12月8日の「毎日jp」記事(21時36分)に、同日夕方、林幹雄幹事長代理が週末の首相の九州視察を自民党役員会の前に国会内で紹介、「離島回りは手応えがあった。今日、内閣支持率を見て、がっかりしたが……」と「手応え」に水を差されたというわけなのだろう、そう話すと、大島理森国対委員長が憮然とした表情で「支持率のことは言わんでいい」と遮ったという。その場では黙って聞いていた麻生首相が役員会開催後、「支持率の急落はすべて私の責任だ」と言ったというが、事実は事実として誤魔化せないから、一言言わざるを得ない最も体裁のいい言葉が、「すべて私の責任だ」だったのではないか。
もしも一言も触れなかったなら、だんまりを決め込む程に相当ショックを受けていたなどと冷笑混じりの意地の悪い噂がどこからともなく洩れかねない。
大島理森の「支持率のことは言わんでいい」との言葉からは麻生内閣の支持率の低下に相当に苛立っている様子を窺うことができる。
大島理森は12月14日「NHK「日曜討論」でも支持率低下にナーバスな姿を曝していた。野党側が麻生内閣の支持率低下を取り上げて民意が離れているといったことを言うと、大島は「麻生内閣の支持率の低さを言うべきではない。自民党と民主党の支持率はそう変りはないではないか」と言って、両党の支持率の違いのなさで麻生内閣の支持率失墜を相殺しようと企み、続けて他の野党に対して、「みなさんも(という言葉を使ったと思うが)3%とか1%とかの支持率しかないじゃないか」といった言葉遣いで、それぞの支持率が低いのに麻生内閣の支持率の低さを言う資格はないとばかりのことを言い立てていた。
麻生内閣は支持率を急激に下げているが、その分の支持率が各野党に反映されているかと言うと、必ずしもそうなっていない現実を突きつけられたからなのか、大島の言葉に民主党以下の野党は口を閉ざしたまま何も反論できなかった。反論しなかったことによって大島の言い分に正当性を与えることとなった。
麻生内閣は与党を経営母体として日本の国を政治を通して経営する、麻生首相をトップに据えて各閣僚と一体となった経営陣であり、内閣支持率とはそのような経営陣に対する支持率であって、経営に対する国民の信任を決定的に失ったとき、経営陣の首をすげ替えることで経営母体自体の与党の立場を守ることも可能だから、経営陣である内閣自体に対する世論が政党支持率に必ずしも反映するとは限らない。
例えばプロ野球の球団が成績が悪くて監督やコーチの人気を失っても、球団自体に対する人気を失わないことが多いが、それと同じである。球団は監督以下の経営陣を入れ替えることで、ファンの信任を引きとめようとする。
言ってみれば、内閣と与党とは常に運命共同体と言うわけではない。このことは自民党と自民党内閣の歴史が証明している。
自民党を譬えるとプロ野球の阪神や巨人みたいなものだが、経営陣(=監督)の首を挿げ替えるだけで済む問題ではなくなっている。
また、政権与党たる自民党の支持率も、与党ではない野党の支持率と趣を異にするはずである。自分たちの党に所属する国会議員の中から総理大臣を始め、各大臣、内閣スタッフを選出している表向きは責任共同帯なのだから、内閣の支持率低下が与党たる自分たちの支持率に影響がない場合でも、その支持率を楯に責任の関連付けを免れることができないはずだし、与党の立場にいる以上、野党の支持率が低いからと、そのことを以って自分たちの正当性を言い立てる関連付けともならないはずである。
このことは毎日新聞が12月6、7の両日に行った全国電話世論調査での政党支持率が自民党23%に対して民主党24%で1ポイント下回っているほぼ同等なのに対して、次の総選挙で「自民と民主のどちらに勝ってほしいか」では、民主党46%に対して自民29%と17ポイントも民主が圧倒していることと「麻生太郎首相と小沢一郎民主党代表のどちらが首相にふさわしいと思うか」で麻生首相21ポイント減の19%、小沢一郎が3ポイント増の21%と逆転したことが示している自民党支持率を楯とすることの根拠のなさを証明している。
いわば自民党の支持率だけですべてを律することができるわけではないし、また首相のクビをすげ替えることで片付くときもあるから、内閣支持率だけですべてを律することができるわけではないということであろう。
上記毎日世論調査では「どちらが首相にふさわしいか」で「どちらもふさわしくない」が14ポイント増の54%だという調査結果に対して、毎日記事は<9月は麻生首相42%、小沢氏19%、10月は麻生首相40%、小沢氏18%だったことから、麻生首相と答えた層が「どちらもふさわしくない」という回答に流れたことがうかがえる。>と解説しているが、要するに政権交代の危機(自民党野党化の危機)をつくった麻生首相に失望し、自民党国会議員のように「麻生では選挙は戦えない」と早々にふさわしくない首相と評価づけたものの、自民党支持の立場から民主党の小沢代表を「ふさわしい」とするわけにはいかないことをも含んだ両者に対する拒絶反応であり、また共産党支持者や社民支持者の中にも政治的立場上、両者を選択できないとした要素もある「どちらもふさわしくない」といったところなのだろうから、やはり自民党支持率と世論調査の他の項目が機械的に反映し合うわけではないことを示している。
だが、大島国対は自民党が国家経営の経営母体であり、自分たちの仲間から国家経営の経営陣を出していながら、数パーセントの支持しかない小政党は自民党の支持率と大差があることを以って内閣支持率を非難する資格がないかのように言う。大島の詭弁家たる所以がここに象徴的に現れている。
