明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

一日  


近所の蕎麦屋で蕎麦焼酎の蕎麦湯割りを飲みながら、次に制作するアダージョ用の人物の、亡くなった当時に出た雑誌の追悼号を読む。人物の生前のエピソード、功績などが網羅されていて、とりあえず概要をつかむには最適なのである。作家の場合は著作を読むのはもちろんだが、少しでも人となりを知り、写っていない部分をつかもうとするわけである。私は時に写真に残されていない、誰も見たことのない角度で撮るので、本人に似てないといわれることもあるわけだが、残された写真は撮影者のものだから、誰でも知っているそのまま作っても面白くないのである。 時間が早いので、他には一組の客だけである。老夫婦に、友人と思しき40代の夫婦。どこそこの大使館のパーティーなど、海外出張や旅行など華やかな思い出話で盛り上がっている。創業明治43年の蕎麦屋で「チアース!」などとやっている。「今度あそこのボルケイノーへ、みんなで行きましょうよ」などとやるから可笑しくてしょうがない。そういえば数年前に、クリスマスになると家の周りに電飾を飾る一家が越してきたが、貴様等夫婦じゃないだろうな?しかしアルコールが進むうち、最後は500円の靴下の話など、次第にスケールダウンしていったのが、また可笑しかった。
少々飲みすぎたので早めに寝ると、江口洋介と保坂尚輝とコタツに入って語り合う夢をみた。私が陶芸家を目指していた頃、北関東の猪が出て廃村になった村に男3人で住んだことがある。4キロ四方人家がないところであったが、この二人がそこで暮らすというのを、馬鹿なことは止めろと説得する夢である。当時は水道は外にあり、湧き水を風呂桶にため、竹で作った樋で蛇口までひいて来ていた。食器を洗うそばから氷が張っていくとか、仕事場の天井から、ヘビの絡まった塊がずるりと垂れ下がった、などとすべて実話だが、私の夢は登場人物シチュエーションはめちゃくちゃでも、私自身はいかにも私が考えそうなことしかいわないのである。2人の頑固さにホトホト閉口したのであった。


01/07~06/10の雑記
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