明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



“女がいなかったら死んだほうがマシ”が口癖のKさんだが、同じような話を、私はなぜ何時間も聞いていられるのか。話といえばほとんど複数の女性にたいする願望、または想いを遂げるための作戦計画である。日常、常にそのことばかり考えているのは驚くが、定年になりさらに拍車がかかった。先日はある店の娘と、たまたま飲み屋で顔を合わせ、「Kさん毎日待ってるのに~」とハグされ、すっかりその気になってしまった。私にはたんにお愛想いわれただけに思えるのだがKさんの解釈は違う。先日浜松行きの新幹線の中で、朝からハイテンションで聞かされた話の端々には「いや結婚はしないよ」というフレーズが挟まっていたが、たった1回のハグでなんでそこまで妄想が進展するのか。鼾をかく5分前まで、その話は何度もくりかえされた。 今回の“作戦”は3回の攻撃により陥落しなければ撤退する、とKさんにしては珍しいことをいうが、ハグの効き目からして撤退はあり得ないだろう。厄介なのは、その娘から「ウチの店は安いけど二人からなの」。といわれていることである。最近は周囲からも相棒扱いされている私はKさんに「一緒に行って」と手を合わさんばかりに懇願されているのである。 本日はKさん旅の疲れが出たようで家で寝ている。私は飲みながら本を読もうと近所の居酒屋へ。カウンターの端に坐る男、ここだけの話、などと秘密めいた口調で店主と原発の話をしてる。誰に吹き込まれたかくだらない話で、相槌打つ店主が可哀そうなくらいである。気が付くとスーちゃんが死んで、なんで俺みたいな男が生きているんだ、などといっている。Kさんの話は何時間聞けてもこいつは無理。熱もなければ可愛くもなく、哀愁もなければ楽しくもない。 Kさんは「俺は女に夢をもっている」といっているが、真顔でいうものだから、初めて聞いたときは笑ってしまったが、女性に関してまさに『フーテンの寅』と同レベルといって良いだろう。寅と違うところといえば、たまにどこかへ出かけては、スッキリした顔して帰ってくるところであろうか。

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