明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



次号のアダージョの背景にと、考えていた場所にようやく許可が出て、編集長とロケハンに出掛ける。 私は一番苦労する頭部も出来て、これから全身を作るというとき、はやる気持ちをを焦らし、わざと作り惜しみをして、自分を盛り上げる事がある。しかし今回はロケ場所が決まらなかったせいで、自動的に、そういうことになってしまった。わざとやっているときと違って、締め切りも迫り、ハラハラ感は倍増である。そして本日、実際に現場を目にして、特集される人物のポーズ、その他が一気に決まった。もう抑えるものは何もない。家に帰って作るだけである。私はついに頭上に満月が輝いた狼男の如くであり、獲物にむしゃぶりつくように粘土に飛びかかるのだ。“オレの邪魔する奴は誰でも噛み殺すぜ。それがたとえオレのお袋でもな!”これは力道山と死闘を演じた往年のプロレスラー、“噛み付き魔”フレッド・ブラッシーの台詞である。当時、単細胞のアメリカ人プロレスファンを恐怖させたのだろうが、子供の私には、近所の馬鹿息子じゃあるまいし、いい大人がお袋に噛みつくってどういうことかと、怖さが伝わってこなかった。

01/07~06/10の雑記
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