明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



遅ればせながら今頃観る。これが予想以上に良く出来ており、面白く観ることができた。意外なほど事実に忠実に描かれ、劇中劇の『金閣寺』『鏡子の家』『奔馬』の選択が良く、市川雷蔵を思い出させる坂東八十助、佐藤浩一、沢田研二、永島敏行も良かった。美術の石岡瑛子もフィリップ・グラスの音楽も良い。 三島由紀夫役の緒方拳は、観る前は四角い顔が気になるだろうと思ったが、体格が大きすぎることを別にすれば気にならなかった。今だったら似ているといえば筧利夫がやるべきだと思っていたが、緒方拳のようにはいきそうにない。気になったところは二つ。市ヶ谷のバルコニーの演説シーン。実物より役者的に必死に説得しすぎである。あそこは一人でも自衛官が立ち上がったら台無しになったシーンで、説得及ばず無念、と踵を返し、というのが三島が用意したシナリオだったはずである。ニュース映像を観た中学生の私は、なんで拡声器を持っていかなかったのだろうと思ったが(当時、ああいう場合は使ったものである)用意周到な三島が持っていかなかった理由は一つであろう。いや、確かに武士に拡声器は似合わないのだが。 森田必勝役の塩野谷正幸が全くのミスキャスト。何故使ったか理由が判らず。森田こそ体格、顔が似ている人間を使うべきであった。私だったら下手でも良いから、気持ち悪いほど似ている人間を使いたいところである。

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