ジャズファン向け雑誌の「ジャズ批評」はしばしば購入していますが、先月、ディスク・ユニオンから新しい雑誌「Jazz Perspective」が発売されたので、買ってみました。内容は、特集が「スカンジナヴィアン・ジャズ」と「オーストラリアン・ジャズ」で、他に廃盤ファン向けの記事やディスクレヴューなど盛りだくさんです。僕には難しいところもありますが、ここまでこだわった雑誌はなかっただけに、コアなファンに支えられて長続きする予感がします。ディスクレヴューで取り上げられていた作品です。
ZOOT SIMS (ズート・シムズ)
On Ducretet Thomson (Ducretet-Thomson 1956年録音)
「Jazz Perspective」のレヴェーで取り上げられた理由は、このアルバムがオリジナルの10インチLP仕様で、澤野工房により復刻・発売されたからです。僕は東芝から出されたCDは既に持っていましたが、オリジナルデザインのジャケットとLPの音に興味が湧いたので、復刻LPも入手しました。なお、掲げたジャケは、CDのものでスキャナーで撮ってあります。
メンバーは、ズート・シムズ(ts)、ジョン・アードレイ(tp)、アンリ・ルノー(p)、ぺノワ・ケルシ(b)、シャルル・ソードレ(ds)。ジェリー・マリガン・グループに加わってのフランス楽旅の際に、現地のリズム・セクションを使って録音したものですが、ズートの1956年の音は、張りがあってつややかで豊かですし、アードレイも柔かくてしなやかな音で吹いていて、ホーンの音色がよい。
曲は、アンリ・ルノー作「Captain Jetter」、アードレイ、ルノー、シムズ共作「Nuzzolese Blues」、コール・ポーターの「Everything I Love」、クインシー・ジョーンズ作「Evening in Paris」、アイシャム・ジョーンズ作「On The Alamo」、おなじみの「My Old Flame」そして、アードレイの「Little Jon Special」で、テンポもスローからアップテンポまでうまく配置されています。
フロントの二人はもちろん、現地ミュージシャンがスイングしていて、体も揺れかねない楽しい演奏が収録されています。「Captain Jetter」、「Everything I Love」がそれで、ズート、アードレイとともにルノーのソロが光ります。そして、もう一つのハイライトが、ズート・シムズがワンホーンで演奏したバラード「Evening in Paris」で、実におだやかで情感豊かなソロ・プレイに酔わされます。ルノーの短いピアノ・ソロもアクセントになっています。LPだと、この「Evening in Paris」がB面の1曲目にきて、区切りがとてもよく、なお印象深い。
【Jazz Perspective 創刊号】
株式会社ディスク・ユニオン発行、定価1000円。ほとんど広告がないのがかえって新鮮。特集記事やレコード、CDに関する記事が中心なので、公演情報などはありません。ユニオン新宿店で買ったのですが、長野市内ではタワーレコード長野店に置いてありました。2011年4月刊行予定の第2号の特集はフレンチ&イタリアン・ジャズです。