但し人権問題に関して
ちょっと題名が長すぎるかな?
戦後以来、経済も外交も改革案件も金融政策もアメリカに依存し、アメリカの属国だ、対米追従一辺倒だ、ハワイに次ぐ51番目の州だ、主権を備えた独立国家ではないという非難が日本という国にかぶせられた有難い国柄となっていた。
ブッシュ米大統領が7月29日に中国の民主活動家の魏京生氏、中国の強制労働収容所の実態を告発したハリー・ウー氏、新疆ウイグル自治区出身のラビア・カーディル氏ら米国在住の5人をホワイトハウスに招いて面談し、8月8日の北京五輪開会式出席に合わせて訪中する際、胡錦濤国家主席らに「人権」と「宗教の自由」を強く申し入れることを確約したと7月30日(08年)の「毎日jp」記事が伝えている。
またホワイトハウスの別室でハドリー大統領補佐官(国家安全保障担当)と会談中だった中国外相とも面会し、「五輪は中国にとって人権と自由への思いやりを示す好機」と訴えたとも伝えている。
ハドリー大統領補佐官が声明で「人権と宗教の自由は誰に対しても否定できない、という米国の立場を明確にする機会となる」と北京五輪開会式出席に向けた大統領訪中の意義を強調しているが、「毎日jp」記事は<米国ではチベット暴動に対する中国当局の弾圧を受け、大統領の五輪開会式出席に対する批判が根強い。ブッシュ大統領の面談はこうした批判を抑える狙いがあるとみられる。>とその対策的側面性を指摘している。
同じ出来事を伝えている「asahi.com」記事(2008年7月30日)にしても、ブッシュ大統領が五輪開会式出席の意義を「中国の指導者との関係を築くことで、人権や宗教の自由は否定されるべきではないとの米国の立場をはっきり伝えることができる」と訴えたのに対して、<米国では、中国の人権状況などを理由に大統領の北京五輪開会式出席への批判があり、訪中前の会見で「人権問題重視」の姿勢を印象づけることを狙ったようだ。>と批判鎮静化の性格を持った会見だと同じように解説している。
その一方で「asahi.com」記事は<活動家らはブッシュ氏の姿勢を評価したうえで「中国指導部だけでなく、国民にもメッセージを伝え続けて欲しい」と要望したという。>とその評価を伝えている。
しかしマスメディアの情報を通じてだが、世界の人間に見える言葉・聞こえる言葉で非民主国家の民主化要求を行うのはアメリカ以下の欧米諸国であって、そういった形式の民主化要求は日本は言葉を出さないままの状態でいる。
いわばこの点に関しては日本は決して対米追従ではなく、アメリカの属国的態度に陥ることもなく、如何なる外国にも依存しない自主独立の態度を頑固なまでに貫いている。
さらに言うなら、ハワイに次いで51番目の州と受取られかねない主体性なき卑屈な態度も示さず、見事なまでの権の姿勢を示していると言えるのではないだろうか。
最良の方法はブッシュ大統領が中国政府と「民主化に向けて一層の努力をする」とする中国側の言葉と引き換えに開会式への出席を了承する裏取引きを行うことではなかったろうか。
それが中国に対する言質となって、中国政府の権態度に遭遇するたびにあのときの約束はどうしたと言えることになる。
中国側としたら、そんな約束はできないとは言えないだろう。北京オリンピックの承認を受けるに当たって北京の五輪招致団は7年前に、「五輪が来れば人権問題を含む社会問題は改善されるだろう」(MSN産経/08年4月11日≪ロゲIOC会長発言で波紋 人権問題に踏み込んだ?≫)と民主化を条件として北京オリンピックの招致を成功させている手前があるからだ。
この約束は国際オリンピック委員会のロゲ会長が持ち上がったチベット問題及び聖火リレー妨害問題の沈静化を図るために「道義上の約束を尊重するよう中国側に求める」と約束履行を求めた中で明らかにした中国側の言質であった。
これが中国政府とアメリカ政府当局同士の直接の約束なら、北京の五輪招致団とIOC同士の約束と比較にならない強力な言質となることは間違いない。
