経済的に弱い立場の人、若者などが、薬物に依存する羽目になりがちだとしている。

地域としては、東アジアや東南アジアよりも、東欧や北米に住む人々の方が注射を使って薬物を使用していた。
また、男性の方が女性の5倍、注射器で薬物を使用する率が高いことが分かった。また、男性の使用者が、女性のパートナーにこうした薬物使用を勧めている現状があるという。

一方で、薬物使用からくる疾患の治療を受けられている人は使用者の5人に1人に過ぎず、特に女性には治療を受けづらい状況があると、報告書は指摘している。(中略)

「紛争や世界的危機に乗じて、違法薬物の栽培や生産、特に合成薬物の生産を拡大し、不正市場をあおり、人々や地域社会に大きな被害をもたらしている薬物密売ネットワークに対して、対応を強化する必要がある」と事務局長は強調した。【6月26日 BBC】
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メンタルヘルス(心の健康)に障害を持つ人や、社会・経済的に弱い立場の人、若者などが、薬物に依存する羽目になりがち・・・アメリカの現状は、どこに原因があるのか、どうしたらいいのか・・・・ここからが本題とすべきことですが、私の手には余るので・・・・。

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