かわいん坊
レーザーポインターで遊んでるところ
特にこれといっていやなことがあるわけでもなく、仕事もいい感じに暇だったので、単にいつものホルモン変調と日照の少なさのせいだとは思うけど
やっちまったおれ
そんななか、寒い夜のモンちゃん散歩中に事件は起きた
エノコロ草の最後に残った葉っぱがついに枯れていた日のことだ
サウナ上がりの冬の散歩は気持ちよくて、見上げればシリウスやオリオン、火星がきらきら光っている
モンちゃんお気に入りの駐車場の奥まで歩いて、モンちゃんの気の済むのを待つのだが、一向に気が済まない
その駐車場はアパートにくっついた私有地で、ふつうに考えて部外者が夜にうろつくのはよろしくない
なのでいつまでたってもモンちゃんが自分で帰ろうとしないときは抱き上げて帰るのだが、その日は抱き上げようとするとフウーッとうなって嫌がった
が、そのまま抱き上げると突然モンちゃんはパニクったみたいに暴れて、ワーッと大声で叫び、私の右腕に噛みついて蹴りを浴びせた
痛かったけど私有地なので声を出すわけにいかず、なんとか持ち上げて連れ帰った
もう2年近くモンちゃんと散歩していて初めてのことだった
毎晩、ジムから帰ると玄関に走ってくるモンちゃんとの夜の散歩はモンちゃんと私の楽しみだった
厚手パーカーごしでも3、4か所流血し、腕も痛いけど、それより胸が痛かった
信頼しきっていたモンちゃんが、まさかの攻撃、
ほとんどの猫は一緒に散歩なんてできない、猫を信頼するなんていうのは猫を人間サイズにおとしこみ、猫を社会化させるような馬鹿げたことだということは分かっている
が、外に出てリードを放しても振り向いて私の来るのを待ち、呼べはこっちに来てくれるモンちゃんと私は特別な信頼関係ができあがっていると思っていた
6歳になるまで庭から脱出しなかったモンちゃんはある日突然フェンスを越えた
モンちゃんだって猫なのだ
人間の思いどおりにしていてくれるわけはない
無言で家に戻ってから、モンちゃん、自分が何したかわかってる?と叱った
モンちゃんを叱るのはたぶんモンちゃんが来てからの8年で2回目
1回目は無理にフェンスを越えようとしてバラの新芽を折った時で叱ったといっても軽い
マジ叱りはこの日が初めて
モンちゃんは、どうしていいかわからないような、先日犬に尻クンクンされた時のような、気まずそうな表情で目を細めていた
ふだんいろいろやらかしてまめにTには叱られて、そういうときは許してもらうまで膝に寄り添ったりアピールするのだが、今回は違った
夜は私の横で寝てたけど、次の朝起きてすぐ、いつも換気扇の下で一服してる私の膝に乗りに来るのだが、少し離れたとこから私を見上げ、私が目も合わさずにいたらそのまま通り過ぎた
この日もまだ傷が痛いし、許す気にはなれず、モンちゃんと目を合わさずにいた
モンちゃんもふだんと明らかに違い、外に出たいーのアンワー鳴きをしない
いつも一点の曇りもない顔のモンちゃんが、どんよりした顔で、暖房の下に丸まって夜までほとんど寝ていた
いつだって太陽のように明るいモンちゃんが、なんだか暗い
皆既日食みたいに暗い
私は私で、ショックがさめやらない上に、いつもは朝から晩までモフってるモンちゃんに触れないでいると、心身のバランスがくずれ、なんだか暗い
いつもの日々がどれだけ楽しかったか思うたびに、このままでいたら私もモンちゃんも免疫力が落ちて、具合がわるくなる気がした
モンちゃんと私が2人揃ってなんだか暗いんで、夜に帰って来たTはもう許してあげなよー、と面白そうに笑っていた
この夜はさすがに、モンちゃんは散歩行こうぜ!のしつこいアンワー鳴きをせず、静かに私の足元で寝ていた
悪いことしたなって、分かっているんだろうか
もう猫に人間に都合のいい期待するつもりはないけれど、攻撃はしないでほしい
1日モンちゃんと距離を取りながら様子を見ていると、申しわけなさがひしひしと伝わってはきたのだが、これも人間の思い上がりなんだろうか
次の朝、換気扇の下でタバコ吸ってる私を見に来たモンちゃんに、「もういいよ、仲直りしよう」といったらすぐに膝に飛び乗ってきた
1日ぶりに撫でると嬉しそうにあごを伸ばしてブルブルいった
それからこれまでどおり、仲良く暮らしてはいるが、散歩はまだお預けにしている
廊下をうろうろして小さい声でアワーと鳴くモンちゃんがあまりに不憫といってTが散歩に連れていくこともあるけど、私はとりあえず腕の傷がすっかり消えるくらいまでは行けそうにない
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昨年くらいからIさんが蔵書の処分していて、最後まで手元に残してたBの本をくれるというので、うちから一本の電車で行ける駅まで取りに行った
絶版になってる本や、水害で捨てた本もあり、ほとんど新品のようにきれいでありがたくいただいた
50代で物の整理は早いんじゃないの、というと独り身だと全然早くない、という
ウツの気もあるというのでちょっと心配だったけど、お礼にお昼をご馳走するとよく食べてたしいつも通りふつうにしゃべっていた
もう8割の本は売ってしまって、残ってた本は特に大事な本なのかなと思った
特に大事な3人の作家の本を、それぞれまとめて誰かに譲っておけば、いつか読みたくなったとき誰が持ってるかわかるので、Kの蔵書はまとめて某くんに、Bはまとめて私にくれたのかも
もう1人の小説家はHさんで、某くんも私もすでにほとんど持っている
某くんのお礼はお寿司だったそう
私はエスニックのランチ
ランチ一回じゃ申しわけないくらいの豪華て高価な本をたくさん頂いた
その日はたまたまTが本棚の棚を増やしたので本をきれいに片づけて、水害以来雑になってた本棚がようやく生き生きと復活した感じ