明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



制作中の人物は、当初イメージしていた画から随分変った。伝記、評伝の類を読み進めていくうち、イメージが変化することは当然のようにある。アダージョの場合、常に一つが終って、ようやく次の人物が決まるという状態で、そこから伝記、評伝の類を読み始めなければならないので、團十郎などは、歌舞伎の歴史のある約束事も多いし、我慢できずに最終決定があるまえに伝記を入手し読み始めていた。 今回も次第に変ってきて、当初決めていた撮影場所も変更した。背景に使おうと事前に入手していたものは無駄になってしまったが。 今回はいつもと違う部分もあり、考え方を変え、私としてはめったなことでは使わないよう、禁じ手としていた手法を使うことにした。有名人であり、それゆえ配布される時期を考慮するうち、この人物は、普通こういう扱いをされることはないだろう、という画にすることにした。
『歌舞伎を救った男』マッカーサーの副官フォービアン・パワーズ(集英社)岡本嗣郎著 戦前来日し、寺だと思って入った歌舞伎座で歌舞伎に魅入られ、戦後進駐軍としてマッカーサーの通訳、副官という立場で来日し、魔の手から歌舞伎を守った人物の話だが、もしあなたという存在がなくなったら、歌舞伎の日米交流とアメリカ公演の同時通訳はどうなりますか?という問に、「だれも不可欠の人物にはなりえない。いつかあなたに代わる人物が現れる」と答えている。あなたの代わりを誰にもさせたくなければ、“可決”の人物になればよいわけである。随分前に、そのことに気付いていた私であった。

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