今朝の「asahi.com」に記載された「朝日新聞世論調査」に奇妙な不一致が存在する。質問と回答の必要箇所を、少し理解しやすいように表現を変えて参考引用してみる。
《世論調査―質問と回答〈4月16、17日実施〉》(asahi.com/2011年4月18日0時1分)
(数字は%。小数点以下は四捨五入。質問文と回答は一部省略。◆は全員への質問。◇は枝分かれ質問で該当する回答者の中での比率。〈 〉内の数字は全体に対する比率。丸カッコ内の数字は、2月19、20日の前回調査の結果)
◆菅内閣を支持しますか。支持しませんか。
支持する 21(前回2月調査 20)
支持しない 60(前回2月調査 62)
◇それはどうしてですか。(選択肢から一つ選ぶ=択一。左は「支持する」21%、右は「支持しない」60%の理由)
支持する21%
首相が菅さん 21〈4/21%〉
民主党中心の内閣 35〈7/21%〉
政策の面 14〈3/21%〉
実行力の面 10〈2/21%〉
支持しない60%
首相が菅さん 5〈 3/60%〉
民主党中心の内閣 8〈 5/60%〉
政策の面 20〈12/60%〉
実行力の面 65〈38/60%〉
◆どの政党を支持していますか。
▽民主17(19)
▽自民19(18)
▽公明3(3)
▽共産2(2)
▽社民1(1)
▽みんな1(2) (以下の政党はすべて0)
▽支持政党なし49(50)
▽答えない・分からない8(5)
◆仮にいま、衆院選の投票をするとしたら、比例区ではどの政党に投票したいと思いますか。
▽民主18(19)
▽自民30(25)
▽公明4(5)
▽共産3(3)
▽社民1(1)
▽みんな5(6)(以下の政党はすべて0)
▽答えない・分からない38(40)
◆菅さんに首相を続けてほしいと思いますか。早くやめてほしいと思いますか。
首相を続けてほしい 36(前回2月調査30)
早くやめてほしい 43(前回2月調査49)
◆菅内閣の東日本大震災への対応を評価しますか。評価しませんか。
評価する 22
評価しない 60
◆菅内閣の福島第一原子力発電所の事故への対応を評価しますか。評価しませんか。
評価する 16
評価しない 67
◆民主党と自民党が大連立政権をつくることに賛成ですか。反対ですか。
賛成 43
反対 37
◆震災復興の財源にあてるため、増税することに賛成ですか。反対ですか。
賛成 59
反対 31
◆震災復興の主な財源にするのは増税がよいと思いますか。国の借金である国債がよいと思いますか。
増税がよい 48
国債がよい 25
◆福島第一原発の事故についてうかがいます。今回の事故について、どの程度、不安を感じていますか。(択一)
大いに感じている 56
ある程度感じている 33
あまり感じていない 9
まったく感じていない 2
◆福島第一原発以外の原子力発電所でも、大きな事故が起きる不安を、どの程度感じますか。(択一)
大いに感じる 50
ある程度感じる 38
あまり感じない 10
まったく感じない 1
◆福島第一原発の事故について、政府の情報提供は適切だと思いますか。適切ではないと思いますか。
適切だ 16
適切ではない 73
◆原子力発電を利用することに賛成ですか。反対ですか。
賛成 50
反対 32
◆日本の原子力発電は、今後、どうしたらよいと思いますか。(択一)
増やすほうがよい 5
現状程度にとどめる 51
減らすほうがよい 30
やめるべきだ 11
◇
〈調査方法〉 16、17の両日、コンピューターで無作為に作成した番号に調査員が電話をかける「朝日RDD」方式で、全国の有権者を対象に調査した(東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の一部を除く)。世帯用と判明した番号は3352件、有効回答は1999人。回答率60%。 |
菅内閣を「支持する21%」、「支持しない60%」。この支持対不支持は「菅内閣の東日本大震災への対応を評価する22%」対「評価しない60%」及び「菅内閣の福島第一原子力発電所の事故への対応を評価する16%」対「評価しない67%」が大いに影響している内閣支持動向であろう。
このことが内閣支持21%のうちの支持理由が政策の面で14%、実行力の面で10%程度の支持しか得ることができず、不支持60%のうち不支持理由が政策の面で20%と実行力の面で65%も獲得することに現れている支持と不支持の状況であるはずだ。
かくまでも東日本大震災への対応と福島第一原発電事故への対応が圧倒的に評価されていないにも関わらず、また政策の面と実行力の面での不支持が圧倒的に高いのは内閣の存在意義に致命的でありながら、震災前の前回2月調査よりも支持が1%増え、支持しないが2%増えている。
このことは菅内閣の震災対応と原発事故対応に対する散々の評価から見た場合、常識的には支持率を大きく下げ、逆に不支持率を大きく上げてよさそうなものだが、そうなっていないということは誤差の範囲と見ることはできないはずだ。
この奇妙な不一致はどのような理由があるのだろうか。
奇妙な不一致は菅首相に対する“続投・退陣”の意思表示にも現れている。
圧倒的多数を占めてもいいはずの「早くやめて欲しい」が前回2調査の49%よりも減って43%程度で、「首相を続けてほしい」が前回2月調査の30%から+6ポイントも増えて36%にも達している。
この増減は震災対応と原発事故対応に対する圧倒的なマイナス評価を相殺してしまっている。その相殺値が退陣要請43%-続投要請36%=7ポイントのみの差となって現れているということであろう。
菅首相は政策面でも実行力の点でも首相就任以来評価を受けてこなかった。政策なき政治家、指導力なき政治家と言い換えることもできる。昨201年年9月の民主党代表選でも政策面や実行力ではなく、首相をコロコロ変えるのはよくないという体裁重視、形式的なカバー重視で支持された。
そして震災対応と原発事故対応では政策面に影響する政権運営の点で無闇と本部だ会議だと立ち上げて指揮命令系統を複雑化し、逆に情報伝達を阻害化させ、政治的実行力の程度を証明することになった。勿論、実行力の程度とは指導力の程度、リーダーシップの程度を言う。
世論に現れた菅仮免に対するたった7ポイントの差しかない36%対43%の“続投・退陣”の意思表示を解くとしたら、考え得る理由は震災復旧等の大事なときに首相交代劇で一時的に政治が混乱したり政治空白が生じることを恐れてのことか、それとも菅に変わる適当な首相が存在しないことからの意思表示としか頭に浮かばない。
尤も洞察力鋭い人間から見たら、他にも適当な理由を見い出し得るかもしれない。
一時的に政治的混乱や政治的空白を恐れての理由だとしたら、その一時性によって不満足な対応・指導力の欠如が継続されることになて、却って日本の政治全体に悪影響を与えることになる。そのプラスマイナスも計算すべきであろう。
菅仮免の不満足な対応・指導力の欠如の継続を遮断し、政治を満足な状況に持っていくためには内紛や対立続きの民主党に挙党一致を実現でき、尚且つ野党の協力を形成できる後継者を求めることを条件に菅に辞めて貰うことによって実現可能となり、そうすることによって世論調査に現れた奇妙な不一致をすべて解消することができるのではないだろうか。
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