見るともなしにテレビを見ていると、画面に真鶴道路が映った。あれ、真鶴道路だ!真鶴道路がどうしたんだ。するとナレーターが一般有料道路は「かくれ高速」といわれている、とコメントした。高速道路は国がきめ、国からの命令で道路公団がつくる。7,600kmが認定されている。しかし一般有料道路は道路公団が申請すれば自主的に建設できる。一般有料道路をつないでいけば高速道路に匹敵する。そこで「かくれ高速」の名がついたのだそうだ。
簡単にしくみを書くと、一般に高速道路は公団が郵便貯金などの財政等融資資金から借金をしてつくる。これは通行料で返済することになっている。通行料で借金が返し終わったとき、その道路は無料になるということになっていた。ところが、現在道路公団の負債額は30兆円。なぜこんなにまで負債額が増えてしまったのか。端的に言うと、多くの不採算の道路建設のせいである。現在採算の取れない道路の借金は15兆2千億円。借金の半分はこれが占めている。これは昭和50年代から起こっている。
なんとしても高速道路がほしいという地元の要請、もちろん政治家のてこいれもある。地方へ行くとそれこそ、「高速道路促進会議」などとかかれた横断幕を目にする。一般国道でもがらがらなのにもかかわらずだ。高速道路への期待は大きく、あたかも道路が富をのせてきてくれるかのような錯覚がある。それと道路公団の見通しの甘さ。企業感覚のなさ。土地買収だって、親方日の丸でやっているからだ。増え続ける借金に道路公団がとった手は法律を改正して、無料となるべき黒字路線を無料にしないで料金をプール制にすることにしてしまった。
因みに現在、建設中の第二東名の橋脚は1本1億円、富士川の橋は140億円かかっている。
身近な真鶴道路について書いてみる。一般有料道路の真鶴道路は黒字路線である。とっくに無料になるはずだった。黒字になるくらいだから通行量も多い。渋滞は毎度のことだった。その渋滞緩和と言う名目で、新たに3期、4期という工事計画がだされた。真鶴道路は国道135号線のバイパスという形で、荒磯をつぶして出来上がっていた。それをさらに橋で岩海岸をまたぎ、真鶴のどてっぱらをトンネルでぬき、湯河原・福浦につなぐ計画だった。しかし計画の全貌はなかなか町民に知らされなかった。公団がとった手はまず問題の少ない荒磯を埋めることから始まった。この荒磯の近くには昭和天皇が生物の研究に来たこともある横浜国大の研究施設もある。
そしてそれにつづく大ケ窪からトンネルに入るところで、トンネルを掘るのに、予告もなしに、ばんばんと発破を使った。近くの家はたまったもんじゃない。真鶴町民の大反対にあうことになる。私も子どもをつれて、発破震動を体験しに出かけたものである。騒音、排気ガス、また水路をぶち抜いてしまったりもした。道路問題はおよそ10年にわたって争われることになる。私もその間、議員であり、道路対策委員でもあった。もちろん住民側に立つ。考えると36歳で議員になったから、もう31年以上昔のことになる。宇井さんの東大での公害講座に通っていたのもこのころである。忘れてしまっていても仕方がない。とにかく交渉は難航した。道路公団の態度は「公共優先」の態度をなかなか崩さなかった。建設省にも日本道路公団にも何回も行った。だから道路公団のやり方は骨身にしみている。毎晩の会合もよく出たものだと思う。またトンネルや排気ガスの処理、排気塔の有無、ジェットファンのつき方などを見に日本中のトンネルを見てまわった。当時日本で一番長いトンネルは恵那峡トンネルであった。いまでもトンネルを通ると、自然と距離と排気ガス対策などをチェックしてしまう。知らない土地でも「なんとか反対」という文字には反応する。
源頼朝が石橋山の合戦で敗れ、房総をさして船出していった歴史ある岩の海岸にかかった岩大橋、そして真鶴のど真ん中をぶち抜いた約1500mトンネル、それが完成した。新しく出来た道路は旧有料道路とは別の料金体系になった。未だに、意地もあって、私は自分の車でこのトンネルを走ることはない。もちろん旧道路の料金も100円から200円に値上げはしても、無料にはなっていない。そして続いて小田原の魚市場をまたぐ橋も出来た。ここも別料金である。ここも私たちは通らない。
しかも渋滞を解消するという目的は一向に解消されてはいない。解消どころか、いまなお渋滞で、悪名高き真鶴道路である。
◇真鶴道路は一部、真鶴→根府川の区間は08年9月4日から無料になる。これは国の政策ではない。国の政策で行けば無料にはならない。それ歯神奈川県が真鶴有料道路を買い上げたからである。とはいえ、旧道部分だけが無料となる、が、真鶴をトンネルで抜いた新道区間は別、まだペイしないので有料をつづける。
渋滞は相変わらず続いている。しかし、バイパスができたために早川の海岸沿いの店は閉店し、通りはすっかり寂れてしまった。