麻生の株政策提案は金持優遇?富の公平な配分への橋渡しとなるのか

2008-08-10 11:14:20 | Weblog

 02年2月から始って「いざなぎ景気」を超えて戦後最長となった景気拡大期が終止符を打った可能性が高いと8日(08年8月)の時事通信社インターネット記事が伝えている。
 
 「いざなぎ景気」を超えた戦後最長となった景気拡大。――

 だが新聞・テレビは「戦後最長、戦後最長」と姦しく伝える一方で、「景気拡大の実感がない」、「景気がいいという感じがしない」と言う街の声を伝えてきた。

 政府が企業収益の向上分が賃金に跳ね返り、個人の所得が増えて消費が喚起されるとする構図を持たせた景気回復シナリオを描いて税制面で企業優遇政策を行ってきた中で(「企業と家計の間で好循環を形成し、内需の厚みを増す成果配分」とも言っている。/「asahi.com」記事から)戦後最長の景気拡大が実現し、大手企業の収益が格段に上がったものの、その利益が「企業と家計の間の好循環の形成」どころか、全く以ってと言っていい程に個人所得(賃金)に反映されなかったことの当然過ぎる結果として個人消費が伸びない低迷状態のまま景気が終息した、そのような皮肉な逆説性をも孕んだ「戦後最長」であった。いわば政府の景気回復のシナリオ、利益配分は絵空事に過ぎなかった。

 いや、自民党政府は「企業と家計の間の好循環の形成」を実現させる政治能力を持たなかったと言った方が正確であろう。

 その象徴が低所得状況に閉じ込められたフリーターの存在であろう。7月23日(08年)『朝日』朝刊記事≪漂う年長フリーター≫によると、景気回復で03年の217万人から年々減り続けて昨07年は181万人までになったフリーターではあるが、その減少を主として担ったのは前年より6万人減って89万人となった15歳~24歳の若年組で、03年の98万人から06年92万人にまで減少した25~34歳年長組は07年も92万人で減少なしの横ばい、逆に15~24歳若年組を3万人上まわることとなり最多数を形成、総務省のフリーターの年齢定義(15~34歳)から外れる35歳~44歳の最年長組に至ると、03年の29万人から年々増加を続け、05年に30万人となり、06年32万人、07年38万人へと「戦後最長の景気拡大」に逆行する「拡大」を見せている。

 この「拡大」の一因は総務省のフリーターの年齢定義を超えているということで公的支援対象から外されていることにあると記事は伝えているが、その対象外政策を受けて企業の求人対象からも除外させられているということにもあるのではないのか。

 企業も役所も人間35歳を過ぎたら、フリーター以外はお呼びではないよを決まりとしていると言うわけである。後期高齢者保険制度では75歳を過ぎたらお呼びでないよであった。

 「戦後最長」の景気回復で07年にはトヨタやソニー、キャノンといった日本を代表する大手企業、あるいは三菱とか住友とかの大手金融機関が戦後最高益を記録したが、企業の高収益が個人所得に公平に配分されないまま雇用状況は確かに改善された。そのような結果を受けてのフリーターに関しては15歳~24歳の若年組フリーターに限った03年には119万人だったのが、06年95万人、07年89万人の改善であったろう。

 そして再びアメリカのサブプライムローン問題や世界的な原油高騰、穀物高騰を受けた原材料費の高騰が悪影響したアメリカの景気後退と連動した日本の「戦後最長の景気拡大期」の終焉の可能性。

 この「可能性」は経済活動の実態に既に現れている。日本最高最大の自動車生産企業トヨタは北米での販売不振から人員整理は行わないまま現地生産ラインの一部を8月から3カ月間休止する生産計画の変更を迫られている。

 北米で人員整理を行わない一方でトヨタグループは直近3~4カ月間でデンソー、関東自動車工業など主要5社の人員整理を進め、その削減人数は派遣社員・期間従業員を合わせて約2300人に上ると5日(08年8月)の「日経ネット」が伝えている。

 GMは北米で人員整理を進めている。トヨタが国内生産拠点では人員整理を行い、北米生産拠点では行わない矛盾の理由はどこにあるのだろうか。

 約2300人の内訳に入るのだろう、トヨタ自動車九州工場が6月と8月初めの2回に亘って92年操業開始以来の最大の800人の派遣社員の人員整理に踏み切ったと「asahi.com」記事が伝えている。

