明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
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赤めだか 立川談春著(扶桑社)
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2009-02-12
競艇選手になることを断念した17歳の立川談春が、立川談志に弟子入りするところから最後まで一気に読んだ。落語好きの友人から度々聞かされていた談春の名前だが、昨年暮れのTVのドキュメント番組を観て、その日にたまたま観てきた噺家連中との、桁違いの雰囲気に驚いた。また師匠と弟子との尋常ではない緊張感。以前本著にも登場する弟弟子の、高座に上がる寸前の死にそうな表情を見て胸打たれたことがあるが、私などには想像もつかない厳しい世界である。 弟子入りといえば、私自身十代の終わりに、祖父のつてを頼ってある陶芸家に、父に連れられ会いにいったことがある。もっとも会えたのは、後に人間国宝になる作家ではなく、とりあえず、まずはその一番弟子のところへ、ということであった。しかし作家もその弟子も寺の住職であり、当然寺の修行をしなくてはならないということであった。弟子の方には興味がなかったし、寺の修行などという、私にそんな根性の持ち合わせなどあるはずもなかった。その後陶芸家の道も断念し、今に至っているわけだが、デッサンひとつまともに習った覚えがなく、ただただ独学のみである。そのことにたいして、いまさら後悔もないし、多少の意地もプライドも持っているつもりではあるが、壁にぶち当たったときの、なんとも泥臭い乗り越え方に、独学者の悲哀を感じること度々なのである。そして博物館などで古の作品を眺めては、今の人間にこんな物は作れないのだから、習ったところでロクなものは伝わっていかないのだ、と腹の中で悪態をつく私なのである。しかし本著には、師匠から弟子へと伝わっていく、感動的な何ものかが間違いなく描かれており、『談志がちょっと胸を張って云った。』という、袂を分かったままに終った師匠、柳家小さんに対する最後に書かれた一言こそが、本著のすべてのように思われる。これを読んだ瞬間、談志の誇らしげな表情を想像して涙が噴きだした。 昔録画した、立川ボーイズ時代のビデオがどこかにあるはずである。
01/07~06/10の雑記
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