社会人の生徒さんに英語指導をしていると、TOEICや英検などで結果が出て新たな環境へ飛び出していく方と、結果が伴わずに知らず知らずのうちに英語から遠ざかってしまう方と、見事に二分されます。
前者は、いつまでにどういう結果を出すか、目標達成の期限を決め、ダラダラと勉強していないのが特徴です。つまり、自分が自由に使える時間で何を優先すべきかが明確になり、毎日やるべき勉強のルーティンの負荷がいつの間にか相当なものになり、英語力がアップするとともに自制心と克己心も養われています。結果が伴うのも当然です。
一方で、結果が伴わない方は、必ず「仕事が忙しくて・・・」と言い訳が最初に口をついて出てきます。社会人は仕事が第一ですから、仕事が忙しいのは当たり前です。その中で、いかに勉強の時間を工面するか?いつまで経ってもそのことに気づかず、言い訳ばかりを考える思考から抜け出せないのです。
かく言う私もかつては言い訳人間でした。そんな時に思い出すのが、銀行員時代に行内報で紹介されていたエッセイです。その題は「閾値を超える」。
以下は引用です。
もう十数年もまえのこと、二ヶ月ほど米国への研修に出させていただいた。あるパーティーで米大へ留学しているという日本人の女学生と出会い、英語に慣れるにはどうしたら良いかという話題になった。彼女は留学するまで英語はからきしだめであったが、米国で暮らし始めてから一年ほどたったある日、突然TVの英語が自然に耳に飛び込んでくる不思議な体験をしたという。それまでの一年間の努力は凄まじいものであったらしく、この時の喜びは一生忘れることはないだろう、と多少興奮気味に話してくれたことが今でも記憶に残っている。
これを「閾値を超えた」瞬間と言うのであろう。「閾値」はもともと医学用語であるが、あるレベルに達しはじめて物事が変わり始める、そのハードルのレベルをいう。
(中略)
ある水準に達するまでは集中的に、そして徹底的に努力することを惜しんではいけない。いくら時間をかけても「閾値」に達しなければ何もしなかったと同じことなのである。
・銀行を退職し、アメリカへの留学を決意 ⇒ TOEIC800点、英検準1級
・留学から帰国後に勤めた会社を辞め、塾業界への転職を決意 ⇒ TOEIC940点、英検1級
・10年間勤めた進学塾を退職し、独立開業を決意 ⇒ TOEIC990点満点
私も自分の人生を振り返ってみると、閾値を超えて結果が出たのは、退路を断って心に隙がなくなった時でした。
「できない」を連呼する代わりに、目標達成の期限を決めて、徹底的に努力してみる。その先にこそ、新たな自分を発見できるのだと思います。