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有朋自遠方来、不亦楽乎

2004-08-12 23:41:15 | アート・文化

大学当時の友人Tから同窓会の通知が届いた。
「仲間の葬式のときだけ連絡を取り合うのは空しいものだから、ひさしぶりに箱根でたのしいひと時を味わいましょう」と書いてあった。参加すべく、カレンダーに丸をつけた。

大学を卒業してから43年もの歳月が流れ去った。その間に二人の仲間が他界している。一人の葬儀には参列したがもう一人の葬儀は名古屋なのでだれも参列しなかった。この名古屋の友Mは事故で下半身不随となり、車椅子の生活を余儀なくされていた。学生時代はファイト満々で物事にぶつかっていく、頼もしい人物だった。新聞記者だったので、車椅子でも出来るデスク仕事をやっていた。私は外国から欠かさず絵はがきを送っていた。

私たちの専攻は英文学であった。だから教師が多い。ほとんどが定年組みだ。大学教授の二人と実業家と自営業がまだ現役ではある。10人ほどの仲間なのだが、議員経験者が二人いる。専業主婦もひとり。

大学時代、故人になったMの発案で、「読書会」という原書講読の会をつくった。女性の参加者は私一人であった。仲間はつれだっていろいろなことをしていたが、私は遠距離通学のこともあって、読書会以外の付き合いはほとんど参加していない。だが青春時代を共有したことはその後も密接ではないが、交流は続いていた。

もっとも私たちの時代は60年安保闘争の激しいときでもあった。MとTは英文学科の代表として、学生自治会へ参加していた。にもかかわらず私はノンポリであった。ノンポリと言っても、今の学生のように政治にまったくの無関心ではなかった。安保がなんであるか、それが締結されるとどんなことになるのかは理解していた。しかし、ただ勉強が面白くて、学生運動にのめりこんでいる時間はなかった。それとアメリカ留学の予定があったので、マッカシーの赤狩り華やかな時代を慮っていたことも確かである。とはいえ、学生時代は私にとってはひたすら吸収の時代であった、学問だけでなく、文化面も貪欲に吸収している。この蓄積が今も生きている、と思っている。

歳をとると、過去を振り返りたくなるものらしい。中学校の時の同窓会も毎年のように開かれている。そこに行くと、一瞬にしてオジサンやオバサンがタイムマシンに乗ったごとく、時間を超越して、男の子、女の子の時代に戻る。そして思い出話に花が咲く。これはこれでたのしいことはたのしい。ところがこれも回を重ねると、私には現実回避のように思われ、つまらなくなってしまった。いつしか会費分を行ったと思って寄付してしまおう、ということになった。どうも私は現実的な人間らしい。

市議会議員を長らくやっていたTはとても面倒見がいい。必然的に彼がとりまとめをすることになる。安保闘争のときデモに参加して、肋骨を折り、その後の健康にはこれが尾を引いている、もっとも連れ合いが看護婦さんなので、献身的に面倒見てもらっているようだ。学生時代、小説を書いていて、けちょんけちょんに私にけなされていたが、ロマンティストであることは今も昔も変わらない。時間が出来た今は郷土の歴史を掘り起こして本にまとめている。2冊ほど貰ったことがある。象が将軍に謁見するため、長崎から江戸まで東海道を歩いた道中記をまとめていたので、手元にあった三島から箱根の部分を送ってやった。

Oは読書会には参加していなかったが、私とは連れ立ってフランス語を習いに行ったりした。仲間の中では一番早く結婚した。結婚式には仲間が全員出席した。未だに結婚式で悪口を言われたのは私ぐらいだとわめいている。でもチャーミングさは若いころと変わらない。熱心なクリスチャンでもある。

自営業のIは登山家で、仲間そろって、白馬岳から鹿島槍までの縦走に連れて行ってもらったことがある。尾瀬にも連れて行ってもらった。まだときおり山には行っているようだ。

さいたまにいるFは酒癖がわるい。いつも二人の女性から厳しく叱られている。絵を描いているのだが、酒癖の悪さなんて微塵もない実にやさしい絵だ。もっともこの酒癖の悪さゆえに亡く なったTTがいつも面倒を見ていた。TTが亡くなってきっとFはショックだろう。酒を飲まないと借りてきた猫のように大人しいのだが。

Sは下呂で、晴耕雨読の悠々自適な生活を送っている。

AとYは大学の英文学の教授である。あれ、定年になったかな。久しく会っていないので、その後はちょっと不明だ。Yがロンドン留学中、はじめたばかりの私のパソコンの相手になってもらった。曲がりなりにもPCが出来るようになったのは彼のおかげである。

大学のときの仲間は人生を経ても、それぞれの考え方は理解しているから、ギャップが少ない。でも久しぶりの出会いだから、話題が過去に回帰するか、将来に向かうか。それとも文学論に花が咲くか、さて、楽しみではある。

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