2005年(平成17年)9月11日の郵政選挙は与党が歴史的勝利を収めて3分の2以上の議席を獲得したものの、「小選挙区」と「比例区」の両方に重複立候補して小選挙区で落選しても、比例区で返り咲くといった変動や1人当選のみの小選挙区であることから死票が生じやすいといった事情からだと思うが、与野党得票差は「小選挙区」・「比例区」とも200万程度でしかなく、獲得議席数と獲得票が相互反映の形を取らなかったが、基本的には選挙時の政党支持率と各政党の当選議席数は左右対称の関係にあるはずである。
そうでなければ政治や社会の状況によほどの変動がなければ、選挙以降の世論調査で所属議員数にほぼ応じた支持率が出るといったことは起きないはずである。
また国民の支持が少なくて国会に議席を少数しか占めることができない少数政党は国民の支持の少なさの結果ではあるが、選挙以降の世論調査でも支持の少なさが対応し合っているのも当然の左右対称の関係からであろう。
つまり選挙時の獲得議員数が選挙時の支持率に対してほぼ比例関係にあると同様に選挙以降の世論調査に於ける支持率も獲得議席数(=所属議員数)から逆算した比例値を一般的には示すとしていいはずである。
だとしたら、選挙以降の世論調査での少数野党の支持率の少なさは当然の結果値なのだから、大島が少数野党の支持率の少なさを改めてのように取り上げたこと自体が既に詭弁の範疇に入る。
選挙に於ける国民の支持の少なさがつくり出した少数野党ではあり、選挙以降の世論調査でも国民の支持の少なさが政党支持率に反映した数パーセントという左右対称の支持の低さではあるが、選挙時及び選挙以降の世論調査時の政党支持率が獲得議席数とほぼ比例関係をなすなら、国民の支持の多い・少ないを無視して各党支持率をそれぞれの所属議員数で割って1人当たりの支持率を算出して比較したなら、比例関係の破り具合から健闘しているか否かを計ることができるのではないだろうか。
我々は各マスコミの世論調査に現れた政党別支持率に対して各政党の支持率の増減や最も支持を獲得している政党はどこかといった順位は見るが、その支持率が所属議員数を反映させているかどうかは見ない。支持率を所属議員数で割った所属議員1人当たりの支持率を計算したなら、支持と各党の健闘ぶりをのより公平・正当に知ることができるように思えるが、どんなものなのだろうか。、
試しに計算してみることにした。
「毎日jp」の世論調査を最初に持ち出したのは各マスコミが12月初旬に続いて発表した世論調査はほぼ似た傾向を示したから、どの世論調査を使ってもいいようなものだが、極端に右だ、左だとは見られていない(と私自身はそう思っている)ことを理由からだが、「朝日」、「毎日」、「読売」が調査した麻生内閣の支持率でも、朝日22%、毎日21%、読売20・9%となっていて、毎日は中間につけている。
参考までに最初に麻生内閣の支持率を見てみる。
◆麻生内閣を支持しますか。
全体 前回 男性 女性
支持する 21 (36) 21 22
支持しない 58 (41) 62 54
関心がない 19 (21) 16 21
次に政党支持率。
全体 前回 男性 女性
自民党 23 (24) 27 21
民主党 24 (27) 28 21
公明党 5 ( 5) 3 6
共産党 3 ( 3) 3 4
社民党 1 ( 2) 1 2
国民新党 1 ( 0) 1 0
改革クラブ - ( 0) - -
新党日本 0 ( 0) - 0
その他の政党 1 ( 2) 1 2
支持政党はない 37 (36) 34 39
次に政党別所属議員数(「Wikipedia」から」
自民党(衆議院306/480――参議院83/242)
公明党(衆議院 31/480――参議院21/242)
民主党(衆議院109/480――参議院110/242)
共産党(衆議院 9/480――参議院 7/242)
社民党(衆議院 7/480――参議院 5/242)
国民新党(衆議院 5/480――参議院 5/242)
所属議員1人当たりの支持率(少しの増減は無視する。)
自民党――支持率23%÷389(衆306人人+参83人)=7.5%/1人当たり
公明党――支持率 5%÷52(衆 31人+ 参21人)=9.6%/1人当たり
民主党――支持率24%÷219(衆109人+参110人)=10.9%/1人当たり
共産党――支持率 3%÷ 16(衆 9人+参 7人)=18.75%/1人当たり
社民党――支持率 1%÷ 12(衆 7人+参 5人)= 8.33%/1人当たり
国民新党―支持率 1%÷ 10(衆 5人+参 5人)= 10%/1人当たり
(以上)
共産党は衆参合わせて16人の国会議員しかいないにも関わらず、3%の政党支持率を獲得している。この16人:3%の割合を自民党の衆参合わせた389人に当てはめてみると、72%の支持率が必要だが、実際は23%しか支持を獲得していない。
こう見てくると、「毎日」の世論調査では政党支持率では自民党23%に対して民主党24%でほぼ互角ではあるものの、自民党は衆参合わせて389人の所属議員を抱えていながら、1人当たりの支持率は衆参合わせて219人の民主党の1人当たりの支持率10.9%に対して3.4ポイントも低いし、数パーセントの支持しかない少数野党は自民党の支持率と大差があることを以って内閣支持率を非難する資格がないかのように言ったことに反して、共産党は勿論、社民党や国民新党にも劣る1人当たりの支持率となっている。
いわば少数野党は少数野党なりに健闘してる状況を示しているのに対して自民党(公明党は無視する。)が政権与党であり、最も多い議席数を獲得していながら、そのことに反して少数野党と比較して1人当たりの支持率が最も低いポイント数となっている状況は健闘値の弱体を示すものであろう。
このことは1人当たりの支持率は所属議員数を無視して政党支持率が低いから少数野党は内閣の支持率の低さを言う資格なしとすることはできないことを示している。
詭弁を得意とする大島国対にとっては詭弁操作の都合からそんなことは「関係ねぇ」だろうが。