明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
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『一人息子』(1936)
Weblog
/
2009-02-07
近所の古石場文化センターに借りていた小津のDVDを返しにいく前に、まだ観ていなかった『一人息子』を観る。昭和初期、不況時代の信州の田舎。進学を望む少年が教師(笠智衆)に励まされ、母親(飯田蝶子)が苦労して進学させる。十数年経ち、東京で大学を出た息子(日守新一)は、夜学の教師をやっている。当時は給料の良い仕事とはいえず、母親には仕事のこと、結婚して子供がいることも知らせていない。そこへ息子が出世していると思い込んだ母親が上京してくる。すでに田畑は売りつくし、紡績工場で掃除婦をしているが、息子には伝えていない。息子は同僚に借金し、母親を東京見物に連れて行き、すぐに金は底をつく。殺伐として埃じみた風景の中を歩く親子。母親が期待したような生き方をしておらず、がっかりしたんじゃないかと落ち込む息子。こんなつもりではなかったが、仕方がなかったんですと嘆く。しかし内心を隠して励ます母親。このあたりで、この作品を観たことを後悔しはじめる私。その晩、不甲斐ない息子を想い寝られない母親。お前がそんなことでは、何のために苦労したのか解らないじゃないかと泣く。もう観るのをやめようかと思いはじめる私。 この後母親は、なけなしの金を置いて田舎に帰っていく。息子は気持ちを改め、さらに勉強をしてがんばっていく決心をするのであった。 なんとも苦い後味の作品であるが、これは小津安二郎の責任ではなく、観る側に問題があるようである。
文化センターにいくと、明日から催される
『築山秀夫 小津コレクション展』
の準備中。ポスターの数々は当時の色彩を保った素晴らしい保存状態である。その他スチール、宣伝物、小津の愛用品など。 コレクションの提供者で、全国小津ネットワーク会議副会長の築山さんに、飾りつけながら説明をしていただく。小津映画にはラーメンを食べるシーンが度々登場するが、展示品の中に、使われたのと同形のどんぶりがあった。実際見ると、ただのドンブリ鉢ではなく、呉須に上絵の砥部焼きの作家物で、とても街のラーメン屋で使うような物ではない。小津のこだわりは話には聞いているが、実際見ると驚くものである。展示は3月6日まで。
01/07~06/10の雑記
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