だが、残念ながら裏取引はなかった。なかったから、中国民主化活動家の5人をホワイトハウスに招いて会見して、中国に民主化を求める姿勢を示す必要が生じたのだろう。
7月31日(08年)のNHKニュースは、アメリカ議会下院が30日、中国政府に対して不当に拘束した人権活動家などの釈放、チベット人やウイグル人に対する抑圧の停止、中国政府と立場の異なる人々がオリンピック期間中に中国を訪問できるようにすることなどを求める決議案を可決したと伝えていた(文章はNHKインターネット記事から引用)。
同NHKは、この決議に対して中国外務省の劉建超報道官が31日、「北京オリンピックを妨害する邪悪な意図がある」として抗議の声明を発表し、アメリカ政府と議会に厳正な申し入れを行ったことを明らかにしたことも同時に伝え、さらにブッシュ大統領が29日に中国出身の民主活動家5人をホワイトハウスに招いて面会したことを取り上げて、オリンピックを機に海外の関心が中国の人権問題に集まることに中国当局は神経をとがらせていると解説している。
アメリカは2004年10月に「北朝鮮における基本的人権に対する尊重と保護の推進」等を要求する「北朝鮮人権法」を米議会上下院で可決、大統領の署名によって成立させている。
2005年と2006年に国連総会本会議において「北朝鮮の人権状況」決議がなされ、日本は賛成国に名を連ねているが、国独自としては06年6月に「北朝鮮人権法案」を成立させている。
だがこの法律はその「目的」の項で「拉致問題の解決」と併行させて<北朝鮮当局による人権侵害問題の実態を解明し、及びその抑止を図ることを目的とする。>と謳っていることから分かるように北朝鮮の人権侵害問題が06年6月の時点では「実態解明」以前の状態にあり、当然のこととしてアメリカが「中国政府に人権尊重を求める決議案」で不当に拘束した人権活動家などの釈放、チベット人やウイグル人に対する抑圧の停止、中国政府と立場の異なる人々がオリンピック期間中に中国を訪問できるようにすると具体的要求項目を掲げたように、北朝鮮ではこれこれの人権侵害がある、それを改めることを要求するとはなっていなくて、「その抑止を図る」と言っても、実態解明後の問題として把えている。
06年6月まで日本政府は何をしてきたのだろうか。拉致解決のみでよしとする姿勢が原因して拉致以外の北朝鮮の人権侵害問題に目が向かなかったとでもということなのだろうか。
だとしたら、何という一国主義であろうか。
それとも拉致解決のみを目的とした「北朝鮮人権法案」であったなら、その一国主義が批判を受ける恐れから、一国主義批判を避ける必要上、<人権侵害問題の実態を解明し、及びその抑止を図ることを目的とする。>と拉致以外の人権侵害問題も取り上げざるを得なかったということなのだろうか。
前者・後者いずれにしても一国主義に変りはないが、日本政府がどのような人権侵害が北朝鮮で演じられているか把握していない、「実態解明」はこれからだとしたのは俄かには信じがたく、日本人の人権意識と他国の人権問題に関して決してアメリカ追従ではないことを併せ考えると、どうも後者のように思える。
ブッシュ大統領は昨2007年9月のシドニー開催アジア太平洋経済協力会議ビジネスサミットで「米中間の協力関係は継続するが、これまで同様、われわれが個人の尊厳や自由への信念に多大な価値を置いていることを表明し続けたい」、「(北京五輪は)中国の国民にとって最も誇り高く感じられる時となるだろう。同時に中国の指導者にとっても、さらなる開放性と寛容性を表すことで国としての自信を示す機会になり得る」(AFPBB News)と中国首脳の面前で演説を行い、中国の一層の民主化を促している。
さらにブッシュ大統領はミャンマーや北朝鮮に於ける人権の改善や軍のクーデター後総選挙が初めて実施されるタイについても「自由で公平」に行われるよう言及している。
