菅仮免首相は福島原発避難所視察で見事な情報発信力を見せた

2011-04-22 11:21:35 | Weblog



 菅仮免首相は自身に関係する情報発信はすべて自分の発言が何の解釈も解説も施されずに発言どおりにそのままストレートに国民に伝わることだと思い込んでいる。

 この仮免なりの情報発信論は、一度ブログに取上げたが、2011年1月7日に「プレスクラブ - ビデオニュース・ドットコム インターネット放送局」の動画に出演したときの発言に如実に現れている。

 菅首相「インターネット放送と言うよりも、この間、特に国会開会中はかなりタイトな時間で、自分で発信することはなかなかできないですよね。ま、確かに、あの、私自身は映ったりしてるんですが、かなり自分の中でギャップがあったんです。

 つまり、自分としてはここが重要だから、例えば本会議場でこういうことを言っているとか、委員会でこう言ってるとか、という思いがあるのですが、その部分は殆んど放送されないで、まあ、言葉は激しいけれども、それ程内容的には重要と思われないようなところを、特に政局と絡むようなところをですね、エー、どんどん流れていくと、エー、なかなか自分の思いが伝わらないという、そういう感じが強かったんです。

 それで昨年の11月頃から、あの、カンフルTV とか、カンフルブログというものをつくって、まあ、自らの始めたんですが、あの、一般のテレビ番組にでもですね、あの、少し出ようと、そして、あの、インターネットのこの番組にも出してもらって、あのー、出来るだけ、私として何を考えて、また、私として何をやっているのか、あの、生の私の姿をですね、もっと伝えたいと、ま、そう思って、今日出させて貰いました」――

 要するに自身の発言・姿をマスコミが曲げて政局がらみの報道にしてしまう。だから、そのことを避けるためにカンフルTV とかカンフルブログを始めた。テレビ番組やインターネットテレビにも出演して、生の姿を伝え、それがそのまま国民に伝わるようにしている。

 この思い込みをそのまま裏返すと、自分の発言・自分の情報発信はすべて正しいとする姿が浮かんでくる。言葉を替えて言うと、情報発信とは自身の意図を常に正しいこと、正義と位置づけ、そのことを前提に自分が意図した発言が意図したとおりに伝わることだとしていることになる。

 正しい情報発信をしていながら、マスコミが曲げて伝えるから、不人気も低空支持率もマスコミが元凶と看做すことになって、記者会見を避けるようになったということなのだろう。

 意図した発言、意図した情報発信でなくても、言葉を発しない一挙手一投足、あるいは国会質疑中の居眠りも質疑の状況や重要度に応じて情報発信となるということに気づいていない。弁解も強弁も言い逃れも人間性や指導力の有無の情報発信になり得るということに気づいていない。

 すべては菅仮免首相が合理的な判断能力を著しく欠いているからに他ならない。

 例えば福島原発避難所視察後に郡山市内で行った記者会見早々に自身の発言以外のことで、勿論本人は気づいていないからだろう、見事な情報発信を行っている。

 《原発被害「国が最後まで責任持つ」 21日の菅首相》asahi.com/2011年4月22日0時19分)

 記者「総理、ぶら下がりお願いします」

 菅仮免「はい」

 秘書官「申し訳ない。1、2分です」

  この「1、2分です」は菅仮免が前以て秘書官に指示しておいた制限時間であって、この制限時間から浮かんでくる情報はマスコミを介して国民になるべく多くの情報を発信して国民の理解を得よう、多くの説明をして現在の状況を知らしめようと心がける誠意ある姿の不在である。

 いわば「1、2分です」と時間制限することによって、国民に対する自身の不誠実さを情報発信したのである。たっぷりと質問に答えて、「他にもうありませんか」と逆に尋ねる誠意ある余裕も強い意志も演出することができなかった。

 例えマスコミが意図を曲げて伝えることがあっても、真の相手は国民であって、意図がマスコミのよって曲げられずに国民に伝わるように努力し、才覚を働かすのも一国のリーダーの責任であるはずだ。

