クーリンチェ少年殺人事件を見た。
90年代に公開してる時にも見たけど、
まーー覚えてない。
3時間50分ある映画なので、数日前から気合を入れて。
見始めてから、いろいろ思い出した。
4時間弱の間、水を飲むことすら忘れて映画の世界にハマった。
また忘れるんだろうけど、
30年後の私に3時間50分見れる体力があるかわからないので、
覚書しとこう。
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1959年夏。
冒頭の陽射しは明るい。
緑も濃い。牛車のゆーっくりとした歩み。
日本の、昭和の夏の風景に似てる。
主人公の小西(シャオスー)の家族が住む家が日本家屋なので、
ますます風景に懐かしさがある。
けっこうイケメンな父とシャオスーは、
学校帰りにかき氷を食べる。
ラジオからは大学合格者の名前が流れている。
主人公のシャオスーと親友の王茂(小猫王、ワンマオ)は、
近くにできたスタジオの屋根裏(梁で組まれたとこ)に忍び込んで、
撮影を覗いたり、本読んだりしてる。
ワンマオはシャオスーの姉に軽口たたいたりして、一番明るい。
背が低くて声変わりもまだ。
ワンマオが本を落っことして、守衛に捕まった小西。
すぐにワンマオが助けに来て守衛の気をそらした、
と思ったらワンマオは戻ってきて懐中電灯を盗み、二人はなんとか逃げる。
少年たちには派閥があって、主人公サイドは「小公園」。
小学校で滑頭(ホアトウ)が敵グループの「217」に因縁をつけられて、さっそくケンカ!
逃げ遅れた敵グループの少年の顔を、滑頭はレンガでバコッ!
学校で、滑頭とシャオスーが言い合いになって、飛機のバットが没収されてしまう。
シャオスーが困ってると、兄がバット代の70元を黙って貸してくれる。
兄も男前だし、主人公の家族はいい人ばかり。
シャオスーが目の治療で保健室にいると、膝を怪我した女子が治療を受けていた。
初対面の二人は学校を抜け出してデートする。
スタジオでは、シャオミンが監督にスカウトされる。
軍の演習場では、小公園のメンバーに見つかって、軽くケンカ。
シャオスーが股間蹴り。
送るよ、とシャオスーはいうけど、
シャオミンはバスで帰る、と去る。
シャオミンは小公園のボス、ハニーの恋人だった。
ハニーは217のリーダーと小明を奪い合い、
挙句に殺人を犯して台南に逃げていた。
シャオスー兄は217のたまり場のビリヤード場に。
シャオスーに貸したお金は母の腕時計を質に入れたもので、
取り返すために来たんだけど、ボッコボコにされる。
ワンマオは、ライブハウスで歌を歌っている。
ソウルの入ったファルセット。
洋楽の歌詞を訳してほしいと、シャオスー姉に頼む。
ワンマオはシャオスーの家のラジオを分解。
転校生・小馬(シャオマー)登場。
ワンマオが噂話してると、教師が王茂を黒板に立たせて、茂という字を100回書け!っていう。
放課後、シャオミンは「スタジオに来ない?」とシャオスーを誘う。
シャオミンは家政婦の母と居場所もない感じで、てんてんと暮らしている。
シャオスーはホワトウのカンニングのせいで職員室に呼ばれる。
ホワトウは退学に。
学校に呼ばれたシャオスー父は男前だった。
「間違ってないのに謝るなんて卑屈だ」
「自分の未来を信じろ。努力すれば未来が開けるんだ」
217のリーダー山東(ジャンドン)が滑頭に、中山堂でのコンサートで手を組もうとけしかける。
教室で、シャオスーが連れ出されて、ワンマオたちが助けに行こうとするけど、小馬が場を収める。
お坊ちゃんの小馬は、日本刀を見せびらかす。
ライブハウスにシャオスーやシャオミンやホワトウがいるところに、ハニーの帰還!
