5月31日に『改正中心市街地活性化法が』が成立し、巨大店舗を郊外に出店することを原則禁止する『まちづくり3法』が来年秋にでも全国で適用される」(06.6.1.朝日朝刊)とのこと。既に「9都道府県がスーパーなどの大型店の郊外出店を厳しく制限する独自規制を設けたり検討したりしている」そうだ。
同記事によると、『まちづくり3法』とは、中心地の空洞化に歯止めをかけるための関連法で、大型店の出展地域を規制する『都市計画法』、中心部の活性化のために交付金支援する『中心市街地活性化法』、出展計画の届出を求める『大規模小売店舗立地法』を指すとのことで、郊外への出店規制を大幅に強化するとともに、中心市街地に商業施設を誘導しやすくする法律だという。法律自体も小泉流規制緩和に矛盾する規制強化への転換である。
中心市街地のシャッター通り化、既設大型郊外店の隆盛、一般店舗から100円ショップやコンビニへの転換とその成功、スーパーの恒例化した日替わり安売り販売等々――、これらの状況から導き出すことのできる答は、一般消費者の1円でも安い店へ流れていく消費動向が既に趨勢化しているということであろう。
この流れは変わらない。欧米先進国に比べてバカ高い教育費、持ち家であれば、バカ高い住宅建設費・土地代、持ち家でなければ、バカ高いアパート・マンション代等が生活を圧迫して、いくら稼いでも、有り余るカネとはならないからだ。そのことが豊かであっても、殆どがギリギリのところで生活している状況をつくり出している。ましてやたいして稼げない最大公約数の一般国民にとっては、1円でも安くは死活問題となっている。
日本の歴史・伝統・文化として鎮座している日本の素晴しい政治のお陰で年金給付が将来的に当てにならないといった不安要素も加わって、稼いだカネの稼いだ分だけの有効利用が〝1円でも安く〟という姿をさらに取らせ、そのことが誰もの生活上の至上テーマとさせているのである。
〝1円でも安く〟の生活者にとって車が交通手段となっている今日、駐車料金を取られる駐車場を利用しなければ買い物ができない店舗への出入りは〝1円でも安く〟の自己否定となる。無料で駐車できる大型駐車場を抱えた安売りの郊外型大型店に向かうのは生活上の要請であった。例え少しぐらい時間とガソリン代がかかろうとも、払う場合の駐車代金よりも安く上がるのは確実であるし、まとめ買いすることで時間とガソリン代の節約を図ることもできる。
このような時代的な流れを元に戻そうということで『まちづくり3法』を制定したのだろう。中心市街地に商業施設を誘導しやすくしたとしても、安売り大型店舗と同時に大勢の客を受け入れることのできる大型無料駐車場を用意できなければ、〝1円でも安く〟の流れを変えることはできない。ただでさえ地価が高い中心市街地に大型無料駐車場を抱えるとなれば、中心部の活性化のために交付金を少しぐらい支援したとしても、無料駐車場確保のために投下した資本を商品単価に撥ね返らせずに営業できる企業がどれほどあるか、1円でも郊外店よりも高ければ、消費者は郊外店に向かう。
投下資本の節約のために商店街共同で駐車場確保に動いたとしても、小規模の個人商店にとっては馬鹿にならない投資で、その回収に余裕を持てる小規模店がどれほどあるかも問題となるし、大体が間近に確保できる土地そのものがあるかどうかである。少しでも遠くて、目的の店まで歩かなければならないとなったなら、敬遠されるだろう。
無料駐車場を抱えない営業開始に対して、消費者が手頃な値段で欲しい商品があったとしても、駐車違反車両取締まり強化の民間委託業務が6月1日から始まっている。無料駐車場がないからと、罰金を支払う覚悟で違法駐車してまで欲しいと思った商品を手に入れようとする利口者はいないだろう。
『まちづくり3法』を制定しながら、同時に市街地から車を追放することにもなる駐車違反取まり強化を開始する。取締り強化によって市街地に於ける消費者の過疎化がますます進めば、平行して車の流入量も減少し、違法駐車も減る。但し、中心市街地の活性化をなおざりにする矛盾を犯さなければならない。
その矛盾を回避するために警察と委託先民間業者にワイロを贈って、中心市街地の駐車取締まりに手心を加えて貰うという手もある。
そうしたとしても、この商店街は駐車違反取締まりが免除されていますと公に知らしめることはできないから、口コミで広まるまでには時間がかかる。広がったところで、噂が憶測を呼び合って、駐車違反取締まりがないのはどうも警察にカネを握らせているからしいといった情報が行き交い、マスコミが取り上げるに至り、特別扱いが露見することになるといった展開か。
アルバイトを雇って二人で配達することにした運送業者もあると言うことだが、失業率改善には役立っても、人件費の増加が最終的には商品に転化されて、国民の生活を低所得者から順に圧迫する。生活格差社会が小泉改革の隠れたテーマでもあったから、小泉首相にとっては本望となる成り行きではあるだろう。