 なぜなら、低支持率が政策を進める上でも内閣を運営する上でも、また選挙を戦う上でも障害とならない保証はないからだ。

 だが、努力もせず、才覚を働かすこともせず、記者会見を避けて、国民への説明・情報発信を怠ることをしている。

 また、そんな責任はないとするなら、極端なことを言うと、マスコミが正しく伝えないからとマスコミの取材を一切拒否することができることになる。

 この記者会見で菅仮免首相は地元住民に対する自らの姿勢について次のように発言している。

 菅仮免「やはり一番感じたのは、政府の関係者、政府の関係者なりにも、地元のことを考えているつもりではありますけど、やっぱり、こうして中にお邪魔して話を聞くと、まだまだそういう、皆さんの気持ちが、本当にこの親身になって、分かっていたかと言われると、やはり改めてですね、もっと被災者の立場に立って、全てのことを考えなければならないという、その、知事や皆さんの言われることが、改めて私にも痛感をされました」 ――

 地元住民に対する親身な理解の不足を自ら反省している。だが、視察しなければ理解できないという自らの判断能力についての反省はない。避難生活を送っている被災者の言葉・思いは自身が直接出かけなくても如何ようにも情報収集できるからだ。また、如何ようにも情報収集しなければならない。

 単にそのことを怠ってきたに過ぎない。「地元のことを考えているつもり」が事実はそうではなかったということに過ぎない。地元に関して持っている自らの情報と地元自身が抱えている情報との乖離があったということだろう。

 この反省発言は勿論、避難所の視察が言わせたものであることは断るまでもない。

 昨4月21日夜9時からのNHK「ニュースウオッチ9」で菅首相の避難所訪問を放送していた。

 体育館を避難所としている場所に現れて幼い子どもを抱えた若い母親の前に、椅子なのかどうかダンボールの衝立で見えなかったが、腰掛け、何か話しかけ、それから例の如く両手の拳を握って胸を張った姿勢で体育館の出入り口から出て行こうとしたら、中年の男性に背後から呼び止められた。

 中年男性「もう帰られるんですか。もう帰られるんですか」

 妻らしき中年女性(怒りからの震え声で)「無視されて行かれる気持って分かりますか」

 中年男性「俺らはどうなるんですか。ここにいるの、これだけの人数ですよ」

 妻らしき中年女性「みんな痩せながらね、もう一カ月以上生活して。だから、ホントーに、原発何とか抑えてくださいよ」

 菅仮免「とにかく先ずは原発を、抑え、ないことには、次ぎの、そのー、次のことが進みませんので、とにかく全力を挙げて、今、あの、手当を尽くしているところです」

 国会答弁程ではないにしても、テキパキとしない言葉運びとなっているが、避難生活者の苦労に対する労(ねぎら)いの言葉をかけたのかどうか番組からだけでは分からないが、少なくとも最初に持って来るべきその言葉を最初には持ってこず、役人が発するような、単に公式的見解を事務的に述べるような発言に替えている。

 マスクをかけたオバサン「じゃあ、ご苦労さん、みなさん頑張ってくださいって行っちゃったけど、何にも通り過ぎずに(「自分たちのところに寄って来ずに」の意味か)さっと行っちゃった。あんなじゃあねえ、やっぱりねえ、総理大臣がさあ、悲しいですねえ」

 NHK「ニュースウオッチ9」が伝えた場面からは体育館を避難場所としていて、そこに居合わせた全員に声を掛けずに何人に声を掛けだけで、そのまま去ろうとした情報発信しか浮かばない。

 同じ内容の情報を伝えているNHK記事――《首相 福島県内の避難所を訪問》NHK/2011年4月21日 14時48分)を見てみた。

 記事では福島県庁で佐藤知事と会談したあと、田村市の田村市総合体育館にある避難所を訪れ、住民ら10人余りと言葉を交わしたあと次のように発言したことになっている。

 菅仮免「東京電力が、事故の収束について6か月から9日月かかるという見通しを示しており、避難生活が少し長くかかることになる。政府としても、一日も早く収束させるよう、全力を挙げたい。原発から半径20キロ圏内の住民の方も一時的に立ち入ることができるよう計画している」