日本の首脳が中国やその他の権国家の首脳の前でこのような人権改善要求の場面を演じたことがあるだろうか。アメリカの属国だ、対米追従一辺倒だ、ハワイに次ぐ51番目の州同然だと言われながら、アメリカのかくある対外的人権要求姿勢・民主化促進要求態度に追随することなく、何も物申さない自主独立国家姿勢を貫いて止まないことから推測しても、「北朝鮮人権法案」は拉致解決のみを視野に入れた一国主義的権姿勢が成立させしめた法律としか思えない。拉致問題のみが日本にとっての「人権侵害」だというのがホンネといったところなのだろう。
7月29日(08年)にアメリカではブッシュ米大統領がミャンマー産ルビー、ヒスイなど宝石の輸入全面禁止や同国軍事政権高官らの資産凍結などを盛り込んだ「対ミャンマー制裁強化法案」に署名、同法を成立させている。
このことを伝えている「毎日jp」記事(≪米国:対ミャンマー制裁強化法成立、在米資産も凍結へ(毎日新聞 2008年7月30日≫2008年7月30日 21時46分)によると、米財務省が同日、軍政が所有ないし管理しているミャンマー国内の企業10社の在米資産を凍結し、米国企業との取引を禁止する追加制裁措置を決めたという。
<ミャンマーはルビーなど宝石の一大産地。軍政が見本市などを主催し、貴重な外貨収入源となっている。米国はこれまでもミャンマーから宝石の直接輸入を禁じていたが、第三国経由の輸入は対象外だった。今回の法成立で第三国経由も禁止される。>――
ブッシュ大統領が署名後、「米国は民主主義と自由を信じる、というのが我々のメッセージだ」と語ったことも伝えている。
「民主主義と自由を信じる」アメリカのメッセージの発信に関しても日本は決してアメリカ従属では決してない。北朝鮮に対する「圧力と対話」のいくつかの実効性のさしてないささやかな「圧力」は日本人が関わっていることからの圧力であって、対ミャンマーに関しても反政府デモを取材中の日本人フリージャーナリスト長井健司氏(50)がミャンマー当局のデモ治安部隊員に至近距離から背中に銃撃を受けて非業の死を遂げた07年9月27日の前日の9月26日、いわばまだ日本人が関わっていない時点での日本政府の態度は「いたずらに欧米の国と一緒になってたたきまわるのがいい外交なのか、という感じが前からしていた」(町村官房長官/)が日本の基本姿勢であり、殺害の事実が伝えらて日本人が関わっていることが判明した後も「いきなり制裁するのではなく、各国と相談しながらやっていく」(福田首相)とその基本姿勢を変えなかったが、10月に入って中旬に「日本・ミャンマー人材育成開発センター」の計画を延期する制裁を発表、推進中の人道案件のみ援助を継続することを決定しているが、フリージャーナリスト長井健司氏銃撃死の真相解明に向けてミャンマー当局を積極的に動かす力を日本政府が発揮できないことを受けた措置――日本人が関わっていることからの圧力であろう。
いわば対米追従、属国態度からの制裁ではなく、一国主義的な自主独立の権姿勢からの申し訳程度の制裁といったところでしかない。
福田首相は北京五輪開会式に出席しても世界の人間に見える言葉・聞こえる言葉で中国首脳に民主化を要求することは決してあるまい。余分な面倒はなるべく起こすまいとする事勿れ主義に衝き動かされて、あくまでも一国主義的な自主独立の権姿勢を貫き通すに違いない。
かくも人権問題に関してはアメリカの属国とならず、対米追従に陥らず、51番目の州の如き同調姿勢を示さず、如何なる外国にも追随しない誇り高き自主独立の一国主義を見事なまでに維持している。
人権問題?――自分たちさえよければ、他国のことはどうでもいいのです。「いたずらに欧米の国と一緒になって叩きまわる」ことはないのです。
戦前、日本軍の下級兵士及び国民の人権・生命を無視・蹂躙したお国柄だけのことはある。