 同記事は「新車種の生産準備が本格化する10、11月頃をめどに、改めて500人の派遣契約をする方針だ」としているが、300人は振るい落されたままとなるし、再契約の目標としている500人も景気の動向次第で当てにならない数字と化す危険性を孕んでいる。15歳~24歳の若年組フリーターに限った減少傾向も再度の景気悪化でいつ増加に転ずるか、その持続性の保証も危ういものとなる。

 いわば戦後最長の景気拡大場面に於いてもフリーターを中心とした社会の最も弱い層である低所得層には利益配分の恩恵は殆ど還元されることがなかったし、景気後退局面に直面してその最初の打撃が社会の最も弱い層であるゆえにフリーターを中心とした低所得層に最初に及ぶ。
政府は財政再建を掲げつつ、総選挙対策上景気回復策の必要にも迫られる困難な状況に立たされているが、福田内閣支持率回復と総選挙対策の切り札とされて久し振りの表舞台復帰に張り切っているのか、麻生幹事長は、政府が掲げてきた2011年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化目標達成年度の先送りと小泉元首相が政策としていた新規国債発行枠30兆円に拘らない姿勢を示し、財政再建よりも景気対策のための財政出動を優先させる考えを示した。

 「こんなことを言ったら、バラ撒き、放漫経営と言われるんだよ。しかし私に言わせたなら、今、景気対策は政策優先順位の一番だと思います」(「日テレ24」)と右手の人差し指を突き立てて前置きし、「株式300万円から出る配当や株式の譲渡益を無税にする。政府は1円も使わず、日本中の株の評価が上がり、資産が増える」(「毎日jp」)と景気のいいことを言って300万円以下の株式を1年以上保有した場合の配当と譲渡益を非課税にすることと住宅取得を促すための減税や設備投資の減税も検討すべきだとの考えも明らかにした(同「毎日jp」)。

 結構毛だらけ、猫灰だらけのネズミ講並みのうまい話に聞こえるだけではなく、浪花節語りの語り口調に似て、言葉以上に景気のいい響きを振り撒くこととなっているが、企業収益の向上分が賃金に跳ね返り、個人の所得が増えて消費が喚起されるといった政府の利益配分方式――簡単に言うと、上が潤えば、順にその利益が下に滴っていくというシナリオ自体がいさなぎ景気を超えた戦後最長の景気拡大局面で機能せず、破綻の憂き目を見ている以上、麻生の提案する株式優遇税制及び基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化目標達成年度の先送り等の財政出動によって手にすることになる高所得層、あるいは大手企業の利益が今度こそ個人所得(賃金)に反映される道筋――いわばこれまで機能せずに破綻した従来の利益配分方式に替る機能する利益配分方式を前以て明確に示す必要があるのではないのか。

 確実に機能することを保証する公平な利益配分の道筋を示さずにぶち上げた政策ということなら、「いざなぎ景気」を超えた戦後最長の景気拡大期でも大手企業の収益が個人所得(賃金)に公平に分配されなかった前科を抱えた以上、同じ二の舞となる再犯を繰返さない確信は麻生の話のどこからも看取することはできない。講釈師、見てきたようなウソを言いで終わるだろう。
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 ≪麻生幹事長:300万円以下の株、配当と譲渡益無税検討≫(毎日jp/2008年8月9日 22時08分)

 自民党の麻生太郎幹事長は9日、札幌市などで講演し、景気対策について「株式300万円から出る配当や株式の譲渡益を無税にする。政府は1円も使わず、日本中の株の評価が上がり、資産が増える」と語り、300万円以下の株式を1年以上保有した場合の配当と譲渡益を非課税にすべきだとの考えを示した。あわせて、住宅取得を促すための減税や、設備投資の減税も検討すべきだとの考えも明らかにした。

 麻生氏は一連の優遇税制の拡充案について「首相になってからやりたいと思っていたが、待っていられない。やるなら今だ」とも強調した。

 麻生氏は景気対策を急ぐ必要性を唱え、財政再建より財政出動を優先すべきだとの立場を鮮明にしてきた。しかし党内の一部から「バラマキ」との批判が出ており、財政出動だけに頼らず、税制での対応もアピールしたい狙いがあるとみられる。ただ、税収減につながることは確実で、政府・与党内の調整は難航しそうだ。

 現行の証券税制は、上場株式の譲渡益や配当にかかる税率を本則の20%から10%に引き下げている。08年度中に本則に戻す予定だったが、米低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題で低迷する株式市場への配慮などから、08年度税制改正では適用上限額を設けた上、10年末まで延長することを決めた。【西田進一郎、須佐美玲子】

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