 これが体育館にちょうど居合わせた全員に向かっての発言だとしたら、例え公式的見解を述べただけで、避難生活者の苦労に対する労(ねぎら)いの言葉を欠いていたとしても、被災者が菅仮免に向けた非難は必ずしも正当とは言えなくなる。

 そこで記事に付属している動画を開いてみた。
 
 「もう帰られるんですか」と抗議した上記夫婦については動画の最後に簡単に触れているだけで、NHK「ニュースウオッチ9」では伝えていなかったが、幼い子どもを抱えた若い母親に向かって菅仮免は会話を交わしている。
 
 菅仮免「短くても6ヶ月、場合によってでも、もう少し、それが目途がつくのに、少し時間がかかります」

 ここまで菅仮免の声を伝えて、なお話しかけている場面を続けながら、アナウンサーが「その上で菅総理大臣は、政府としても1日も早く収束させるよう全力を挙げたい。原発から半径20キロ圏内の住民の方も一時的に立ち入ることができるよう計画していると述べ、理解を求めました」と解説。

 要するに体育館に居合わせた全員に向かって避難生活の今後と政府の努力、さらに一時的な立ち入りを説明したのではなく、言葉を交わした10人余りに対して同じ言葉を繰返し述べてまわったことになる。

 だから、住民の何人かが面と向かって抗議することになった。

 アナウンサーの解説のあと、NHK「ニュースウオッチ9」では伝えていなかった、別の住民(高齢者)の抗議の場面を記事の動画は伝えている。

 高齢者(非難する強い口調で)「本当に我慢しているんです。頑張ってらっしゃるのは分かるんですけども、もっともっと頑張っていただいて、原発の収束の方をお願いします」

 お願いの頭を深く下げる。菅仮免が応じて頭を下げると、

  高齢者「本当によろしくお願いします」

 大きな声で言って、再び頭を深く下げる。

 この高齢者の発言からも、政府が原発事故対応に全力を挙げているという説明は全員に向かって行った説明ではないことが分かる。

 記者会見で「1、2分です」と秘書官に区切らせたことによって知らしめることとなった誠意のない情報発信といい、体育館に居合わせた全員に向かって理解を求めることはしなかったことの情報発信といい、10人ばかりに声を掛けたものの、機械的に公式的見解を述べただけで、あとは素通りしようとしたことの情報発信といい、すべて菅仮免の能力・人柄に関わる情報として発信された。

 マスクのオバサンが不満を述べたように、「じゃあ、ご苦労さん、みなさん頑張ってください」と最後に全員に向かって声を掛けた程度の情報発信のみで、全員に対しては一国のリーダーとして必要な情報発信を欠いたままその場を立ち去る情報発信を曝け出した。

 結果として、少なくともマスクのオバサンに対しては、「あんなじゃあねえ、やっぱりねえ、総理大臣がさあ、悲しいですねえ」といった情報を発信したことになる。

 マスクのオバサンから菅仮免の視察に関わる情報の発信を受けた多くの人間がオバサンの情報に同調し、同じように他の人間に発信していくチェーンメールもどきの情報発信の連鎖が繰り広げられない可能性は否定できない。

 確かにNHK「ニュースウオッチ9」が伝える情報とNHK記事とその動画が伝える情報に同じ出来事を扱っていながら異なりがある。だからと言って、曲げて伝えていると批判するだけでは済まない。自身が意図し発信した情報が常に正しくも正義でもないことはこの避難住民に対する視察が証明しているし、記者会見を「1、2分です」と時間制限した国民に対する不誠意にも現れているのである。

 さらに体育館で菅仮免の態度を直接目にし、住民が手にした情報とその発信も疎かにできないし、何よりも国家運営の責任を負うリーダとして乗り越えなければならない障害と看做さなければならない以上、マスコミが意図を曲げて伝える、情報を曲げて発信するは自身が発信する情報・意図が常に正しいとは限らないことと併せてマスコミへの責任転嫁でしかないことになる。

 それにしてもどのくらい時間をかけたか分からないが、一つの視察で支持率にプラスになるとは決して言えない見事な情報発信を見せたと言わざるを得ない。未だ本免許獲得までいかない仮免だから仕方がないか。


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