ハニーって名前にふさわしい、甘いマスク、セーラー服のお兄さん。
滑頭は、217とのトラブルは、あんた個人の問題だとハニーに言う。
シャオミンはハニーに駆け寄るけど、その後うつむいて外へ。追いかけるシャオスー。
ハニーはシャオスーに、「小明はお前のことが好きだ。ひと目でわかった」
小四は「小明はあなたをずっと待っていた」
ハニーは「戦争と平和」の話をして、「小説家になりたい、でも無理、勉強してこなかったから」
中山堂でのコンサート。
山東はハニーを連れ出して、車に突き飛ばす。
学校で小明を見かけた小四は、
「僕がいる。僕は一生離れない。君を守ってあげる」
でもすげないシャオミン。
小四は小馬にダブルデートするが、シャオミンのことが頭から離れない。
台風の夜。猛烈な雨の中、カッパ姿で人力車をひく男たち。
ハニーの仲間である本省人のヤクザものが、ハニーの仇を取るため、217のアジトにカチコミ。
台風の日は停電して、真っ暗の闇とどしゃぶりの雨の中、217のメンバーが次々やられる。
その現場にきた小四は、山東の死体を見て立ち尽くす。
山東の恋人が泣きわめく。
シャオスー父が公安に呼び出されて尋問を受け、友人を告発する文書を書かされる。
家に戻った父、蚊帳の中で妻とちょっとした言い争いになるけど、妻が出てくと、父が追いかけて、
「僕には君と子どもしか残っていない」といって、二人は抱き合う。
姉が書き起こしたプレスリーの歌詞に、ワンマオは大喜び。
シャオミンの母は入院していて、担当医は自分に気があると言うシャオミン。
「私は多くの男性に告白されるけれど何か問題があったら皆逃げていく」
保健室でまたもめ事を起こしたシャオスー、呼び出された父と二人で家に帰る途中、父はタバコに火をつけるのをやめて、
「自分が煙草を我慢すればその分の金で、お前の眼鏡を月賦で買うことが出来る」
小馬の家で遊んでて、シャオミンはピストルを振り回し、暴発。小馬はシャオミンをビンタ。
退学になったシャオスーは、信心深い2番目の姉の好意で、教会の図書館でお勉強。
ある日、本の束を持った滑頭と再会。
小馬が小明と付き合い始めた、と聞く。
真人間になったととうとうと語る滑頭を、シャオスーはボコる。
小馬に話を聞きに行くと、「遊びだよ、女なんて」
映画館で。
小翆(尻軽娘)と会った小四は、
「滑頭が真っ当になっていて人は変われるんだと慰められる気分だ」
小翆「あなたは私を軽蔑していたはず。
私が変わらなければ相手にしない?自分勝手ね」
「滑頭が小学校で217の連中にちょっかいを出された時、一緒にいたのは私じゃなくて小明よ」
この辺りだったか忘れたけど、商店街のオッチャンが酔い酔いで側溝に落ちる。
シャオスーは行きがかり上、助ける。
シャオスーが帰ると、時計を質に入れたのがバレた兄が父にボコられていた。
小明は、滑頭や小馬だけでなく、小虎、医師ともよろしくやっていた。
ワンマオはスタジオにシャオスーを呼び出して、小馬との決闘をなんとかいさめる。
このあたりでワンマオは声変わりしている!
映画の監督がシャオミンのことをシャオスーに聞くと、
「何も見抜けてない。何撮ってんだ!」とシャオスーは怒って出ていく。
懐中電灯を置いて。
シャオスーはワンマオの留守にワンマオの部屋に入り、短刀を持ち出す。
宵闇迫る屋台通りで、シャオミンと会ったシャオスー、
「僕は全部知っている。僕だけが君を救うことが出来る」
「助ける? 私を変えたいのね。
私の感情という見返りを得て、安心したいのね。
私は変わらないわ。社会が変わらないのと同じようにね」
で、何度も刺しまくる。
「ダメな女だ!」
その後で、
「早く立ってくれ」
家族が警察に呼ばれて、2番目の姉は大泣き。
小馬も泣いて「シャオスーはたった一人の友達だったのに」
ワンマオは、テープをシャオスーに渡してくれ、と警察に頼む。
警察はポイ。
テープには、ワンマオが自分の歌をプレスリーに送ったこと、
返事が来て、遠い島国でも自分の歌を聴く人がいて嬉しいと、
プレスリーが喜んでいたことが吹き込まれていた。
事件から2年後、引越しのため荷造りする2番目の姉がラジオを落っことすと、ラジオは復活。
その年の大学合格者名が流れる。
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何も刺さなくてもいいのに、と大人は思うけど、
14歳の少年は、そうするほかに、
落とし前をつけることができなかった。
時代背景がどうの、っていわれるけど、
シャオミンみたいなビッチはいつでもどこにでもいる。
そのシャオミンの顔が、
私は90年代に見たときも気に入らなかったのを思い出した。
ひとついえるのは、14歳の少年にだけは適当なことをしたり、
言ったりしてはいけない!
空気も闇も雨も、主人公の恋心も男の友情も、濃かった。
台湾の夏の陽射し、すべてを流しそうな勢いで降る台風の雨、
真っ暗な夜の闇、夕暮れ時の湿った空気ににじむ屋台の明かり、
雑踏の音、血の色、など、がこの映画のすごいところで、あらすじなんかはどうでもいい。
少年たちはそれぞれ面白いし、パパも兄もイケメンだけど、
女はろくな女が出てこない。てか、描かれ方が中途半端な気がする。
だから、2回も見たわりに、すごい好きな映画というわけではない。
「恐怖分子」はもっといたましい感じがした。
「ヤンヤン夏の思い出」は好きだ。
終わって渋谷の街に出たら、ごちゃごちゃして人が多いわりに、
アッサリした景色だった。