明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



背景は聖路加(ルカ)国際病院である。この病院のおかげで周辺は爆撃を免れたが、特にこの部分は小津映画に登場した頃の姿を保っている。 小津は作品において、あらゆることにこだわった。特に有名なのは独特のローアングルであろう。セットの看板文字は自ら手描きし、壁にかかる絵画など本物の美術品を使った。撮影用小物で有名なのがヤカンである。カラフルな物が度々登場するが、『彼岸花』(1958)では小津の好きな赤い色のホーローヤカンが、ポイントとして唐突に置かれている。小津は自身の服装にもこだわったようだが、小津を作るにあたり、当時の小津組のプロデューサーで、現、鎌倉文学館館長の山内静夫さんに服装の色について伺ったところ、小津はすべてグレーにすれば間違いない、とのことであった。マフラーは時に赤いマフラーを愛用したようだが、たまたまベランダでそよぐ洗濯物が眼に入り、BVDのTシャツがマフラーに転じた。縮尺のマジックで、ペラペラのTシャツが暖かそうな布地に見える。また山内さんには、撮影にヤカンを使うことなどお伝えしていないのに「ヤカンは絶対赤」といわれたことが印象深い。横に配した撮影用カメラは、晩年ロケなどに使用したアリフレックスと同型の物で、小津コーナーがある、江東区古石場文化センターの展示品をお借りした。なお同センターでは、本日より来月25日まで、この小津像が展示される。

01/07~06/10の雑記
HOME

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )