明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



朝8時過ぎにT屋へ行くと、定年を迎えた運送会社のKさんがすでに飲んでいる。隣りには近所の新聞屋の配達員。この青年は空気が読めないこと甚だしく、いつ洗濯したかというジャンパーを椅子にかけ、少ないカウンター席を二つ占有している。今日は煎餅のカケラを背中に付けていた。朝食が終ってもいつづけ、酷いときは寝始める。不気味なのは、トイレに入ったらしばらく出てこず、トイレットペーパーを1ロール半使うことがあるそうで、トイレをしばしば詰まらせる。いったい中で何をしているのか。ジャイアント馬場が海外修行のおり、ドケチの日系レスラー、グレート東郷邸に居候した際、トイレットペーパは一回30cmと決められたそうである。この青年など東郷に下駄で殴られ、傷口に塩を擦り込まれ、半殺しの目にあうだろう。 常連のKさんやTさんに巻き込まれることなく、ロケハンに出発。  当然の事ながら現場に行ってみると、そう都合の良い場所は見つからない。何ヶ所か撮影する。現場を見て、人物のポーズを変更することにした。これで全身の制作に取りかかれる。團十郎の場合は、写真に残っていない表情にしたことが面白かったが、今回の人物は、そうすることに意味はない。それでも残されたポーズとは変えるつもりでいたが、立っている場所、シチュエーションからして、むしろわざわざお馴染みの様子にしたほうが面白いと思えてきた。  フィルムの現像を済ませ、T屋の前を通ると主人のHさんがヒマそうにしているので寄る。晩くなり、そこそこ飲んで、帰り際、先日屋上でやった野点もどきの話になる。店の入り口に色こそ赤くないが、大きな野点用の傘が立てかけてある。穴だらけだよ、といいながら店の外へ出て開いてみるHさん。ミシミシいいながら開くと、物自体は良いようだが、ボロボロ。閉じようとすると閉じない。閉じないと店に入らない。暗い路地の真ん中で、大きな開いた傘をああだこうだしてるHさんを放って帰るのも面白いと思ったが、なんとか手伝って閉じて帰った。

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