個展日和である。昼間の外からの間接光も画用紙にプリントされた風合いを強調している。インクの油成分を抜いたり、ニスによるコーティング、さらにドライマウント時の、熱を加えたプレスにより落ち着いた。おそらく大正時代にもなかった風合いであろう。眼高手低という言葉があるが、眼高どころか本物を見たことないまま制作を始め、勘違い、その他が加わり独特の作品になったかもしれない。何事も知っていれば良いというものではなさそうである。私が十代の頃から写真に熱心であったら、間違いなく手がけることはなかったろう。 谷崎像を出品中の神奈川近代文学館『没後50年 谷崎潤一郎展』は個展と重なり、まだ行けていないのだが、図録と展示風景写真を送ってもらった。谷崎像の横に設置されたボックスからは谷崎自らが朗読した『瘋癲老人日記』が流れるそうである。これはおそらく、老人が執心する息子の嫁『颯子』を淡路恵子がやっていたものであろう。大映で演じた若尾文子より颯子に関しては、アプレ感も含め上であった。 颯子のモデルである渡辺千萬子さんには展示作品より小さい、1作目の谷崎像を観てもらったことがある。「アラ似てないわね?」颯子が目の前に現れたかのようで、谷崎レベルのマゾヒストでない私もツンと来たのであった。
石塚公昭個展『ピクトリアリズムⅡ』
2015年4月25日(土)〜5月9日(土)
没後50年『谷崎潤一郎展』谷崎像出品
神奈川近代文学館 4月4日~5月24日
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